鉤爪手甲の日常
『混血の闘士 グラウクス・ウラカーン』
「てめぇ・・・・・・誰に手ぇだしたかわかってんのか!」
あーあー、うるさいなー、弱いくせに吼えちゃってー。そういうこと言うのは、オレっちの服に触れてから言おうねー。
「ひっ、まて、お、おおれを殺すとこの街の仲間が全員でお前を袋にするぞっ」
そっかそっかー。次の大会まで暇つぶしにはなるよねー。ていうか、殺しはしないよー。死んだらおしまいじゃーん。じゃ、おやすみー。
「がふっ!!」
ふぅ、蹴りだけが上手くなってくなー。爪使うと死んじゃうしなー。やっぱり大会しかないよねー、強いやつと戦うのはー。
大会は三日後かー。もう少しの辛抱辛抱・・・・・・。我慢って嫌いなんだけどねー。
「・・・・・・また喧嘩か。いい加減にしねぇか。そんなことさせるためにその手甲と特別な服をつくってやったわけじゃねーぞ」
おやっさーん、そんなことってなんだよー。オレっちから売ったわけじゃないってー。ただちょぉ〜っと肩がぶつかっちゃってさー。
それよりおやっさん、腹減ったー、なんかくれー。
「ったく。しょうがねぇやろうだな。ほらよ、これならお前でも食べられるだろ」
ええー? そんな食材だけ渡されてもー。
「ばかやろ。お前の爪で全部刺して直接焼くんだよ」
あ、なるほどねー。そっかーわざわざはさむことないよねー。おやっさんあったまいー。
じゃーさっそくーぷすぷすっとなー。ふんふんふ〜ん。
「・・・・・・で、どうよ。その服」
服? あぁー、うんーかなりいいよー。前より全然着替えやすくなったー。破れてもすぐに元に戻るしー、無理矢理つけても着た後に修復はじまってくれるしー。
「ま、そのかわり防護性はゼロにちかいけどなー」
別にいいよー、それはー。オレっち、喰らうことあんまないしー。体も丈夫だしねー。
「ふん・・・・・・。それよかお前、厄介な奴らに手ぇだしてねーだろーな?」
誰のことー? いっぱいいすぎて誰を言ってるかわかんないけどー。
「最近徒党組み始めたゴロツキどものことだよ。裏通りにたむろしてるって噂だぜ。なんでも、冒険者を用心棒にしてるらしい」
ふぅん・・・・・・そいつって強い?
「さぁなぁ」
・・・・・・。
「・・・・・・おい、お前また変なこと考えてんじゃねーだろーな? 大会に出るんだろ、騒ぎ起こすなよ」
なははー、何も考えてないってー。大会っていったらあと三日じゃんー、おとなしくしてるよー。
「・・・・・・ほんとかぁ?」
あ、疑り深いなー。オレっちってそんな信用ない?
「無いな」
さいですかー・・・・・・。
なーんて・・・・・・ごめんね、おやっさん。オレっち強い奴と戦わないと禁断症状でるんだよねー。
・・・・・・良い夜だなぁ、月がまんまるだー。・・・・・・ほんと、嫌になるほど良い夜だなー。
おっと、お目当ての連中はっけーん。えー、ひーふーみーよーよーざんす。八人かー、ちょっと前菜には少ないかなー。
「んんー? なんだぁてめぇ。なんのよ、げぶっ」
はいはい、邪魔邪魔ー。
「て、てめぇ、なにしやが」
遅い遅いー。
「るぐぉっ」
「ごふっ」
あと五人〜。てーい、やー、蹴りばっかりも中々むずかしいもんだねー。
とうとーう。
「おがっ」
「げぶぉっ」
三人ー、ラストスパァ〜ト。秘技〜爪軸回転蹴り〜
「ぎゃー!」
はい終了。さーて、噂の冒険者さんはどーこーかーなー?
「おい、お前らなんの騒ぎだ」
おぉー、早速出てくれるなんてーうれしいねー。ていうか、お約束?
「てめぇ、なにもんだ!」
これが冒険者さんねぇ。ふむふむー、筋肉は重そうだなー。身長はオレっちよりちっと高いかなー?
「・・・・・・て、てめぇ、確か三ヶ月の大会優勝者か?」
あれ? 知ってたー?
