第156話 成長体の終盤
なんか妙な偶然でタンポポとトカゲを同時に相手する事になっちゃったけど、なんとか頑張って倒すしかないね! よーし、頑張るぞー!
「……というか、堅牢なトカゲが結構弱ってません?」
私がタンポポの花びらの中に吹っ飛ばしたんだけど、地面に落ちる事なく盛大に切り刻まれまくってるねー! 堅牢だからダメージは私が食らってた時ほどではなさそうだけど、それでもHPの4割くらい削れてる! うん、地味に凶悪だよ、この花びら!
咲夜 : 溜めがあるスキルって威力は他より凶悪だし……。
チャガ : トカゲを身代わりにしてなかったら、サクラちゃんだと死んでたかもな。
ミツルギ : あー、確かにあの無防備な状態から受けてたままなら、それはあり得たかもしれん。
「え、そうだったんですか!? むぅ、それならトカゲがいてラッキーだったんですね」
私の為に身代わりになってくれてありがとう、堅牢なトカゲ! あ、折角だから今日のサムネイル候補としてこのシーンをスクショを撮っておこう! あれだね、サムネイルはその日の私へ貢献してくれた相手への敬意を込めてだね! スクショを撮るぞー! ……うん、撮れた!
咲夜 : 遺影シリーズにトカゲが追加か。
ミツルギ : もしくは敵同士の戦闘シリーズか。
金金金 : てか、この花びらの攻撃長いな!?
ミナト : スキルLvが高いのかも? それでもそろそろ切れるはずだけどねー。
どうせどっちも倒すんだから、遺影については間違ってはいない! というか、攻撃時間の長さってスキルLvが関係してくるんだ!? 確か獅子咆哮は射程が伸びるはずだったけど、スキルによってその辺は微妙に違うのかも?
「とりあえず無防備なタンポポを今のうちに仕留めちゃいましょう!」
そろそろ切れるという事は、まだ切れてはいないという事! ここを狙わずに、どこを狙うという話ですよ! 花びらの影響範囲に入らないようにしつつ、素早くタンポポに駆け寄る!
「今です! 『爪撃』『連爪』!」
おぉ、なんだか効きが良いよ! 今の4連撃で一気にHPが半分くらいまで削れたし、このタンポポは耐久性は全然なさそう! でも、それって遠距離攻撃の威力に偏ってるって事になりそうだよね。あ、花びらの攻撃が終わった?
「わっ!? 今度は葉っぱが飛んできました!?」
この葉っぱは飛び退いて回避ー! ふぅ、危ない、危ない。どうも今くらいのLvになってきたら、スキルツリーの第6段階の強いスキルを使ってきたり、妙に攻撃力が高い感じに偏ってる敵が増えてくるんだね。
「今度は葉っぱでの連続攻撃ですか!? わっ!? わわっ!? 『放電』!」
うぅ、葉っぱの単発での攻撃は避けやすいけど、3連発とかになるとどうしても避けにくい! あんまり距離を取り過ぎても不利にはなるけど、迂闊に距離も詰めれないよ!
放電で避け切れなさそうな葉っぱは撃ち落としたけど、どうやって距離を詰めよう? 遠距離戦だと手数で負けてるよね。でも今の移動速度だと、近付く間に狙われまくるし……。
「はっ! それならこれです! 『疾走』からの急加速!」
葉っぱが私に向かって飛んできたのを確認したタイミングで一気に加速して、突っ込む形で回避! そのままの勢いでタンポポに突っ込む! 攻撃用のスキルが使えなくなるけど、逃げ回ってるよりはこっちの方がいい!
サツキ : サクラちゃん、ナイス!
咲夜 : 急加速で距離を強引に縮めた!?
G : おー、距離を詰めるには良い手だな。
ミナト : サクラちゃん、トカゲの事を忘れないようにねー! 視界に入ってないから、私達の方でも何を仕掛けてくるか分からないよー?
「あ、そういえばそうでした! えっと、トカゲは……」
とりあえずタンポポは盛大に吹っ飛ばしたから、トカゲも放置しないようにしないとね! さっきまで切り刻まれていたトカゲはどこで何をして……あれー? トカゲの姿は見つけたけど、これってちょっと嫌な予感がするよ?
「なんかトカゲが力を溜めてません!? これ、大技を狙ってませんかねー!?」
地面に足を踏ん張って、今にも突撃していきますって感じに力を溜めてるように見える! これは危険なやつだー!
富岳 : 完全に狙ってるな。
チャガ : 咆哮は……再使用時間は過ぎてるな。なら、どうとでもなる。
「あ、そういえばそうですね! とりあえず疾走の効果時間を今のうちに削れるだけ削っておきます!」
急加速でトカゲとタンポポに何度か体当たりをやっていこー! ふっふっふ、何度もぶつかってHPを減らせててるし、トカゲは無防備でどんどん削れてるのさー! タンポポの遠距離攻撃も疾走の急加速と減速を使えば、割と簡単に避けられる!
「どうせなら、トカゲの攻撃を利用してタンポポを倒しましょうかねー?」
折角私の疾走での体当たりを受けながらも溜め続けてるんだし、無駄撃ちにさせずに発動してもらうのもありかもね! そういう方向でいこっかなー?
ミナト : サクラちゃん、それを狙うのはいいけど、経験値や進化ポイントの事を忘れないようにね!
G : 止めをもっていかれたら、進化ポイントが貰えないぞ。
「はっ!? それだけはマズいですね!」
しまった、地味にその事を忘れてたよ!? さっきの作戦はやっぱなし! トカゲにタンポポを倒されたら私が困る! あ、丁度いい感じに疾走の効果時間も切れたし、これはしっかりと止めろという証!
