第114話 横取りをされて
私の獲物を横取りしたこの木は絶対に許さない! 確実に仕留めて、進化ポイントに変えて……あれ? ちょっと攻撃はストップ! なんか思いっきり違和感があるよー!?
「……ふと思ったんですけど、まだ私って攻撃対象になってないです?」
ちょっと距離があるとはいえ、全くこの木は私には反応してないよ? マップを見ても、赤い印も出てないよ? え、なんで?
金金金 : ん? なんでだ?
ミツルギ : あー、まだサクラちゃんとは交戦状態になってないのか。
咲夜 : どうもそうっぽいなー。
富岳 : 自分からはプレイヤーに攻撃してこないタイプもいるからな。
ミナト : んー、これはもしかしたらあれかなー?
サツキ : 先制攻撃のチャンス! サクラちゃん、突っ込まなくて正解だねー!
いなり寿司 : 敵と分かった上で、交戦状態になってないのはチャンスだな。
「そういう敵もいるんですね! それなら、万全の状態で戦います!」
この木なら動き出せば確実に分かるから、少し距離を取って草陰に隠れて様子を見よう! 雷纏いは……あと3分は使えないけど、他のスキルの再使用時間は全部過ぎるまで待つ!
「これは識別は使わずに、獅子咆哮を初手に叩き込んでからが良さそうですね」
ミツルギ : 溜めの時間が確保出来るし、その方がいいだろうな。
富岳 : そういう意味でもそうだが、このヤナギの木、もしかするとラッキーかもしれないぞ?
イガイガ : さっきのカブトムシ、多分だけど樹液分泌で引き寄せられてたよな?
「はっ!? もしかして、他の虫も集まってくる可能性もありますか!?」
樹液分泌なら、昨日の配信外で木をやった時に使ったよ! ちょっと使い過ぎちゃって群がられて死んだもんね!
なるほど、昨日の私は明らかに使い過ぎたけども、あの木はあれで他の敵を誘き寄せてるんだ。そしてある意味、カブトムシを横取りされた私まで釣られそうになった訳だね。ぐぬぬ、忌まわしい木め!
富岳 : あぁ、その可能性はある。まだ絶対的なものではないがな。
ミツルギ : その辺は運次第か。だけど、運が良ければ大チャンスだ。
咲夜 : 時々いるよな。虫が集って、ボーナスステージ化してる木。
G : ……お詫びも兼ねて大真面目にアドバイス。広範囲攻撃か、多数の敵を同時に相手出来るだけの力量がなければ避けた方が良いボーナスステージだ。そしてこのヤナギの木はボーナスステージになる可能性は充分ある。サクラちゃん、ここは雷纏いを使えるようになるまで待機を勧める。
ミナト : うん、私も同意見。雷纏いがあれば、敵が大量に集まっても対処しきれる可能性が高くなるからね。
いなり寿司 : もしヤナギの木がボーナスステージにならなくても、損するわけじゃないしな。
「……なるほど、その方が良さそうですね!」
うん、今回は皆さんのアドバイスを聞いていこう! ふぅ、頭に血が上って即座に攻撃に移らなくて良かった! この木……皆さんはヤナギの木って言ってるし、ヤナギの木なんだね。まぁ普通に木って呼べばいいや。
ともかく今は雷纏いが再び使えるようになるまで、待機だー! 近くの茂みに身を潜めたまま、木を監視! 横取りされたから、横取りし返すのですよ!
「おぉ!? 確かに、新しくカブトムシが現れました! あ、カナブンもいますね!」
サツキ : おー、虫がいっぱい来たねー!
G : カミキリムシや蛾も来てるな。
ミナト : んー、でも一般生物が多いみたいかな? とりあえず蛾とカブトムシは成長体だねー。
ミツルギ : まぁカブトムシは角に白い線が入ってるから分かりやすいな。
神奈月 : 蛾は分からん! ミナトさん、どうやって見分けてる!?
ミナト : え、触覚が白いでしょ? あれ、知恵ある蛾の特徴だよ。
神奈月 : えぇ、そんな細かいとこ!?
