第134話 サイコロを振って
さーて、サイコロを振って次にいくエリアを決めていくのさー! 出目は何になるかなー?
「って、勢いをつけ過ぎました!?」
わー!? 机の上からサイコロが勢いよく転げ落ちて、どっか行ったよ!? あれ、どこ行ったの!? サイコロを探せー!
金金金 : 慌てながら、机の下を覗き込む狐っ娘。
サツキ : サクラちゃん、無防備過ぎは要注意だよ!?
ミナト : あはは、まぁ今は服も乱れてないし、机で隠れてるし、これくらいはまだセーフかな? サクラちゃん、見つからないなら一旦サイコロを消してから出し直せばいいよー!
「あ、確かにそうですね!?」
四つん這いになって机の下を覗き込んでただけなんだけど、今の私ってそんなに無防備だったかなー? んー、まぁいいや!
とりあえずどこかに転がっていっちゃったサイコロは一度取り消し! うーん、桐箪笥から折角取り出したのに、あんまり意味が無くなっちゃった。
「えーと、とりあえずサイコロは取り消して、もう一度ですねー」
まさかサイコロが転がり過ぎて見失うとは思わなかった! どこにいったんだろ、サイコロ? リアルじゃなくて仮想空間なんだから、明確に存在してるはずなんだけどなー? あ、リアルでも消える事はないか!
ともかく、サクッと今ある行方不明のサイコロは取り消して、新しくサイコロを取り出す! 出すのは普通に机の上!
咲夜 : まさかサイコロが行方不明になるとは思わなかった。
イガイガ : 確かに。
ミツルギ : サクラちゃんから見て左側に転がっていったのは見えたけど、すぐにカメラから外れたからなー。
「あ、もしかしたら、箪笥のほうですかねー? ちょっと見てきます!」
そっか、そっか! この和室はまだ物が少ないけど、見失うとしたら机の下か箪笥の近くかその辺に限られるよねー! えーと、サイコロはどこかなー?
ミナト : サクラちゃん!? もう取り消して新しく取り出してるよ!?
「あ、そうでした!?」
既に新しく取り出したサイコロが机の上にあるのに、何やってるの、私ー!? うぅ、なんか盛大に恥ずかしい真似をしてしまった気がする!
サツキ : そういうところは変わってなくて、ホッとするね!
「そんな方向性でホッとしないでくれませんかねー!?」
いくらなんでも今の行動でホッとされるのは不本意だよ!? うー、また姉さんのマイペースに巻き込まれつつあるから、流れを戻さないと! とりあえず、机の前に戻って正座!
やっぱり賭場のやつを作って、あのサイコロを入れて振る籠みたいなのが欲しいよね。賭場は私が雰囲気でやりたいだけだったけど、実用性でサイコロを振る明確な場所が欲しくなった!
「それじゃもう一度サイコロを転がしますね! えいや!」
とりあえず今は無いものは仕方ないから、普通にサイコロを振る! 今度は机の上から落とさないように……うん、大丈夫!
「えーと、出目は3ですね! それじゃ、今の森から南に抜けて新しいエリアに向けて出発で決定です!」
ミツルギ : お、南に行く事になったか。
咲夜 : そっちのエリアは広いぞー!
金金金 : さて、どんなエリアが待っているのか。
真実とは何か : それはそれほど時間もかからず分かる真実である。
「確か現在地って結構南寄りですしねー! それじゃモンエボに切り替えて、出発です!」
ふふーん、そういう事で操作をモンエボに切り替えて、狐っ娘からライオンへとアバターチェンジ! ここから南に向けて出発だー!
「それじゃ出発しますねー!」
移動だけだからサクッと疾走を使って移動しようっと! 途中で敵が出てきても面倒だから、看破を使ってその辺は避けながら行こうかな? 移動中全部はカバーできなくても、ある程度の回避にはなるはず! あ、それよりもこっちの方が確実?
「よし、それじゃこれで行きましょう! 『看破』『威嚇』『疾走』!」
という事で、疾走開始! いぇーい! 今の私は夜の森の中でも、もう転ぶことはなーい! 慣れるとこういうのはどんどん動きやすくなるのです!
そして、看破と威嚇のおかげで目に見えてどんな種族が逃げていく様子が分かる! うふふ、その調子で逃げ惑えー!
ミツルギ : ……看破は分かるが、威嚇?
いなり寿司 : それ、Lv15の敵は来るぞ!?
「いなり寿司さん、それは承知の上ですとも! でも出てきたらひたすら疾走で逃げて、疾走で逃げきれなければ咆哮で怯んでる間に逃げます!」
これなら無茶という程ではない、結構使える移動手段になるはず! ふっふっふ、私だって色々考えて行動はするのさ!
富岳 : 威嚇が効かない知恵の高い敵や奇襲攻撃を想定してないけどな、それ。
チャガ : まぁそれはそう多くはないから無視しても良い範囲の内容だろうが……。
咲夜 : それを引き当てそうだよな、サクラちゃん。
イガイガ : 咲夜さんが言うと、更に確率が上がりそうだ。
「……知恵のは全然考えてませんでした!? でも、相手も疾走を使わなきゃ大丈夫じゃないですか?」
戦闘をせずに逃げるんだから、追いつかれさえしなければ問題ないはず! 警戒はしておいた方が良いのは分かったけど、それを警戒してたら折角の威嚇の使う機会が無くなるよ!
