第130話 エリアボスの樫の木
うーん、このエリアボスの樫の木は硬くて倒しにくいっぽいけど、決して強い訳ではないみたい。まぁ堅牢なら硬くて当然な気もするけど、時間がかかっても倒せるなら問題はなーい!
「決めました! この樫の木を倒します!」
なによりも私よりLvが上だから、経験値が美味しいはず! エリアボスなら尚更に! 雷纏いの再使用時間はまだ過ぎてないけど、まだ数分かかるから流石に待ってられないしねー。
サツキ : サクラちゃん、ファイトー!
ミツルギ : お、倒す方向か。
いなり寿司 : まぁ倒さなきゃ、ここでのエリアボスが変わらないしな。
「いなり寿司さんの言う通りですね! 丁度疾走の効果も切れたので、討伐開始です!」
ふっふっふ、疾走の効果時間が切れるのを待って周りを走り回っているのは、ここまで! 樫の木には私の経験値と進化ポイントになってもらうのさー!
「って、いきなり地面から出てくるんですか!? さっきまで普通に植わってたじゃないですか!?」
ぎゃー! 全然動く気配がないと思ってたから根で歩かない木かと思ってたら、全然違ったー! 根で歩くな、根でー!
「わっ! わっ!?」
回避、回避、回避ー! うがー! 根で歩きながら、一部の根を叩きつけてくるけど、そのドングリは見せかけなの!? てっきり飛ばしてくるかと警戒してたのに、思いっきり近接攻撃だー!
咲夜 : どちらかというと根で歩かない木の方がレアケース。
イガイガ : 樫の木で堅牢だと、根で歩かないヤツの方が厄介だし……。
富岳 : それは面倒で避けたくなるやつだな。
G : 硬すぎて、削るのが嫌になるやつー。
「え、そういう事もあるんです!?」
というか、根で歩かない方がレアケースなんだ! うん、チュートリアルで根の操作を取れってわざわざその分の進化ポイントをくれるくらいなんだから、それはそうなるよね!
「でも、根で攻撃してくるならこれです! 『爪撃』!」
木の弱点は根! ここを攻撃すればダメージが通りやすいのはこれまでの戦闘で経験済み! 堅牢だから他の木よりもダメージの通りは悪いだろうけど、これなら……。
「え、根に当てて、この程度なんですか!?」
ちょっと待って! 弱点の根を攻撃しても、予想以上にHPが削れないよー!? いくら何でも弱点に当てて、全然削れてないのはおかしい気がする!
サツキ : サクラちゃん、ファイトー!
富岳 : あぁ、なるほどな。
ミツルギ : サクラちゃん、解析略化の効果が出てるから確認しとけー!
「え、そうなんですか!? えーと、『硬化』って……え、硬くなってるんです!? わっ!」
うがー! 考えてる時に根を叩きつけてくるなー! でも、動きはそれほど早くないから、回避は楽勝なのですよ!
というか、『硬化』ってなーに? 言葉の意味は分かるけど、これってどういう効果なのー? これって防御力が上がってるって事? いくら何でもずっとじゃないよね!?
「ここって状態異常の表示ですよねー!? なんで強化っぽいのも表示されてるんです?」
状態異常の表記が出てるとは思わなかったから気付かなかったけど、これって状態異常とは思えないよ!? どう見ても強化状態だよね!?
ミツルギ : よくあるツッコミどころ。敵の強化状態は状態異常と同一のものとして表記される。
いなり寿司 : えーと、通常時とは違う強化状態も、異常な状態だからって内容だっけ?
ミナト : まぁ『硬化』の場合は攻撃速度が少し落ちるから、そのデメリット部分が状態異常と言えば状態異常でもあるけどねー! その分、その効果中は本当に全然ダメージが通らなくなるけど。
富岳 : ちなみに雷纏いを使ってる間にも、実は『雷纏い』って表記は出てるぞ? まぁあまり意味はないが。
金金金 : それだと、もしかして『疾走』の使用中も出てたりする感じか?
イガイガ : 出るぞー。というか、出てたぞー。
チャガ : 自分の強化中はスキル毎に個別の効果時間は出るから、地味に解析略化の方では見落としがちではある。
金金金 : あー、確かに知らなきゃそういう事もあるのか。
「そういう仕様なんですか!? というか、そんな表記も出てたんですね!」
うん、全然気付いてなかった! 確かに色々とツッコミは入れたいとこだけど、状態異常だけでなく強化した状態も表示されるようになるんだね! 疾走とかも攻撃スキルは使えなくなるし、ある意味では状態異常って事になるのかな?
「ともかく、今はまともに攻撃するだけ無意味っぽいですね! 『硬化』の効果時間が切れるまで回避に徹します!」
サツキ : サクラちゃん、ナイスダジャレ!
いなり寿司 : 今のってどう考えても違うよなー!?
「そうですよ! 今のはダジャレじゃないですからね!?」
いきなり姉さんは何を言い出すの!? 確かに『硬化』と『効果』で発音は重なったけど、ダジャレで言ったわけじゃないよ!
