第172話 次に目指す方向は
サイコロが、サイコロがー!? なんでまた机の上から落ちちゃったのー!? 配信の最中だと投げる時に無駄に変に力が入っちゃうのかな?
それはともかく、今は落ちたサイコロを探せー! 遠くまで転がったようには見えなかったから、近くに落ちてるはず! って、あれー?
「うーん、机の横にはないですね?」
机の上から乗りだすようにして見てみたけど、サイコロが見当たらないよ? ここのサイコロは何なの? 行方不明の癖でもあるサイコロなの?
金金金 : その態勢、固定のカメラからの方で見たかった!
サツキ : 私のサクラちゃんをそういう目で見るのは止めてもらおうー! あ、痛!?
ミナト : なんかどっちにもツッコミを入れるのが面倒になってきたねー。
いなり寿司 : まぁそこはスルーで。
ミツルギ : だなー。
イガイガ : サクラちゃん、とりあえず机の下を見てみたら?
「あ、それもそうですね!」
私はいつ姉さんのものになったのか知らないけど、まぁそこは今に始まった事じゃないからスルーでいいや。んー、机の上から乗りだすのは流石に良くなかったかな? まぁリアルの姿じゃないし、そこは別にいいや。とりあえず机の下を覗き込んで……。
「あ、机の下にありました! ……微妙に手が届きませんね」
思ったよりも奥の方に転がってたから机の下に潜り込む! うーん、結構机を大きめに作っちゃったかな? えーと、とりあえずサイコロの回収の前に出目の確認を――
金金金 : ん? サクラちゃん、ちょいと机の下側を見せてくれね?
「え、机の下側ですか? 別にいいですけど、特に変わったとこもないですよ?」
金金金さんから要望がきたからとりあえず机の下で身を捩らせて、仰向けになってみた。んー? 私の視点から見て面白い物でもない気はするけどなー?
金金金 : やっぱり作り込んでた。
ミナト : あら、机の下側もしっかりと作られてるねー。
ミツルギ : あ、マジだ。見えないとこなのに、ちゃんと作られてる。
咲夜 : おぉ、すげぇ!
「あ、そこが気になってたんですか! そこも頑張って作りましたからね!」
そっか、そっか! 金金金さんが気になったのは、机の下側がどうなってるかだったんだね! 和室の全体では兄さんに色々と見えないところは削られたけど、机はそうなってないもんね! うふふ、そういう所を気にしてもらえると嬉しいよ!
「さてと、流石にいつまでも机の下で仰向けなのもあれなんで戻りますねー」
着物が崩れないように気を付けながら、机の下から脱出! ふー、脱出完了! あ、しまった!? サイコロの回収も出目も確認するのを忘れたよ!? 机の下に潜った意味がない!
サツキ : サクラちゃん、出目なら2だったよー!
「あ、サツキさん、見ててくれたんですね。助かりましたー!」
ふぅ、何をしたのか意味が分からない事になるとこだった! 姉さんは嘘はつかないし、見えてたのなら他の皆さんも見てただろうから、そこは問題ないはず!
サツキ : 忘れてそうな気がしたからねー!
ミナト : あらら。うん、それなら出目はちゃんと2だったよー!
金金金 : あ、なんかそれはすまんかった。
いなり寿司 : すっかり見るのを忘れてた……。
イガイガ : 同じく……。
富岳 : まぁそこは今更言っても仕方ない。出目が2なら、西側へ移動だな。
「確かにそうですよねー! それじゃ、モンエボの方に戻します!」
なんか変な流れにはなっちゃったけど、とりあえず目的自体は達成! 私以外にも忘れてる人もいたなら気にしなくてもよし! サイコロを消して、机の前で正座し直して、モンエボに戻すのさー!
◇ ◇ ◇
という事で戻ってきました、モンエボのゲーム内! 目的の方向は決まったから、今日の残りの配信時間は西側から先のエリアを目指すのです!
「それじゃ西に向けて出発していきましょう! 『看破』『疾走』!」
今日の配信は……残り10分ちょっと! なんかサイコロで少し時間を無駄にしちゃった気もするけど、済んだ事は気にしない! とりあえずひたすら西を目指して、疾走開始!
ミツルギ : まだ結構遠いけど、これは配信時間中に西の端まで辿り着くか?
富岳 : 戦闘をして進化ポイントを溜めながらだと、何とも言えないところだな。
咲夜 : その辺は敵次第だよなー。
イガイガ : 威嚇を使いながらなら早いだろうけど、そうなると進化ポイントは狙いにくくなるし……。
「移動に専念するか、進化ポイントを重視するかって事ですよねー。まぁ最悪、移動に関しては実況外のプレイで何とかするので、今は進化ポイントを重視で行きます!」
別にその辺の移動や進化ポイント稼ぎだけなら無理に配信中にやる必要はないもんね。今日は木の育成は後回しにして、ライオンでこの丘陵エリアの西の端まで行くのを先にやろうかな?
あ、でも配信中に辿り着く可能性もあるから、その辺は実際に配信が終わってから決める? うん、そうしよー!
