俺なんだわ
続けて投稿です。
よろしくお願いします。
「では皆様。副職の手続きは明日行いますので、今夜は細やかな宴を用意しましょう」
そう言って締め括られた、異世界最初のイベント。
ゲームでの食事はとても大切な物である。
食事を食べると、バフ効果がついたり耐性がついたりする。
料理スキルを持っていると、その効果は計り知れない。
なんせ、料理の幅が広がり耐性やバフ効果を複数がけする事が出来るからだ。
そして、城での晩餐。
ゲームで用意されていた晩餐は
マヨネーズがたっぷりつけられたサラダ。
香辛料たっぷりのコーンスープ。
たっぷりの油であげた魚のフライ。
生温いワイン。
濃いソースにたっぷり漬け込んだウサギの丸焼き。
デザートは、シロップに漬け込んで砂糖をまぶしたドーナツ
時代背景はルネサンス時代とほとんど変わらない。
つまり香辛料を使えば使うほど権力の象徴であった。
そして、それを大量に振る舞う事は親愛を示している。
それはもう、イジメの域である。
そして時代背景に、合わない調味料。
主にマヨネーズなど設定上は、昔来た勇者が広めたご都合設定。
ゲームでは、満腹感が広がった。
とテキストに書いてあるが、ここは現実となると。
地獄絵図である。
日本人はとても味に敏感だ。
そして、元々食べる量だってそうだ。
さっきまで28歳の身体。そして、夜中に呼び出されてこの量を食わされる。
流石に朝戸も冷や汗を流しながら食べていた。
コックが勇者由来の料理をと持ってくるが、その度に顔が青くなっていく。
ちなみに俺はそこそこの量。
理由は親愛度が違いだろう。
それでも、味が濃すぎてマズイ事には違いない。
つらい。
料理スキルを取るべきかもしれない。
夜。
各自別々の部屋に案内される。
俺は案内をしてくれたメイドさんに手頃なお酒を持ってきてもらう。
そのお酒を持ち、3人を飲みに誘う事にした。
現状の確認をしたかったからである。
するとメイドさんから、確認をしてくるので
それまで動かないでほしいと言われる。
もしかしたら、お楽しみの最中かもしれないと笑っていた。
現実だと、割と直接的に来るんだなぁ。とか考えてもらったお酒を飲んでいた。
うん。ヌル不味い。
無いよりマシのレベルである。
そうだ。と思い出し【鑑定】のスキルを使用する
【鑑定】には色々制約があるが、商人に関しては制約がなく、人物、物など自由に鑑定がつかえる
【古びた蜂蜜酒の水割り】...お城の使用人が飲む為の蜂蜜酒を水で割ったもの。一般的な飲み方
最悪だ。
ゲームのキャラクターが、城で上等なお酒を飲んだ時美味しいと盛り上がっていた理由が分かる。
こんなお酒を普段飲んでたら、濃いお酒などが美味しく感じるに違いない。
晩餐会でのお酒は良い分類のお酒なのかもしれない。
数分後メイドさんに連れられて翔駒が1人やってきた。
他の2人は晩餐会が効いて、ダウン中との事。
翔駒はほとんど手につけなかったと言っていた。
メイドさんにお礼を言うとそのまま部屋から出ていく。
「久しぶりだな。ショウ」
「うちの子が生まれた時以来だなジン」
「らしくないな。いつもならもっとお喋りで!ってそんな訳にもいかんか。」
「ジン。お前に聞きたい事がある。」
「なんだよ。」
お酒をついで、翔駒に渡す
「ジン、お前はゲームやった?」
「一応やったよ。ステータスには文字化けしてたけど、そこそこクリアもしてた」
「オレはカジノで遊んで終わったよ」
「いや、ストーリーを進めろよ!ミニゲームしかやってないじゃん」
翔駒は頭をかきながら、難しかったんだよなぁとボヤきながらお酒を飲む
「この酒不味い。で、ジンどこまでゲームを知ってる?」
「全部」
「お前も朝戸と一緒で設定集とか買ったくち?」