「ぐふっ!?」
ぎゃー!? 姉さんにツッコミを入れてる間に、根が刺してきて、ライオンのお腹に刺さったー!? ぐぬぬ、やはり姉さんは私の配信での敵みたいだよね!
わー!? さっきほんの少しだけ減らした樫の木のHPが回復してるー!? ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って! 高い防御からHP回復のそのコンボはズルい!
サツキ : サクラちゃん!?
咲夜 : 今のはどう考えてもサツキさんのせいでは?
真実とは何か : それが真実であろう。
ミナト : ……あはは、完全に意識を逸らされてたもんね。
サツキ : ……はい、ごめんなさい。
とりあえず姉さんの相手は後! 今はこの状況から脱出しないと……って、思ったほどはダメージを受けてないみたい? あれ、実はそんなに威力自体はない感じ? だからと言って、突き刺されたままでいる趣味はなーい!
「離してもらいますよ! 『咆哮』!」
よし、これで突き刺してきている根が力なく抜けていった! あ、これまで感覚的にしか分からなかった木への咆哮の怯む効果が明確に『萎縮』として表示されてる! これは地味に分かりやすくなったよ!
「……無防備なこの根に噛みつきたいとこですけど、まだ硬化中ですね」
畳みかけて攻撃をしたいけど、今はそれは出来そうにないねー。でも、ここまで防御力が上がる効果がずっと続く訳がない! よーし、そうなれば今の時間を利用してこれだー!
「溜めが終わる頃には、硬化が切れてたら良いんですけどねー! 『獅子咆哮』!」
ちょっと賭けにはなるけど、この樫の木の攻撃自体はそんなに痛くないから途中で『萎縮』が切れてもどうにかなるはず。問題は硬化の方だけど!
というか、硬化は私の育ててる木でも欲しいなー? 堅牢のスキルツリーにあった気がするし、今日の実況外の育成でそっちを狙ってみるのもありかも?
ミツルギ : お、良い判断だ。
金金金 : そうなのか?
チャガ : そう長くはないんだよ、『硬化』の効果時間はな。……ダジャレではないぞ?
ミナト : スキルLvで効果時間は伸びるけど、それでも硬化は短時間の効果だからねー。……ダジャレじゃないよ?
咲夜 : そうそう。ダジャレじゃないから、そこは要注意。
サツキ : みんなして酷くない!?
「サツキさんがそれを言いますか!? とりあえず、効果時間については了解です!」
姉さんはともかく、私の判断は間違ってなかったっぽいね。とにかく今は樫の木の硬化が切れるのと、獅子咆哮の溜めが終わるのを待つのみ! 出来れば萎縮は残ってて欲しいけど、そこは微妙だよね。
「あ、硬化の効果が切れましたね!」
後は獅子咆哮の溜めが終わるのを待つばかり! 樫の木の防御力が強化されていなくて、弱点の根が剥き出しになって怯んでいる今が最大のチャンス! 早く、早く! 獅子咆哮の溜め、早く終わってー!
「あっ!? 『萎縮』の方が先に解除に……でも、ギリギリ間に合いました! 獅子咆哮、発射です!」
なんとかギリギリ間に合ったー! ん? 解除にはなったからギリギリ間に合ってないが正解? まぁいいや、動き始めた根を狙って撃ち出すのみ!
怯んでいてもいなくても、弱点の根が剥き出しであれば、それで十分! いっけー、獅子咆哮!
「おぉ、2割は削れましたね!」
逆に言うと綺麗に当たった今ので2割なんだ……。この樫の木、硬化が無くても素の防御力が相当高そう! でも、全くダメージが与えられない訳じゃないのは分かった! これなら決して勝てない相手じゃない!
サツキ : サクラちゃん、頑張れー!
ミツルギ : 硬化は再使用時間は長めだけど、多分長期戦になるから再使用には気を付けた方が良いぞ。
富岳 : それと出来るだけHPは回復されないように気を付けろ!
ミナト : 削る事よりも、回復されない事の方を優先にね!
「はい、分かりました! それじゃここから怒涛の反撃開始です!」
さーて、エリアボスの樫の木の討伐を頑張るぞー! 硬化の再使用やHPを吸収してくる攻撃には要注意みたいだね。今回は硬化を使ったら分かるようになる解析略化の効果が役に立ちそうだね!
「エリアボス戦の開始です!」
「さて、今回は樫の木がエリアボスだね」
「堅牢での進化のエリアボスを相手にするのは初めてですね!」
「まぁ色々と頑張って!」
「はい! なんとかぶっ倒すのです!」
「という事で、はいこれ」
「はっ!? カンペ回避をし損ねました!? タイミングが早くないですか!?」
「……そこまで警戒しなくてもいいのに」
「うぅ、読みますよー! えーと『エリアボスとの戦闘中のサクラを応援してくれるという方はブックマークや評価をお願いします』って、普通の内容でした!? え? あれー?」
「無駄に警戒し過ぎだよ、サクラ」
「……むぅ、そうだったみたいですね」
「という事で、次回は『第131話 硬い樫の木』です。お楽しみに!」
「次こそ撃破ですね!」
「……え?」
「え、まだ倒し切れないんです!? 硬くないですかねー!?」