第119話 湖の中には
湖の中には私に攻撃を仕掛けてきた何かがいる! そして、今私はその何かに繋がる何かに噛みついている! という事で!
「せーの!」
思いっきり引っ張り上げる! 出てこい、私を攻撃したやつ! おぉ、出てきた!
「わっ、やっぱりクラゲでしたー!? 結構大きいですよ!?」
このクラゲ、私のライオンの顔よりも大きいくらい! 何となく想像してたけど、やっぱりクラゲだった! そうなると、私が噛みついているこれはクラゲの触手!
「……え? ぎゃー!? 咆哮の効果が切れましたー!? ちょっと早くないですか!?」
わー!? 他にも触手が伸びてきて、絡んできて身動きが取れない! ぐぬぬ、これは確実に良くない状況!
「離してください! 『振り回し』! ……あれ? びくともしませんよ?」
ちょっと待って! スキルを使っても微動だにしないんだけど、思いっきり力負けしてる!? え、もしかしてこのクラゲは私よりLvが上?
ミナト : サクラちゃん、識別を使ってー!
富岳 : そのクラゲは識別で見ておいた方がいい。
「あ、そういえばそうでした!」
思ったよりも咆哮の怯みが無くなるのが早くて慌てたけど、識別を使う方が良いって言われてたっけ! はっ、もしや!?
「このクラゲ、ここのエリアボスなんですね!? とりあえず『識別』です!」
ふふーん、このクラゲの正体見破ったり! まぁそれでもちゃんと識別をして――
『精彩なクラゲ』
進化階位:未成体
Lv:1
……ん? あ、このクラゲってLv1なのに、なんか妙に強い。というか、この内容……。
「ちょっと待ってください!? 『精彩なクラゲ』って何ですか!? えぇ、進化階位が未成体!?」
未成体って、成長体の進化先のやつだよね!? ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って! 進化すると一気に強くなるのに、これは無理じゃない!?
金金金 : あぁ、なるほど。俺もエリアボスかと思ったが、そうじゃないのか。
富岳 : 採集のボーナスエリアは数は少ないが定位置に何個かあるんだが、大体は上位の進化階位の敵が守ってるぞ。
ミツルギ : ぶっちゃけ、どこも初めて行った段階じゃ勝てないやつ。
ミナト : という事で、ボーナス採集場所での注意点でした!
咲夜 : サクラちゃん、ランダムリスポーンだな!
チャガ : まぁ巻き付かれる前なら逃げる余地もあったが、もう無理か。
うがー!? そりゃ進化階位が違う格上の敵なら、びくともしないはずだよ! むしろ、よく咆哮が効いてくれたよね!?
「皆さん、このクラゲと戦うと死ぬのは分かってましたよねー!? あぁ!? どんどんHPが減ってます!?」
すごい勢いでHPが減っていってるし、全然身動きが取れない! うぅ、このままじゃ確実に死ぬー!?
ミツルギ : まぁ、分かってたと言えば分かっていた。
イガイガ : でもネタバレ厳禁だからなー。
咲夜 : そうそう。そういう事。
富岳 : ネタバレ覚悟で言っても良かったが、こういうのは体感した方がその危険性はよく分かるだろう。
「あ、確かにそれは言えますね!」
うん、今まさに体感中だからね! 多分皆さんに教えてもらって、疾走で逃げるという手もあったんだろうけど、それは私の望むところではない!
よーく覚えた! このクラゲは私の敵であり、倒すべき相手! そしてここから脱出出来る可能性はほぼない!
「……だからと言って大人しく殺されたくもないですね! これでどうですか! 『放電』!」
おぉ、これなら攻撃は出来る! ……でも、全然HPが減ってないし、効いてないっぽいねー。クラゲは地面の上でも割と平気そうだし……。
うん、どんどんHPが減って、もう2割も切ったし、これは死亡かな……?
サツキ : サクラちゃん、負けるなー!
咲夜 : いや、流石にここからは無理じゃね?
イガイガ : 咲夜さんがそう言ったって事は、脱出できるフラグか!?
神奈月 : なるほど!
咲夜 : なるほどじゃねぇよ!? 俺の扱い、どうなってんの!?
チャガ : 『精彩なクラゲ』なら、状態異常に強い訳じゃないな。
「あ、そういえば『精彩』はどのスキルツリーからの進化ですか!?」
それくらいは聞いてもいいよね! 今のチャガさんの発言的に、知恵ではなさそうなのは分かった! というか、クラゲで知恵なら毒殺されてたかも!
チャガ : 『精彩』は『生命』の上位だな。生命……HPは多いが、攻撃力はそこまで高くはないはずだ。
富岳 : 攻撃力が高けりゃ、既に殺されててもおかしくはない。
いなり寿司 : そういえば知恵が高ければ、咆哮って効かなくなっていくよな?
ミナト : うん、そうなるねー。雷纏いが使えたら、可能性はあったんだけどね。
「雷纏いですか!? ……まだ再使用時間が経ってないです」
うがー! 要するに麻痺させてしまえば、この窮地から抜け出せる可能性はあるんだ! ……一か八か、少し賭けに出る? それとも大人しく殺されてランダムリスポーンする?
「……上等です! この状態から逃げ出してみようじゃないですか!」
咲夜 : え、マジで!?
いなり寿司 : お、それは期待!
サツキ : サクラちゃん、ファイトー!
よーし、それじゃまずは減り続けているHPを何とかしよう! 私のライオンの口の前に、採集済みの果物を取り出して、落ちる前に食べる!