咲夜 : ……言われても分かりにくい!?
「うーん、私もよく分かりません……。でも知恵あるって事は、要警戒の敵ですね!」
蛾で知恵となると、毒を持ってそうなイメージがあるしね! 今まで毒持ちの敵には嫌な目に遭わされたので、そこは要注意なのですよ!
「あぁ!? 木が動き出しましたよ! 根で虫たちを攻撃し始めました!」
でも、一般生物の虫ばっかりであっという間に倒されてるね。まぁそこはいいや! でも、まだ雷纏いが使えない! 思ったほど敵は集まってないから、別に良いのかな?
「思ったほど数はいませんけど、それでも3体は倒すチャンスです! 『獅子咆哮』!」
既に敵同士で戦闘が始まってるし、乱入するならもう準備を始めていかないと! なんだかんだでカブトムシと蛾が反撃してるし、場合によっては木が倒されてしまう可能性もありそう!
そうなると私のカブトムシを横取りしたこの木への反撃の機会を失ってしまうからね! 時間的には獅子咆哮の溜めが終わった頃には、雷纏いが使えるようになるし、動き始めるなら今!
G : よし! 良いタイミングで本格的に集まり始めたぞ!
ミツルギ : ボーナスステージ化、確定だ!
サツキ : 獲物の奪い合い、開始! サクラちゃん、ファイトー!
金金金 : ……これ、ヤナギの木が一方的にボコられるだけでは?
G : いや、虫同士が餌を奪い合って争い出すんだよ。そうなったら超乱戦!
イガイガ : ちなみに話は変わるけど、サクラちゃんが実況外でやってた木のあれ、実は変に手を出さなきゃ、敵の数が少数になるまでは勝手に潰し合ってくれるぞ?
咲夜 : あー、最終的には樹液を狙って襲いかかってくるけど、そこまでは手を出さなきゃ安全なんだよな。
「えぇ!? そうなんですか!?」
まさかの事実が判明したよ!? 木をやった時って過剰に樹液分泌を使ったけど、慌てて攻撃してなければ、勝手に敵同士で潰し合ってくれたの!?
富岳 : 進化ポイントは稼ぎにくいが、一応交戦状態には入るからLvアップの経験値稼ぎは出来るんだよ。……変に手を出すなとも言っておくべきだったな。
金金金 : ところでランダムリスポーンしてたけど、例のあれには影響ねぇの?
ミツルギ : あれは数回程度のランダムリスポーンならセーフ。過剰に死に過ぎれば流石にアウトだが。
サツキ : あ、あれね! ……あれって、なーに?
ミナト : あ、そっか。知らないのはサクラちゃんだけじゃないし、その辺の情報は気をつけておいた方がいいかも。
金金金 : そうみたいだな。その辺は少し自重する。
「むぅ、何の話だかよく分かりませんが……ともかく今はあの木と大量の虫を仕留めていきますよ!
あれとか言われても何の事やらさっぱりだけど、今は争い合っている虫たちと、それを仕留めようと動いている木を全てぶっ倒すのですよ!
なんだかんだで話している間に、獅子咆哮の溜めも、雷纏いの再使用時間も過ぎてるから、行動開始! この大量の敵の経験値と進化ポイントは全て私が貰うのです!
「獅子咆哮、発射です!」
おぉ! 見事に争っている虫たちを巻き込んで、木に獅子咆哮が直撃した! うふふ、この範囲攻撃、気持ちいいね!
「今の私に数がなんぼのもんですか! 『雷纏い』『連爪』!」
そしてライオンの実に雷を纏いながら、私へ突っ込んできたカブトムシと蛾に爪と振り下ろす! よし、どっちも麻痺したし、元々争ってたのと、獅子咆哮の直撃でHPはもう2割程度しか残ってない!
「うふふ、強いじゃないですか、私! この調子で一気に行きますよ! 『体当たり』からの『振り回し』!」
ふっふっふ、虫の群れの中に突っ込んで体当たりで麻痺させ、更に全身を捻って尻尾での打撃も振りまわーす! まだ麻痺してない虫は、これで麻痺して落ちちゃえー!
