第173話 西へ向かって
私のライオンを殺した未成体への敵討ちは諦めるしかなさそう……。そうだよね、私の行動に反応して現れる特殊な敵なんだし、いつまでもいてくれる訳がないもんね。
「未成体の事は気にしてても仕方ないですね! それじゃ気分を切り替えて、西に向かって再び出発です! 『疾走』!」
看破はまだ効果時間内だから、今は疾走だけでいいや! 疾走からの普通の体当たりでもそれなりにダメージが与えられるのは結構いいよね!
「こうやって疾走しながら通常攻撃で体当たりをしていくなら、屈強のステータスを上げるのもありですかねー?」
さっきは今はまだ決めないと言ったけど、今すぐにでも役立ちそうで、今後も役立ちそうなやつではあるよね? 近接攻撃の全ての底上げにもなるはずだし、今の状況で一番メリットがあるような気がしてきた!
咲夜 : あれ? 今回はあっさりと方向性が定まった?
G : それは普通にありだな。
ミツルギ : 間違いなくありの選択だな。
ミナト : 駄目な理由はどこにも思い当たらないねー!
富岳 : むしろ、今の状況なら推奨ですらあるな。
おぉ、皆さん肯定的な意見だー! うふふ、今はいくらか進化ポイントに余裕はあるはずだし、そういう事なら屈強を解放していこー!
「それじゃ……って、疾走を始める前にやるんでした!?」
流石に走りながらスキルツリーの操作とか出来ないよ! うぅ、タイミングを間違えたー!
ミナト : あはは、まぁサクラちゃん、焦らない、焦らない!
G : 急加速が使える疾走なら、さっさと消費してしまえばいいだけだしな。
サツキ : サクラちゃん、全力疾走開始!
「はーい!」
という事で、一気に急加速を開始! 少し離れた所に段々と高度が下がってきてるLv13の屈強なタカがいるし、どうせなら急加速の状態でどこまで跳び上がれるか試してみようっと! 丁度上り坂になってるし、そこを登り切ってジャンプしてみよう!
咲夜 : あれ? サクラちゃん、なんかタカを狙ってない?
イガイガ : あー、あの低空飛行してるタカか。あれは何か他の敵を狙ってるな。
ミツルギ : サクラちゃん、視界に入ってないだけでLvが低い敵がいる可能性があるから気を付けろー!
チャガ : Lv10以下だと、また未成体が殺しに来る可能性があるからな。
「確かにそれは気を付けないといけないですね!?」
そっか、そっか! あのタカは他の雑魚敵を狙っていて、それは私が今攻撃したら危ない敵の可能性もあるんだ! 狙ってるっぽい敵のLvはしっかり確認しておかないとね!
よし、上り坂を登り切った! あ、ここって崖になってる部分みたい! タカが急降下していってるし、これならこの勢いのまま届きそう!
「狙われてるのはLv12のヘビですね! これなら、そのまま突っ込みます!」
ふっふっふ、間違ってヘビの方を倒してしまっても問題がないLvだったー! うーん、タカがヘビを狙ってるとこだったなら、戦闘になって弱ってるとこを狙いたかったね。でも、もう急加速でジャンプしちゃったから遅いのさー!
咲夜 : ……この獲物を狙う瞬間をピンポイントで当てるの、難しくね?
いなり寿司 : まぁタカが一気に動くからな。
金金金 : それでもサクラちゃんはやってくれると信じている!
いざ、タカを仕留めて……って、あれー!? 結構な高さまでジャンプしたけど、タカが通り過ぎた後の上空へ行っちゃった!? わっ! わわっ!? 空ぶったのは仕方ないけど、着地、着地! え、踏ん張れない!?
「がふっ!?」
ミツルギ : あっ……。
イガイガ : あっ!
サツキ : サクラちゃん!?
富岳 : まぁ今のはそうなるか。
うがー! 思いっきり顔面から地面に突っ込んだー! あ、朦朧になって、疾走がキャンセルになって……って、何がどうなったのー!? うぅ、HPが今ので2割も削れてる……。勢いよく突っ込みすぎて、結構なダメージ量なんですけどー!
「今のって、なんでちゃんと着地が出来なかったんですかねー?」
なんだか富岳さんは理由が分かってるような感じだし、朦朧が回復しないとどうしようもないから今のうちに聞いちゃえ! あ、タカとヘビが争い出してる。あれ、朦朧が回復した時に両方生きてたらいいなー。
富岳 : 今のは疾走を使ってる最中だったからだな。サクラちゃん、さっきの着地は止まろうと操作しただろ?
