お互いの為ですから
どうか、よろしくお願いします。
馬車から降りて、目の前には大きな城
とても、立派でアニメや漫画でしか見た事のない城。
周りには鎧を着た兵士。
中に入ると迎えてくれるメイドや執事達
「すげぇ、ファンタジーみてぇ...」
篠崎さんが呟く
そのまま玉座へ通され、王様と対面する。
「改めてワシがこの国センドール王国、国王ガリウス・センドールと言う。よろしく頼む!」
「これ!勇者殿と仲間達。無礼ですよ!!跪きなさい!」
「良いのだ、マリス宰相。彼らは我らの救世主。その様な彼らを跪かせるわけにはいかんだろう。」
この王様と宰相のやり取りゲームで何度も見た光景
これは王様の威光を見せるものであって、懐の深さアピールだったとゲームで後々暴露していた気がする。
「さて、勇者諸君。皆には是非お願いしたい事がある。召喚された理由などは聞かれたかな?」
「いえ、まだ話してません。ですが、この世界の事は伝えました!!」
「ほう!この世界の事は把握済みと、流石は勇者様。では、改めて説明させていただきます。」
たしか、王様のセリフはこうだ。
この国は今とんでもない危機に襲われている。
この国は魔族と戦争中であり、今は停戦中だが、いつ攻められるか分からない。
皆さんにはどうかこの国を守ってほしい。
もし、負けたら人間は皆殺しにされてしまう。
この後勇者は僕に出来るだろうか?と不安そうに語るシーンだが、当然そんなのは無視な朝戸
「当然です!僕にはこの力があるのだから!!ステータスオープン!!」
すると、朝戸の前に半透明な板が出て来た。
名前:吉川朝戸
性別:男
歳:28→20
レベル:1
job:勇者
sjob:
攻撃:A
防御:B
魔攻:A
魔防:B
俊敏:C
幸運:E
スキル:全属性魔法、デメリット無効、攻撃強化、魔法強化、対魔殺し、勇者補正、パーティー経験値共有、聖剣
称号:ゲーム攻略者、ゲーム人生、家を護りし物
「な、何と!最初の段階でAランクが2つも!それに、魔族に対しての有用なスキルをお持ちの様だ。」
ゲームでは、SSからFまでの9段回で強さが判別され、一般の兵士でオールCとされており。
何よりゲームの職業にはデメリットがつき攻略に制限が何かしらつくのだが、勇者にはどんな職業が出来るようにデメリット無効が追加されている。
破格のスキルに皆驚きと興奮が隠せないようだ。
その様子に、他の3人も少し驚いていた。
スキルにではない。称号にだ。
こいつニートじゃね?
「みんなもステータスと言ってみてくれ!これで、みんなの凄さが分かるから」
恐る恐るステータスと呟く俺達4人
名前:篠崎竜也
歳:28→20
性別:男
レベル:1
job: 賢者
sjob:
攻撃:B
防御:B
魔攻:A
魔防:A
俊敏:C
幸運:C
スキル:全属性魔法、道具鑑定、魔法強化、アイテムボックス(自分が持てる物)、補助魔法、エンチャント
デメリット:魔法以外で攻撃した場合、魔力大幅ダウン
称号:ゲーム経験者、お酒を極めし者、夜に生きる者、
名前:秋山美玲
歳:28→20
性別:女
レベル:1
job:シールダー
sjob:
攻撃:B
防御:A
魔攻:B
魔防:A
俊敏:E
幸運:B
スキル:対魔法防御、対物理防御、腕力強化、衝撃減退、恐怖心減退、狂気減退、
デメリット:盾以外を装備すると防御力大幅ダウン
称号:ゲーム熟年者、元レディース、統率者
名前:千崎翔駒
歳:28→20
性別:男
レベル:1
job:テイマー
sjob:
攻撃:C
防御:B
魔攻:C
魔防:B
俊敏:A
幸運:C
スキル:テイム、補助魔法、テイマー魔法、召喚(契約済みのモンスターのみ)
デメリット:モンスターや獣を直接殺めた場合、信頼度大幅ダウン
称号:ゲーム経験者、愛妻家、家畜の統率者
おおおおおおおお!!!
周りが盛り上がっていた。
そして何より、秋山さんが盛り上がっていた
「若返ってる!あの頃のあたし!!来たーーー!!!」
「元レディース、統率者、すげぇ称号」
「ちょ、水川さん見ないでください!これは、若気の至りで...セクハラですよ!」
「すいません。てか、秋山さんもゲームやってたんですね。」
「まぁ、そのほら有名でしたから...」
「賢者ですか、まさかこの歳で魔法を使えるなんて...まぁ若返ってますけども、感動です。」
「夜に生きる者ってカッコいいですね」
「夜の仕事ばかりですからね〜。そういう千崎さんはご結婚を?愛妻家とは素晴らしいですね。」
俺のステータスは
名前:水川甚平
歳:28→20
性別:男
レベル:1
job:商人
sjob:
攻撃:D
防御:D
魔攻:D
魔防:D
俊敏:A
幸運:B
スキル:契約、アイテムボックス(商品のみ)、模写、鑑定
デメリット:直接攻撃をした場合、HP半分減少
称号:ゲーム×××、現場監督、趣味に生きるもの
商人か...え?戦えなくない?
