16.グリズリー
金曜からまた執筆の時間がある程度確保できるようになると思います。
お待たせして申し訳ございません。
森に向かう道中に魔物の姿は見られなかった。
門番の話によると、この島のほとんどの魔物が森に集まってるらしい。
実際に森に一歩入った途端にキツネを発見した。
『ステータス』
《種族》 アルムフォックス
《HP》 140/140
《MP》 130/130
《物攻》 170
《物防》 160
《魔攻》 150
《魔防》 150
《スキル》飛爪撃
だいたいこの前の狼と同じぐらいのステータスかな。
狼戦の時と比べられるから、新しい神器の強さ確認するにはちょうどいいか。
その新しい神器『電狼剣』をアイテムボックスから取り出して握り、剣の届く距離までキツネに接近する。
すると、普通のキツネとは明らかに違う、発達した鋭く長い爪をたてて俺にとびかかってきた。
身をよじってそれをかわし、いつものように薙ぐ。
が、すぐにそれが失敗だったことに気づいた。
短剣なら、この近い距離で正面から斬りつけても、刃が深く入らないため、相手の体の表面のほうだけしか斬れず、振りぬける。
だが今使ってるのは短剣じゃないのだ。
完全に失念してた。
こんな近くで斬ったら、途中でひっかかる。
しかし、もう今さら剣を止めることもできないのでそのまま振り切る。
「ギエエエエ」
キツネが断末魔の叫び声を発する。
そしてその音が遠ざかっていく。
??
ひっかかってない?
それどころか斬った手ごたえすらほとんどない。
一瞬外したのかとさえ思った。
だがそれならあんな声は聞こえないはず。
状況の理解がよくできないまま、後ろを振り返る。
「……!」
すると地面には体が真っ二つになって動かなくなったキツネがいた。
「ハハ、凄いな…」
あそこまで豪快に斬っておいて、ほぼ感触なしか。
想像以上の切れ味だ。
驚きすぎて軽く放心状態になる。
しかしすぐに気を取り直す。
いくら攻撃力が大幅に上がったとはいえ、防御は前と大して変わってないため、不意打ちを食らったら一気に不利になる。
常に警戒しておかないと。
金になる魔石はしっかり回収して、魔物の捜索を再開した。
◇ ◇ ◇
森の中と外との境界を沿うように、二時間ほど歩き続けると、大量のキツネとヤギに遭遇した。
短い間隔で出てくるのと、戦闘時間も短いのがあって、だいたいもう両方30体ずつくらいは倒してる。
『ステータス』
《種族》 アルムゴート
《HP》 160/160
《MP》 150/150
《物攻》 190
《物防》 180
《魔攻》 170
《魔防》 170
《スキル》なし
ヤギの方のステータスはこんな感じ。
スキルはないが、キツネよりステータスは高い。
まあ高いとはいっても、そこまで差があるわけでもないからヤギも電狼剣で一発だった。
それと、そいつらを倒してるうちに電狼剣について分かったことがある。
指輪と違って、電狼剣は持ってるだけで攻撃力が上がるわけじゃないみたいだ。
蹴ったりしても大したダメージにはならず、剣で直接攻撃するか、電狼剣での飛斬撃のときだけ大ダメージを与えられた。
どっちにしろ攻撃する時はほとんど剣で斬ってるから、そんなに関係ないんだけどね。
よし、残りの約20体ずつもさっさと倒しちゃおうか。
周辺の茂みに潜んでないか気を配りながら進んでいく。
すると、五メートルほど先に、キツネでもヤギでもない、二足歩行の大きなシルエットがゆっくりと動いてるのが見えた。
…嫌な予感がする。
遠いのと、木が邪魔でよく見えないので、そのシルエットに鑑定を使う。
『ステータス』
《種族》 アルムグリズリー
《階級》 E
《HP》 420/420
《MP》 400/400
《物攻》 460
《物防》 430
《魔攻》 390
《魔防》 420
《スキル》なし
マジかよ…。
俺の予感は的中してたみたいだ。
てか、なんでこんなところにいるのよ。
俺まだ全然森の奥のほうに入ってきてないんだけど。
相当深くまで行かなきゃ遭わないって言ってたじゃんか。
…文句言っててもしょうがないな。
あの門番の人が嘘ついてたとも思えないし、多分こいつが例外なんだろう。
逃げよう。
このステータスなら逃げるのも仕方ないでしょ。
来た道を引き返そうと体を反転させる。
だが、思い直したようにその場で静止し、グリズリーの方にまた向き直した。
…やっぱり戦ってみるか。
今回は大ネズミの時ほど絶望的な感じはないんだよな。
頑張ればなんとかなりそうな雰囲気。
でも勝てない可能性のが高いだろうから、やばくなったら全力で逃げるけどね。
てことで、木の陰を生かして、気づかれないようにグリズリーの背後に回り込む。
さすがに真正面から戦って勝てるとは思ってない。
そして、グリズリーと俺との直線上に木がない場所に立ち、斬撃を二発飛ばし、すぐに木に隠れる。
ザッザッザッ。
触れた木の枝を切り落としながら、斬撃がグリズリーに向かっていく。
その音に気づいたらしく、グリズリーが振り返るが、もう遅い。
二発ともしっかり直撃した。
「グオオオオ」
グリズリーが大きな声を上げる。
ちゃんと効いてるようだ。
飛ばした斬撃だと直接斬った時より3割ほどダメージが落ちるが、攻撃力だけならグリズリーを圧倒してるため、それでも十分なダメージは通る。
しかもそれが二発クリーンヒットだ。
もうすでにHPは半分を切ってる。
一気に決めてやる。
グリズリーは怒りを露わにしながら斬撃の出元を探してウロウロしてる。
すぐに木の陰に隠れたおかげで姿を見られてはいない。
息を潜めて機会をうかがう。
パキ、パキ…。
斬撃によって落ちた枝を踏む音が徐々に近づいてくる。
そしてその音が真後ろにきた瞬間。
一気に木の陰から飛び出し、電気を纏わせた電狼剣をグリズリー目掛けて振り下ろす。
スパッ。
今度は間合いを間違えてない。
剣の切っ先がグリズリーの腹を斜めに割き、赤い血が勢いよく吹き出した。
それと同時に体に電気が流れる。
…バタン。
その大きな体は俺に覆い被さるようにゆっくりと前に倒れてきた。
下敷きにならないよう後ろに下がる。
するとそこから全く動かなくなった。
HPを見ると数値は0だ。
どうやらもう倒せたようだ。