9.討伐隊
町に戻ると、真っ直ぐギルドに向かう。
「すいませーん」
「はーい」
奥に向かって呼びかけると、昼に聞いたのと同じ声が返ってくる。
また数十秒空いた後におばちゃんが出てきた。
「どうしました?」
「あの、西の森にかなりやばそうな魔物が出たんですけど。明らかにアルムラットとかアルムディアーではないです」
どう考えても、あんなサイズの魔物が出せる音ではなかった。
「本当ですか?そんなはずは…。あの森にそれ以外の魔物が出るなんて聞いたことないですけどねえ…」
「いや、本当ですって」
そんなこと言われてもなあ。
出たもんは出たんだから。
「うーん。どんな魔物だったんですか?何の動物に似てたかとか」
「それは…。見てないので分からないですけど…」
「そうですか…」
あ、これは信じてないな。
あんまり危機感を持ってる感じじゃない。
「ちょっとオーナーに報告してみますね」
そう言って奥に戻っていった。
一応オーナーには話通してくれるみたいで良かった。
…てかあの人オーナーじゃなかったのか。
じゃ、あの人が受付嬢ってこと?
…えぇ。
受付嬢のイメージと違いすぎてショックを受ける。
あれで受付嬢やれるのか。
他の島でもあんなおばちゃんがやってるのかな。
もっとみんな可愛い子がやってるもんだと思い込んでた。
…冒険者続けてくモチベーションが、ちょっとだけ下がった。
◇ ◇ ◇
結局、とりあえず町の冒険者に見回りに行ってもらうことになった。
本当だったらすぐに討伐隊を組んで、倒しにいかなきゃいけないレベルなんだけど、やっぱり完全には信じてもらえなかったみたい。
さすがに、島に来たばかりの一般人ひとりの通報で、いきなり冒険者を総動員する訳にはいかないとのこと。
島に冒険者は4人しかいないらしく、討伐隊組むと、それだけで全員になっちゃう。
まあしょうがないか。
見回りに一人割いてくれるだけ良かったな。
よし、これで俺の仕事は終わり。
俺にはまだ冒険者の戦いについてけるほどの強さは全然ない。
後は冒険者たちがなんとかしてくれるでしょ。
《5720+5720の経験値を獲得しました》
《テオ=シェーファーがレベルアップしました》
『ステータス』
《名前》 テオ=シェーファー
《レベル》22→48
《職業》 ダンジョン探索者
《HP》 31→57(+20)
《MP》 31→57(+20)
《物攻》 31→57(+20)
《物防》 31→57(+20)
《魔攻》 31→57(+20)
《魔防》 31→57(+20)
《経験値》 185/285
《スキル》ダンジョンキー
疲労無効
鑑定
アイテムボックス
毒弾
◇ ◇ ◇
ザワザワザワ。
外から聞こえる音で目を覚ます。
なんだか騒がしい。
木造の階段を下りる。
今回は宿の二階の部屋を借りた。
一階に来ると、外で多くの人が立ち話をしている。
昨日の朝は、道にこんなに人はいなかった。
「なにかあったんですか?」
フロントの女将さんに聞いてみる。
「私たちも詳しくは分からないんだけど、どうも大型魔物が出たらしいのよ」
「え、そうなんですか!?」
「本当かは知らないけどね」
驚いた感じを出しておいたけど、それはもう知ってる。
昨日のアレだ。
きっと、森の見回りにいった冒険者が見つけて報告したんだろう。
それでこの騒ぎになってたのか。
ま、俺はウサギ倒しにでも行きますか。
騒いでたって仕方ないし。
冒険者たちを信用して任せるしかない。
森とは反対の東出口に向かおうと宿を出る。
すると見覚えのある女性と目が合う。
「あら、あんた、いいところに。ちょっと来なさい」
…受付嬢おばちゃんだ。
何故か俺をギルドがある方向に引っ張っていこうとする。
てか喋り方違くない?
「うるさいわね。あれは仕事用よ。今は業務時間外だから別にいいでしょ」
まあ、こっちの方がしっくりくるけど。
そして案の定、連れていかれた先はギルドだった。
ただ今回は外の受付じゃなくて、部屋の中。
入ると中には、五人の男の人が座ってる。
スーツを着た40代くらいの人が一人と、動きやすい格好の俺のちょっと年上らしき人が四人。
オーナーと冒険者四人だそう。
「君が最初に報告入れてくれた子か。まあ、座ってくれ」
オーナーに促され、空いてる椅子に座る。
「単刀直入に言う。君にも討伐を手伝ってほしい」
……ん?
この人何言ってるんだ?
「あの、俺の目見てもらったら分かると思いますけど、俺非戦闘職ですよ…?」
「ああ、分かってる。もちろん本体と戦ってもらおうとは思ってない。ただ手伝って欲しいんだ」
「どういうことですか?」
話が見えてこない。
「今回現れたのは、大型のネズミの魔物だ。そいつ単体ならそこまで強くなさそうなんだが、面倒なことに周りに大量のアルムラットを引き連れてるんだ。そいつらの数を減らして欲しい」
ああ、そういうこと。
それなら出来ないこともない。
「でもなんでそれを俺に?」
「何をしていたのかは知らないが、アレに気づいたってことは森の中にいたんだろ?しかも一人で。だったらこの辺の小型の魔物には勝てる強さがあると判断したんだが」
「…まあ、そうですね」
「じゃあ」
「分かりました、やりますよ」
「おお、ありがとう!正午くらいから開始するから、それまでに準備整えておいてくれ。よろしく頼むよ」
てことで、討伐隊に急遽組み入れられることになった。