咲夜 : おー! こりゃ麻痺が猛威を振るってるな。
神奈月 : 麻痺は凶悪だな、こりゃ。
ミナト : サクラちゃん、ある程度麻痺させたら、確実に敵の数を減らす事! 麻痺は長続きしないからね!
ミツルギ : 敵の攻撃も麻痺させる前に少なからず受けるから、その辺も気を付けろ!
「はい! って、今は木は邪魔なんで大人しくしといてください! 『咆哮』! 厄介そうな蛾から先に仕留めます! 『爪撃』!」
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
よし、これで知恵ある蛾は排除完了! えーと、現状で他に優先して倒しておくべき敵は……うん、分かんない! とりあえず今さっきまでので、一般生物の虫は一掃出来たかな?
「あ、もうカブトムシの麻痺が切れたんですか。ならこれで! 『放電』!」
溜めは一切なしで、カブトムシに向けての放電! これで威力はどうだろ? よーし、直撃!
おぉ、倒し切れてはいないけど、溜めは無くてもそれなりの威力はあった! うふふ、再使用時間のゲージの減り方も早いし、これは使える!
「とりあえず木にもダメージは与えておきましょう! 『投擲』!」
木は一番最後のつもりだけど、虫たちには投擲を当てられる気はしないからね! 再使用時間が発生するんだから、ここで使えるものは使っておかないと!
「わっ!? まだ麻痺してない別のカブトムシがいましたよ! それならこれです! 『噛みつき』!」
麻痺していない敵は捕まえたー! もう大体使えるスキルは使ったから、ここからはスキル無しで大暴れだー! カブトムシを咥えたまま、地面に麻痺して落ちている虫を仕留めていくのです!
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
<成長体を撃破しました>
<進化ポイントを1獲得しました>
ふっふっふ、近くにいる敵から順番にどんどん仕留めていくのですよ! 強い! 間違いなく、この麻痺は強い!
元々争ってたとこに獅子咆哮で範囲攻撃をして、かなりHPも削れている! そこに麻痺を加えて、私のライオンの大暴れで虫の殲滅だー!
ミツルギ : おー、こりゃ中々一方的な展開で。
神奈月 : サクラちゃんって、こういう時に躊躇って一切ないよなー。
いなり寿司 : これを見てると、昨日の実況外の木のプレイの逆側を見てる気分。
咲夜 : あー、確かにそりゃ言える。
イガイガ : さて、倒し切れるか?
サツキ : サクラちゃん、やっちゃえー! 虫の群れをやっちまえー!
富岳 : ヤナギの木を含めて、残り5体か。
ミナト : サクラちゃんも楽しそうだし、ここは野暮な口出しはなしかな?
真実とは何か : 真実は、結果が出れば分かる。
「この調子で、全部倒し切りますよー!」
ふっふっふ、完全にあの木から横取りされた分は回収出来た! ここからはどこまで進化ポイントを稼げるかの勝負です! 経験値は途中からの乱入だから少なめだけど、そこは問題なーし!
「ふっふっふ、大暴れです!」
「思いっきり乱入したねー」
「今の私は強いのです!」
「まぁ無双状態ではあるよねー」
「このまま倒しまくるのです!」
「……ところで、サクラ? これは横取りじゃないの?」
「さー、頑張っていきますよー! 私に頑張れと応援してくださる方はブックマークや評価をお願いします!」
「あ、思いっきりスルーしやがった!?」
「ゲームの敵なんだから良いじゃないですか。リアルじゃやりませんし……」
「いや、まぁそうなんだけど……って、その基準ならゲームの横取りに怒るのもどうなの? 仕様だよ、あれ」
「それはそれ、これはこれです! 簡単に言えば気分の問題ですね」
「……まぁ気分の問題ではあるか」
「そういう事です! そして憂さ晴らしに大暴れなのですよ!」
「うん、楽しそうでなにより。さて、次回は『第115話 大暴れの結果』です。お楽しみに!」
「ふっふっふ、私の無双が続くのさー!」
「……え?」
「その反応、なんですか!?」