「ややっぱりそうか。こ、今大会にも出るんだろ? おれも出るぜ、そ、その時に戦ろうじゃねーか」
ええー? 確かに大会にはでるけどー、なんでそうなるんだよー、今戦ろうよー。
「お、おまえあほか、大会出場が決まってる同士が大会前に戦って問題起こしたらそれ以降大会でれねーだろ。お前はそれでいいのか?」
そんなシステムだったっけー? 初耳だなー・・・・・・。うーん、でもオレっち説明とかあんま聞いてないしなー。大会に出られなくなったら困るなー。
「分かったか? おれも大会に出られなくなったら困るし、な、なにより、どうせ戦うならお前を大勢の前で負かしたいぜ! じゃあな!」
あ、おいー。って足速いなー、むーん・・・・・・なんか面倒になっちゃったな。帰ろ。
「お、おれたちやられ損? ・・・・・・がくり」
大会楽しみだなー。
ふわぁ〜ぁ・・・・・・あぁ、よく寝た・・・・・・。
明後日が大会かぁ。待ち遠しいなぁ。・・・・・・腹減った。おやっさんとこ行こーっと。
相変わらず活気溢れる大通りですことー。いろんな人がいるから手甲と爪むき出しでも妙な目でみられなくてすむなー。いいことだー。
「ち、ちがうからな! 別に、そんな出たいとかないんだからな!」
およー? なんの騒ぎだー?
おお! 可愛い子ちゃんはっけーん! ちっこいなー、人形みたいだなー、髪白いなー、手触りよさそうだなー。なんか甘い匂いがするー。
「はいはい。分かりましたよ〜」
おほほー、これまた可愛い子だなー。まさにボンッキュッボンッ! すごく柔らかそうな体だなー、ううん、魔性。「おにーさん、パフパフしない?」って言われたいね、いやマジで。
・・・・・・ん? くんくん・・・・・・あの美人さん・・・・・・なんか同じ匂いがするな。
それにしてもレベル高い三人だなー、これは声かけないといけないよね、男として!
って、ああ、そんなときにかぎって人の波! まずいっ、爪っ、切っちゃう切っちゃう!
・・・・・・ふぅ。あーぁ、結局見失っちゃったー。残念無念こりゃ悔しいってやつだね。
さて、メシメシ〜。
おやっさーん、メシくれー。
「・・・・・・お前な、ここは飯屋じゃねーんだぞ」
いいじゃんかー、お金は払ってるっしょー。それにどうせお客さんいないじゃーん。
「うるせーぞ! ちっ、おら、昨日みたいに食え」
おおー、さすがおやっさんー、しっかり準備してくれてるー。流行のツンデレってやつ? 中年がやっても気持ち悪いだけだよ?
「すまんが、人の言葉で話さねーか? つーか、お前結局昨日行ったな? 路地裏」
・・・・・・なんで?
「話した途端路地裏のゴロツキが八人もぶっ飛ばされてたら分かるだろーが」
なははー。だよねー。ちょっと急ぎすぎたかなー。
「ばかやろう」
あいたっ。ちょっとおやっさんー、道具で殴るのやめてっていったじゃんよー。バカになったらどーすんだー。
「安心しろ、お前は元々バカだ。今日はちっとウチを手伝ってけ。どうせ大会まで暇だろうが」
ちぇー、横暴だなー。
うーん・・・・・・もう朝ー? ・・・・・・あーちがうかー、朝にかえってきたもんねー。昼かなー。
おやっさん人使い荒すぎだよー・・・・・・あぁ、眠い、もっと寝よ・・・・・・
・・・・・・夜だよ。もう夜だよー・・・・・・。一日を無駄にした気分だー・・・・・・。
・・・・・・とりあえずメシいこ・・・・・・。
どの店にしようかなー。
ん? くんくん。お、この甘い匂いはー、あの子だー。美人さんの匂いもする・・・・・・いくっきゃないでしょー!
えーと、ここかなー。って、どわー! 大男が店から飛び出して迎えるサプライズ歓迎ー!?
って、あれ、こいつ、ゴロツキ用心棒Aさんじゃないかー。んんー? なんで吹っ飛んできたんだー?
帰る
→ちらっと中を窓からのぞく
トドメを刺す
どれどれー。お、あの子だ。んん、もしかしてあの子がやったのかな? 雰囲気的にそんな感じ・・・・・・。
あ、片付け始めた。やっぱりあの子かー。へぇほぉふぅん・・・・・・それはそれは・・・・・・。あの子大会でないかなー。
・・・・・・お近づきになるチャンス・・・・・・と行きたいところだけど、目の前に行ったら我慢できそうにないなー。それに、お片づけって苦手ー。
カーエロ。アハ。
・・・・・・なんてことがあって、まさかホントに大会に出てるなんてねー。いやー、人の縁はわかんないもんだなー。
ううーん、他の人と比べても一番おいしそうだなー・・・・・・。なんとしてでも食べたい。戦い続けたら決勝戦で戦れそうだけど、我慢できないなー、これはー。
どうすっかなー・・・・・・。あ、そっかー。すぐ戦えるように細工しちゃえばいいのかー。そっかそっか、オレっち天才、あったまいいー。
さーて、そうと決まればあんま得意じゃないけど、前におやっさんから教えてもらった透視の魔術ってやつを使ってみようかなー。試験官さん、素直に教えてくれないだろうしね。あ、透視の魔術をおやっさんが何に使ってたかは秘密ねー。お客さんが少なくなった理由でもあるからー。あぁー、あの子と戦えるのかー。考えるだけで我慢できなくなりそうだー。
アハ、タノシミダナー。ワクワクスルヨー。