ミナト : あはは、まぁそこまで警戒してたら威嚇は使えないしねー。まぁ注意をするなら、初手で麻痺毒や咆哮を受けない事かなー?
金金金 : あー、いきなり行動を封じられるのだけは避けなきゃならないのか。
いなり寿司 : まぁ別に威嚇中に限った話でもないけどなー。
ミナト : 威嚇で先制攻撃をしてるようなものだから、普段よりは可能性が高くなるってくらいだね。気に留めておくくらいでいいよー!
「分かりましたー! 確かに言われてみればそうですよね!」
前にオオカミと戦った時に咆哮を使われて困った事も、毒キノコから麻痺毒にされて困った事もあったもんね。ああいう事態さえ避けてしまえればいいんだ!
「って、Lv15の毒キノコが前にいるじゃないですか!? こんなの、迂回です、迂回!」
とりあえず少し回り込んでの移動! 丁度話題に出てた敵がこのタイミングで目の前にいるってありなの!? 今、看破を使ってて効果中でよかった! そうじゃなかったら盛大に突っ込んでたよ! また咲夜さん、あなたの予言なのですか!?
イガイガ : ……マジで言ってたのが、このタイミングで出てくる?
G : すげぇな、咲夜さん。
咲夜 : ちょ、俺が原因なの!?
ミナト : ……あはは、凄いタイミングだねー。
「ほんとにびっくりですよ! あ、看破の効果が切れましたし、警戒はしながら進んでいきますね」
さっきのは看破の効果で気付けたけど、次は疾走の効果が切れるまでは……って、あれ? 別に看破の再使用時間さえ過ぎてしまえば看破は使えるんだっけ? 併用は可能って言ってたし、多分いけるはず!
「さーて、この調子で移動していきますよー!」
少なくともLv14以下の敵はこれで確実に追い払えるし、Lv15の敵でも引き離せる敵は無視してしまえばいい! 南のエリアに向かって、夜の森を突っ走れー!
「がふっ! え、なんですか!?」
ちょっと待って、盛大に転んで近くにあった岩に頭をぶつけた!? 転んだというよりは何かに動きを止められた? え、何が……って、今ので『朦朧』になっちゃってる!? 一体何がってライオンの後ろ脚に圧迫感があるんだけどー! 朦朧中だけど、なんとか見れない? あ、見れた。
「ぎゃー!? 木の根が脚に巻きついてるじゃないですか!?」
え、そんな事ってあるの!? うん、今起きているんだからあるんだよね! うがー! この木って樫の木じゃない? さっきまで戦ってたから、Lv15の樫の木はどっちでもいいよ!
ミナト : あ、そっか。敵と気付かずに近付いて、捕まえられる可能性もあったのを忘れてた!
富岳 : ……そういやそうだったな。
イガイガ : ミナトさんが可能性を見落とすとは思わなかったぞ!?
チャガ : 逆だ、逆。ミナトさんレベルだと、識別も看破もなく敵を見分けてるから、そもそも避けたい時は目視で見破って避けるから、その手のは抜けるんだよ。
ミナト : ……あはは、そうなんだよねー。
「そういう事もあるんですね!? それはともかくとして、この樫の木、離してくれませんかねー!?」
うぅ、とりあえず朦朧がどうにかならないと身動きが取れない! って、あれ? 根で巻きつくのは止めてくれたね? うん? なんで?
「って、今度はドングリが飛んでくるんですか!?」
ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って! 朦朧でまともに身動きが取れないから、狙われ放題なんだけど!? なんで他のエリアに向かって移動したかっただけなのにこうなるの!?
神奈月 : 今回のは別に使い方を間違えた訳じゃないのに、何がどうしてこうなった?
ミツルギ : ……なんでだろうな?
咲夜 : サクラちゃんだからとしか?
G : そうとしか言えないだろうなぁ……。
真実とは何か : それこそ真実である。
サツキ : サクラちゃん、ドンマイ!
うぅ、飛んでくるドングリが痛覚はないけど精神的に痛い! うがー! エリアを移動するまでは戦闘する気はなかったけど、この樫の木は絶対に倒す事に決めた! その為にも、ともかく早く朦朧は回復してー!
「……サクラ、何やってるの?」
「いやー、サイコロが恥ずかしがってどこかに行っちゃいました!」
「ただ単に投げ方の問題だよね!?」
「そうとも言いますね!」
「……まぁいいや。それにしても、威嚇を使うのが好きだね?」
「そうですねー! なんか逃げていく様子って面白くないです?」
「こっちとしてはそれで死ぬサクラの方が……いや、なんでもない」
「今、私が死ぬのが面白いとか言い掛けませんでした!?」
「そこは気にしない方向でいこうか!」
「むぅ……。あ、そうだ。今回の樫の木が卑怯ものだと思う方はブックマークや評価をお願いします!」
「サクラ、いい加減自分の意見に同意を求めるのにそれを使うのは止めようか?」
「え、別に良いじゃないですか? 最近は特に劇的に増えてる訳でもないんですし」
「余計な事を!? えーと、それでは次回は『第135話 邪魔をされたから』です。お楽しみに!
」
「邪魔な樫の木はぶっ倒しますよ!」