「これで、少し時間稼ぎです!」
もう2個くらい、これを繰り返し! ふっふっふ、採集したばかりの果物を使っちゃうけど、今こそ活用すべき時! ……うん、ちょっと無駄遣いに近いんだろうけど、それでもいいのさー!
チャガ : お、器用な事をしてるな。
ミナト : サクラちゃん、何をしようとしてるかは予想出来たけど、それは分の悪い賭けだよ?
「それは承知の上です! でも、大人しく殺されるのはなんか嫌なので!」
流石に雷纏いの再使用時間までまだ5分以上あるから、そこは無理! だからこそ、こっちを使う! 確率は低くても、こっちにも麻痺の効果はある!
「溜め無しの発動だと、本当に再使用時間は短くて助かりますよ! もう一度『放電』です!」
よし、直撃! うー、でもすぐには麻痺してくれないよねー。でも、まだまだ回復用の果物はある! 最悪でも咆哮の再使用時間まで時間を稼げば、なんとか逃げ出せるはず!
ミツルギ : なるほど、放電での麻痺狙いか。
咲夜 : ……これだと運次第?
ミナト : そうなるね。サクラちゃん、攻撃は巻き付いてくるだけじゃないのを忘れないように!
いなり寿司 : あー、そりゃそうだ。
「はい! 最初に刺してきた攻撃ですね!」
むしろ、その攻撃の変化こそ脱出のチャンス! スキルは同時には使えないからこそ、スキルとスキルの切り替わる瞬間が抜け出す狙い目!
また刺されて空中に持ち上げられたらアウトだろうけど、そこを回避出来ればなんとかなるはず! うー、このやり方、完全に賭けだよねー! でも、頑張る!
「あ、少し触手が緩み……え? がふっ!」
ちょっと待って、そこで知らない行動パターンってありなの!? うぅ、思いっきり顔面から地面に叩きつけられたー!
ぎゃー!? フラフラして操作がまともに出来ない!? なんでこんな重要なタイミングで!?
サツキ : サクラちゃん!?
いなり寿司 : あー、巻き付いた状態で地面に叩きつけられたか。
イガイガ : しかも朦朧が入ってる!?
ミナト : あらら、ここで朦朧は運が悪い……ん? そうでもないかな?
富岳 : あー、運が良いのか、悪いのか、これは何とも言い難い。
朦朧なんか消えてまともに操作をさせろー! あ、なんか操作が狂ってるみたいで、目の前の草を噛んじゃった。……あれ?
「ぐふっ!」
あ、触手を思いっきり刺してきて、また空中に持ち上げられちゃった。あー、これは流石に残りHP的に耐えきれないないよね。
この賭けは私の負け……って、ギリギリでHP残ってたー!? え、残りHP1とかそんなレベルの残り方じゃない!?
「え、なんで朦朧がもう回復してるんです?」
いや、それは今は別にいい! ほんの僅かなHPだけど、ギリギリ生き残ってるのが重要! そして、負けたと思ったこの賭け、私の勝ちだー!
「ふっふっふ、ギリギリ耐えきりましたよ! これで逃げ出して、私の勝ちです! 『咆哮』!」
よし、クラゲが怯んでくれた! でも、まだ油断しちゃいけない! 空中に持ち上げられてるから、今の残りHPだと着地に失敗したら多分死ぬ!
「……着地成功です!」
あ、死にかけなんだし、すぐには戻ってこれないだろうし、直接生ってる果物を食べて全回復していこうっと。よし、これで全快!
「それじゃクラゲよ、さらばです! 『疾走』!」
さー、全速力で逃げるぞー! ふっふっふ、ほぼ死亡確定の状況から死なずに逃げ出せた! 確実に勝てない格上の未成体相手に、これは勝利と言っても過言ではない!
咲夜 : マジで逃げ出せた!?
金金金 : 朦朧が回復してたのはなんでだ?
ミナト : サクラちゃんが叩きつけられた場所に、薬草があったの。朦朧の回復に使えるレアなやつがね。
イガイガ : え、あれがあったのか!?
いなり寿司 : ……イージーだけで手に入る『気付け草』だっけか。
富岳 : 完全に運が味方したな。採集をしてない状況であれを使う機会は、そうあるもんじゃない。
チャガ : 麻痺ではなく、そっちの方を引き当てたか。
「あ、そんなアイテムがあったんですか!?」
朦朧でまともに操作が出来なかった時に噛んじゃった草がそれかな? うーん、でもそもそも朦朧が入ってない方が良かった気もする?
これは運が良いのか、悪いのか、よく分かんないね! あ、富岳さんがそう言ってたのはそういう理由からなんだ! うん、確かにこれはなんとも言えない!
でも、生き残ったのは事実! 追いかけてくるのかは分からないけど、足元に気を付けながら猛ダッシュー! 今はひたすら逃げ回れー!
「いえーい! 私、復活です!」
「サクラが復活って訳ではないけど、連載再開です」
「再開されないと私は動けないんだから、復活で合ってますよー!」
「まぁそういう事にしておこうか」
「そして、連載再開で早速私は勝ちました!」
「……逃げただけともいうけどね?」
「これは逃げきったら勝ちじゃないです?」
「まぁ明確な格上だから、それは間違いないよ」
「それなら素直に褒めてくださいよ!? 私の華麗な勝ち方が素晴らしいと思った方はブックマークや評価をお願いします!」
「はいはい、サクラは頑張ったね」
「なんか扱いが雑じゃないですかねー!?」
「さて、次回は『第120話 クラゲから逃げ出して』です。お楽しみに!」
「逃げ出してって表現が気に入らないんですけど!?」
「……どう言っても、逃げた事実は変わらない」
「私、頑張ったのに!?」