「残念ですけど、トカゲは妨害させてもらいます! 『咆哮』!」
よし、咆哮でトカゲが力を溜めてたのはキャンセル出来た! どんなスキルか見てみたかった気もするけど、威力が他より高いのが分かってるんだから潰しておかないとね! タンポポの進化ポイントが惜しいから倒させるわけにはいかないし、私もその攻撃は受けたくないのですよ!
「そしてこうです! 『振り回し』!」
位置的にトカゲのすぐ傍にいたし、萎縮中のトカゲをタンポポへと吹っ飛ばす! 飛んでいくトカゲに向かってタンポポが葉っぱを飛ばしてるけど、まだもう少しHPは残ってるし堅牢だから多分大丈夫!
サツキ : おぉ! サクラちゃん、お見事!
G : 動作自体は投擲で小石を弾くのと同じだよな、これ。
富岳 : サラッと、地味に狙いが難しい事をやっている。
ミツルギ : スキルの補正なしで投擲を使ってるようなもんだしなー。
イガイガ : サクラちゃんは操作が上手いのか下手なのか、そこが謎過ぎる。
いなり寿司 : いや、下手って訳じゃないはず。……ただ、何かがおかしい。
神奈月 : だからといって、上手いというのも何か違うんだよなぁ……。
真実とは何か : サクラちゃんはよく分からない。それが真実である。
「なんか皆さん、言いたい放題じゃないですかねー!?」
何かがおかしいとか、よく分からないとか、結構言ってる事が失礼だよね!? でも、私も自分が上手いとは思わないし……それでもなんだか褒められる事もあるし、確かに客観視したら謎……? うん、もうこれは気にしないでおこう!
とりあえずタンポポにトカゲが直撃して横倒しになってるから、追撃だー! この残りHPなら、多分いけるはず!
「2体同時に撃破です! 『体当たり』!」
よーし、タンポポとトカゲをまとめて体当たりが直撃! これで多分両方――
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
「って、そこで死ぬのはタンポポだけなんですか!? ちゃんとトカゲも仕留められてくださいよ!?」
いなり寿司 : なんというかトドメを見誤る事が多いよな。
ミツルギ : いや、今のは削り切れてたはずだぞ?
咲夜 : 俺も今のは削り切れたと思ったけど……
ミナト : 今のはトカゲにはちゃんと攻撃が当たってなかったねー。
「あれ? トカゲには当たってなかったんです!?」
ちゃんと当てたつもりだったけど、ミナトさんが言うならちゃんと当たってなかったんだ? うーん、でもトカゲのHPはさっきよりも減ってる……あれ? 直撃したならもっと減ってるはずだよね?
ミナト : えーと、一応当たるには当たってたよー。ただ、当たったのが尻尾だったから、ダメージが入りきらなかっただけ。すごい微妙なラインだけどね。
富岳 : 少しの位置ズレか。まぁ体格差的に仕方ない部分だな。
チャガ : 同時に狙ったら、そういうズレも出てくるか。
「あ、そうなんですね! そういう事なら良かったです」
別に今のは私が盛大に変なミスをした訳じゃなくて、普通にあり得る範囲の事みたい! まぁライオンとタンポポとトカゲじゃ大きさが全然違うから、その辺は仕方ないよね!
「さーて、それでは改めてトドメです! 『放電』!」
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
今度こそ、無事にトカゲを仕留め終えた! ふー、1体ずつ戦うつもりが2体同時になった時はどうなるかと思って焦ったけど、なんとかなった!
「ふと思ったんですけど、2戦連続で突発的に状況が変わるのは止めて欲しいとこですよね!」
元々の戦う予定が2回も連続で狂うとは思わなかったよ! でも、なんとか切り抜けられたんだから、私はなんだかんだで強くなっているのです!
ミナト : あはは、崖の上から飛び降りちゃったのはともかく、今回のは単純に運が悪かったしね。
いなり寿司 : まぁ自分から飛び降りた方はともかく、今のはなー。
金金金 : 岩で跳ねた石が、後で倒すつもりの敵に当たるとは思わんよなー。
ミツルギ : 自分から間違って飛び降りた方は、まぁ単なる不注意だが。
「……間違って飛び降りた部分だけは忘れてもらえませんかねー?」
うん、今の1戦は本当に運が悪かっただけだけど、その前に1戦は私の自業自得だったよ! うぅ、次からはそういうミスはしないように気を付けよっと。
「ふと思ったんですけど、咆哮って強過ぎません?」
「ん? まぁ相当便利な部類ではあるね」
「そうですよねー! でも、ぶっ壊れてません?」
「別に全種族で使える訳じゃないし、逆に敵から使われる事もあるし、そもそもオフラインゲームだから特に問題ないよ?」
「……そう言われるとそんな気もします?」
「まぁ強力過ぎるからオンラインの方には存在しなくなってるけどね」
「あ、そうなんですか……って、やっぱりぶっ壊れてますよね!?」
「そこは否定しない」
「否定しないんですか!?」
「ぶっ壊れ性能をしてるのは事実だしね」
「むぅ、堂々と言いきられてしまいました。咆哮がぶっ壊れ性能だと思う方はブックマークや評価をお願いします!」
「そこ、同意を求める必要ってある?」
「……特にない気がします」
「だろうねー。それじゃ気を取り直して、次回は『第157話 少しの休憩』です。お楽しみに!」
「HPを回復させないとですもんね!」