てか、リアル販売業はやった事ないんだけど
「うわっ!地雷職が2人もいるじゃん!!」
大きな声で驚く朝戸
「商人とか、使えない職業じゃん!絶対にパーティーに入れないよ!!使えて、勇者の為にお金稼ぐしか生きる意味ないじゃん!!」
は?
「テイマーも運が良ければ使えるけど、ギャンブル要素があるんだよね!翔駒どうする?強いモンスター手に入れてからパーティーに参加する?」
いやいや、勝手すぎないか?
「では、勇者殿。この2人は置いていかれるのですか?」
「今後の努力次第ですかねぇ!」
「では、どうされますかな?お2人とも、城には1ヶ月ほどの滞在は大丈夫ですがそれ以上と、なりますと...」
分かるよね?と王様も朝戸の肩を持つ。
勇者にヘソを曲げられたくない気持ちは分かる。
けど露骨すぎるわ。
しかもこの勇者は財布になれと、言いやがった。
「なら王様、いいっすわ。」
「ほう?」
「こっちは自由に生きますので、いくらか生活費とここに3日ほど滞在させてください。」
「こちらはかまわんが、3日とは?」
「この国の事が知りたいので本を読ませてください。それくらいは、かまいませんよね?」
「そうだな、急に呼び出したのだ。それくらいは許可しよう。」
あーあ、嬉しそうな顔しちゃって。
そりゃそうだ、下手に滞在されるより。
手切金を渡した方が縁が切れた方が楽だからだ。
ゲームの裏設定で、城に仲間を置いていくと別の街で、合流することになる。
何と城から滞在費を払えと借金させられるのだ。
そうして、勇者が旅をしている裏では借金を返済している仲間達がいると言う詐欺まがいな事が起こる。
「しかし、水川殿が自由に生きるとなると、我々も支援などは出来なくなりますがよろしいですな?」
お前がどうなってもこっちは知らんぞって事ね。
「構いません。勇者が功績を立てようともこっちには関係無い物としてください。」
当然だとうなずく朝戸
「王様!彼はこう言ってるので、それでいいじゃないですか。彼はこの世界で商人として質素に生きるんですよ」
「分かった。では水川殿の決意も固い。3日間、客人として扱い平民の生活費3ヶ月分の資金を与える。それでよいな?」
「出来れば、この国にいる間は城の者に俺を襲わない様にしてほしいのです。」
「水川殿!それはいささか無礼ではないでしょうか?この国にはその様な無作法はおりません。」
マリス宰相は本気で怒っている
だが、こちらは元から信じていない。
信じては行けない。
このマリス宰相がゲーム内では仲間を借金漬けにした張本人なのだから
「それは存じておりますが、来たばかりでこの国の事が分からず不安なのです。そうだ!せっかくなので、商人のスキル。契約を使ってみたいのです。ぜひ、今後の参考にさせてください!」
スキル契約、お互いの同意の元で行い、約束を破れない強制力を持つ物。
これで交わされた契約はお互いの同意が無いと決して破れない。
「王様!よろしいですよね?せっかく王様が宣言してくださるのですから、その名誉を受けたいのです。」
「...良かろう。使ってみるがよい」
たしか、ゲームでは右手を上げて宣言をしていた
「では、スキル【契約】
1・勇者パーティーの功績、失敗などしても商人水川甚平と関係ないものとする
2・商人水川甚平が王国に金銭的な支援を要求する事はない。しかし、その代わり3日間の滞在と3ヶ月分の生活費を支払う事
3・この国の滞在中は、この国の人間は一方的に襲ってこない事。ただし、商人水川甚平が意図的に敵対行為を起こした場合は別。
これに問題無ければ、双方の同意をもって受理する」
「金銭的以外の支援とは?」
「本を読みたいなど、お金がかからないお願い程度です。」
「この国の人間は税金を払っているものでよいか?」
「構いません。」
「敵対行為とは具体的?」
「犯罪行為が見られましたら、どうぞお好きな様に」
「ならば、同意する」
「ありがとうございます。では、【契約】完了です。」
宣言を終えると2枚の羊皮紙が出てくる。
おぉ!ゲームとそっくりだ。
そして、俺の中でレベルが上がった感覚があった。
職人ジョブの特性。
それは、他と違い戦闘以外でも経験値を得る事が出来るのだ。
商人の場合は契約や商売が成功すると、レベルが上がる
相手の立場が上など、こちらに有利な商売が出来るとレベルが上がる。
あとで確認しなければ。
しかし、こんなのは時間稼ぎにしかならない。
あんなガバガバな約束、本来なら簡単に裏をついて破れる。
でも、ここで王様達は利益を考え許可をする。
ここには、まだ困惑中の3人がいるからだ。
この3人には何としてもプラスな印象を与えたい。
勇者と入れば優遇しますよ。
その事を印象付け出来れば、露骨に態度を変えることもしないと思う。
「しかし水川殿、勇者殿の手伝いをすれば、我々も旅の支援をしました。ですが、お一人となると大変ですがよろしいので?」
マリス宰相はニヤニヤとしながら、心配を装ってくる。
「マリス宰相。ご心配をどうも、少しずつ勉強をしますよ」
「ならば、せめて副職の手続きくらいは準備します。そうすれば生活も有利になりましょう」
「お願いします。」
「いやいや、お互いのためですから」
そうですね。愛想笑いで返す
お互いのためによろしく。
マリス宰相殿。
読んでいただきありがとうございます