「買ってないけど知ってるよ」
「隠してる事全部話せ。」
「直球すぎない?」
「こっちは怖くて仕方ないんだよ。なんで朝戸はあそこまで自信を持てるんだ!?おかしいだろ!!何だよ国の為とかそんな都合のいい事知らねぇよ!」
「俺もここがゲームと似た世界だって事しか分からないから、この世界を知ってる訳ではないけど。ゲームの内容ならちゃんと知ってる。」
「オレは帰れるのか?子どもと嫁が待ってるんだよ。」
「ゲームだと、魔王の城にある秘宝を手に入れて召喚された所に持っていくと元の世界に帰る設定になっている。」
「でも、違うんだろ?真のエンディングとか、意味分かんないから。」
俺はぬるいお酒を流し込み間をおく。
「ゲームで、そのエンディングはバットエンドになっている。なんせ、召喚された時から時間が進んでいるんだから。そしてその間の時間はつじつま合わせで行方不明や引きこもってた事になってしまう。」
「流石に子どもがいて、引きこもりはやだよ。このまま朝戸について行ったら、ロクな事になりそうにないな。」
「もしかしたら、朝戸は真のエンディングを攻略してるかもしれないだろ?」
翔駒はぬるいお酒をチビチビと口にする。
「それでも、お前は何かしら勝機があったんだろ?」
「さっきから、俺が全部知ってるみたいな言い方してるけど、なんでそう思うんだよ。」
「お前は本当に危ない橋を渡らない。目の前の答えが分からないと、どんな奴に対しても一旦我慢してから丁度いい時に抜けるタイプだよ。」
友達だしな。それぐらいは分かると苦笑いをする翔駒。
その顔を見て、何も言えなくなってしまった。
なんか、チョロいな俺と思いもつつお酒に視線をやる。
そういえば、お酒を飲みながら話したのって翔駒の子どもが生まれる前だった気がする。
「確証は無い。でも、それでもいいなら聞いてほしい。」
「分かった」
「俺が知ってるゲームなら真のエンディングルートは、全種族が揃った上での邪神討伐。」
「全種族って、全種族?敵も?」
「そう。魔族も込みで全種族揃っての総力戦。ゲームのシナリオでは、裏ボスの邪神を倒した後に夢に出てきた女神様から願いを叶えられるって設定だった。」
ゲームだとその願いは大抵、強くてニューゲームとか、始まりのスタート設定を変える事が可能だった。
「なら、その事を朝戸に言ってクリアさせるか?」
「俺の事を何故か敵視してるのに?俺何かやったっけ?」
「大学の1年の時だろ?ジンとサークルが違ったしなぁ」
「朝戸がゲームに関してどこまで知ってるかは分からないけど、このエンディングに関しては設定集でも濁してるんだよな」
設定集、公式本にもあえて濁した真のエンディングルート。
その方法を模索して楽しんでもらおうとした意図はあった。
実際にクリアをしたプレイヤーもいたらしい。
邪神の存在は、公式にも出ているが
倒す場合、とてもめんどくさくなっており、何より公式でちゃんと手順をふまないと何度やっても倒せず、完全に封印する事が出来ない様になっている。
「ゲームを模倣した世界だって言ってるから、その条件で願いは叶えてもらえると考えている」
「だいぶフワっとしてるけど、それで何とかなるもの?」
「俺はそれしか帰る道を知らない。でも俺って商人なんだよなぁ」
「戦えないじゃん。経済戦争でも仕掛けるの?」
「俺はそこまで頭が良くない」
いやほんと、商売とかゲームでしかやった事ないわ。
「それで、随分詳しいけどその自信はどこからやってくるの?」
あー、やっぱり気になるよね。
「その...俺なんだわ。」
「何が?」
「このゲームのシナリオ担当したの、俺なんだわ」
読んでいただきありがとうございます。
続きは早めに投稿させていただきます