「あ、はい。そうしましたけど……え、それが駄目だったんです!?」
富岳 : まぁそうなる。勢いを殺して着地するイメージじゃなくて、そのまま勢いの乗って走り抜けるイメージじゃないとあれだけ勢いをつけたら着地に失敗するぞ。
チャガ : 勢いを殺して着地したい場合は、減速もイメージしないと駄目だな。
ミナト : それでもあれだけ勢いがあれば減速し切れないから、駆け抜けていくつもりでいないと駄目だよー!
「おぉ、そういう事だったんですね!」
そっか、そっか。今の大ジャンプの後の着地はいつもの感じで止まれば良いと思ってたけど、疾走の最中……それも急加速している時には普段とは違う止まり方をしないと駄目なんだ! というか、止まるというイメージ自体が駄目なんだね。
「次からはその辺は気を付けますねー! あ、朦朧が回復しました!」
ふふーん、なんだか朦朧が早く回復した気もするけど……元々、そこまで長時間続くものでもなかった気がする? うん、まぁ回復したし別にいっか! さーて、タカとヘビは……。
「……なんでタカの方が地面に落ちてて、ヘビが巻き付いて優勢になってるんですかねー? あ、このヘビ、知恵でした!?」
さっきはLv以外はよく確認出来てなかったけど、よく見たら危険なやつだよ! タカさん、狙う相手を完全に間違えたね。多分、麻痺毒を受けて返り討ちにされてる状況だよね、これ。でもヘビも強襲されてたからHPも半分以上減ってる!
「すごい漁夫の利な気もしますね、これ! それではまとめてやっちゃいましょう! 『獅子咆哮』!」
私のライオンが間近で吹っ飛んできて地面に突っ込んでも、スルーして争ってるタカとヘビ。ふっふっふ、争う前に逃げるべきだったという事を教えてあげるのですよ!
咲夜 : あー、うん。まぁこれは狙うよな。
神奈月 : むしろ狙わない理由がないよな。
サツキ : 絶好の進化ポイント狙いのチャンスだよー!
金金金 : サクラちゃん、やっちまえー!
「はい!」
その為にも獅子咆哮の溜め、早く終わってー! ヘビとタカのどっちかが死ぬ前に! どちらかというと死にそうなのはタカだけど……もう3割もHPは残ってないけど!
「……あ、このタカって麻痺毒と微毒、2種類の毒を受けてるんですね。毒を使うヘビ、怖いですねー!」
2種類の毒を入れつつ、巻き付いて締め上げてるもん。この知恵あるヘビ、私的には格下のLvにはなるけど、やってる事が恐ろしいね! うん、真っ向勝負はしたくないやつ!
富岳 : 知恵の敵は、こういう部分が恐ろしい。
ミツルギ : 下手すればハメ殺しも可能だしなー。
いなり寿司 : 自分がやる側ならいいけど、やられるとキツイやつ。
イガイガ : この系統のがエリアボスで出てきた時なんて……。
咲夜 : 絶対に逃げたいエリアボスだ!?
「あー、そういうエリアボスが出てくる可能性もあるんですよね。うーん、それは流石に私も嫌です……」
確実に普通の敵よりも強くなるエリアボスで、このヘビみたいな攻撃をされたら堪らないもんね。その時の状況次第にはなるけど、遭遇したら私も避けたいかも? あ、そうしてる間に溜めが終わったね!
「さーて、とりあえず進化ポイントをもらいましょう! 獅子咆哮、発射!」
ヘビとタカの両方を照準に入れて、まとめて仕留めるのです! いっけー!
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
「撃破完了です! いやー、進化ポイントが美味しいですね!」
うふふ、タカを空中で狙うのも着地も失敗はしたけど、獅子咆哮をぶっ放しただけで2体分の進化ポイントをゲットー! 結果的には私の大勝利なのですよ!
さてと、この調子で移動しながら進化ポイントを溜めていこー! あ、でもその前にスキルツリーの解放もしておこうかな?
「操作には色々コツがあるんですねー!」
「まぁそうなるね」
「それを使いこなしたら上級者入りですか!?」
「その辺は物によるかな? 移動だけ極めても仕方ないし」
「確かにそれはそうです!?」
「一点突破で秀でてるのでもいいけど、どれだとどうしても対応できない部分もあるからね。ほら、今回のタカへの攻撃とか?」
「うぅ、空ぶって地面に突っ込んだやつですか……」
「うん、まぁそういう事。どうしても相性が出てくる部分はあるからね」
「でも、倒しましたよ! よくやったと褒めてくれる方はブックマークや評価をお願いします!」
「……Lv差は忘れないようにね?」
「それでも勝ちは勝ちですよ?」
「むしろ負けた方が恥な相手だけどね!? ふー、さて次回は『第174話 ステータスの強化』です。お楽しみに」
「私のライオンの強化ですよー!」