「そうやって話してる間に、Lv14の器用なイタチを発見です! 急加速で行きますよー!」
疾走を発動中だから、一気に急加速で通常攻撃の体当たり! おぉ、見事に吹っ飛んだよ! ……なんだか小石を手に持ってたみたいだけど、器用での進化だしもしかして投擲を持ってるイタチ? うん、まぁそれはいいや!
減速して向きを変えて、もう一度急加速して体当たり! ふっふっふ、これだけのLv差があって、遠距離攻撃がメインならば、近接の体当たりには対処出来ないようだね!
「あ、小石を投げてきましたね! でも、その程度ならタカの羽根には遠く及ばないですよ!」
やっぱり投擲を持ってたみたいだけど、急加速でタイミングをズラしてしまえば回避は簡単! 上空から一方的に羽根の連発をされるのに比べたら、格下の敵の小石の投擲なんて目じゃないよ!
でも、手に持って投擲出来るのはなんかいいなー。よーし、私が出来ない事を平然とやってくるイタチには八つ当たりだー!
G : このLvの投擲じゃ、今のサクラちゃんには当てられないか。
神奈月 : 完全にタカの攻撃で、遠距離攻撃の回避慣れしてるな。
サツキ : サクラちゃん、ナイスだよー!
イガイガ : そういや、進化ポイントを溜めたら次の解放はどうするんだ? 前に出た候補でまだ未開放の『再生強化Ⅰ』を取る?
ミツルギ : その辺の方針は気になるとこだな。
「あ、そういえば漠然と進化ポイントを溜めようとしてただけで、具体的な内容は考えてなかったですね」
うーん、イガイガさんの言ってるように候補に挙げたけどまだ取れてない『再生強化Ⅰ』を解放して、自然回復の速度を上げるのはありだよね。それこそ、この先ずっとお世話になる可能性の高いスキルな気もする。
「あ、疾走が切れましたから、これで行きましょう! 『噛みつき』!」
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
イタチの撃破は完了! 疾走での急加速の体当たりもそれなりに威力はあるけど、やっぱりスキルを使っての攻撃の方がダメージは多いね。通常攻撃も結構使ってるし、その辺もちょっと強化したい気はする!
「単純にステータスも上げていきたいですよねー。その辺の優先順位をどうするか、悩みます……」
屈強を上げるのか、俊敏を上げるのか、器用を上げるのか、どれも解放済みのスキルの威力に影響はしてくるから悩みどころ。
金金金 : 再び悩み始める狐っ娘アバター。
G : さっきの今で、もうサイコロか!?
いなり寿司 : それでも別に良いけど、いくらなんでも早くね?
サツキ : サクラちゃん、その辺はどうするのー?
「うーん、ここのエリアでの戦闘なら今のままでも大丈夫ですしねー。別に今すぐ決める必要はなさそうだから、サイコロで決めるにしても今日は止めておきますね」
本当にさっきやったばかりで、またすぐにサイコロを振りに戻るのもあれだしね。今ならあのエリアボスのタカ以上の強敵は出てこないと思うから、進化ポイントは温存でいこうっと!
咲夜 : そういえば、サクラちゃんを殺しに出てきた未成体はどうすんの?
G : あー、あれか。そういや倒しに行くって言ってたな。
「あ、それは完全に忘れてました!? あれはどうしましょう!?」
わー!? 咲夜さんに言われるまですっかり抜け落ちてたー! えっと、マップで位置の確認をして……って、ぎゃー!?
「どれが私の敵討ちの相手なのかが分かりません!?」
うぅ、大体の位置は草原エリアの近くだから分かるけど、赤い印が大量でどれがその個体なのかが分からない! 分かったとしても、ここからじゃ遠いし、進化してからじゃないと倒せないよね!?
ミツルギ : そっちを先に考えておくべきだったな。
金金金 : そういやあれって、出現した場所にそのままいるのか?
ミナト : エリアを変えない限りはそのまま……あっ!
咲夜 : あ、草原エリアに1度行ったから、今いるのはその後に殺しに来たヘビだけか。
チャガ : すっかり忘れてたな……。
サツキ : サクラちゃん、それは諦めよー!
えぇ!? エリアを切り替えたらいなくなるんだったら、未成体のネズミへのリベンジはもう不可能になってるの!? むぅ、そんな落とし穴があったとは……。
「なんだかヘビを倒しに行くだけ無駄な時間も増えそうなので、今回は諦めます……」
うがー! 本当はネズミの方こそ倒してしまいたかったけど、もういないんじゃ仕方ないよね。目的地は西に決めたのに、進化をした上で北に向かうんじゃ無駄も多いもん。今回はもう仕方ないって事で諦めよ……。
「サイコロは私の事が嫌いなんですかね……?」
「そんなことを聞かれても知らないよ!?」
「だって、私から離れていくじゃないですか!」
「それ、単純にサクラの投げ方の問題だから!?」
「あれ? そうなんです?」
「そうだよ!」
「うーん、そうだったんですか! サイコロに意志があると思う方はブックマークや評価をお願いします!」
「もう意味が分からないからね、それ!?」
「私としても意味が分かりません!」
「なら、何故言った!?」
「なんとなくです! 特に理由はありません」
「……言い切ったよ。さーて、次回は『第173話 西へ向かって』です。お楽しみに!」
「新エリアに向かって出発だー!」