1.鑑定
俺の名前はテオ。
今日の成人式を終えたら、とうとう大人の仲間入りだ。
この世界では、16歳になった年に学校の卒業式と同時に成人式をする。
「テオくーん、急がないと式遅れちゃうよー」
今俺を呼んだのが親友のクルト。
毎朝、俺の家まで迎えに来てくれてる。
準備も終わったので家の外で待ってるクルトのところに行く。
「ごめんごめん、お待たせしました」
「はは、大丈夫だよ~」
「おーおー、今日も能無し二人は仲良く一緒に登校ですか!」
…ゲオルクか。
朝っぱらからコイツに会うとか最悪だ。
ゲオルクは、いわゆる学校カーストの最上位にいるやつだ。
そんで、いつも両脇にお供を連れてる。
「そりゃそうじゃん。他にこんな落ちこぼれ達と絡むやつなんていないもん」
「それもそうだな」
毎回毎回、腹立つなあ。
俺たちがさっきから能無しだの落ちこぼれだの言われてるのは、俺たちの“職業”が関係してる。
この世界の人たちは全員生まれた時からその人自身の職業を持ってる。
それによってほぼ自分の人生が決まってるみたいなもん。
その職業にもランクがあって、まず上位0.1%の最上位戦闘職、次に約15%の上位戦闘職、80%で一番多いのが普通戦闘職だ。
そして残りの5%が、戦闘職に比べて圧倒的にステータスの低い非戦闘職。
見分け方は目の色。
上から、赤、緑、青、黒。
ゲオルクはこの最上位戦闘職で、隣の二人も上位戦闘職。
対して俺たち二人の目は真っ黒だ。
もちろん非戦闘職にも重要な職業もあるんだけど、戦闘職には歯向かえない。
生産職は戦闘職に魔物から守ってもらわないと生きてけないけど、戦闘職は生産職いなくても生活はできるからね。
特に子供のうちだとその差がひどい。
どうしたってカーストは生まれる。
まぁそれも今日で最後か。
後ろからの冷やかしをスルーしながら学校に到着した。
教室にはもう他のクラスメイト6人は揃ってた。
俺のいる島は小さくて人口が少ないんで、同級生は11人だけ。
これでも他の代より多い方だ。
「遅かったわね。もうちょっとで式始まるわよ」
「うん、ちょっと寝坊しかけた。クルトいなかったら危なかったよ」
「いつもじゃない。今日くらいはしっかりしなさいよね」
この子はローレ。
ゲオルクのせいで皆俺たちと話さない中、ローレだけは普通に会話してくれてる。
ローレも最上位職の赤目だから、クラスで唯一ゲオルクに反抗できるのだ。
ていうか0.1%の最上位職が11人中2人もいるってどんなクラスだよ。
ちなみに他の5人は普通戦闘職。
「はーい、もう移動するから外に並んでねー」
先生が来て呼びかける。
全員が並び終わったところで式会場に移動。
会場に着くと100人くらいの拍手で迎えられた。
だいたい島のみんなは知り合いで、こういうイベントには、色んな人が島中から来てくれる。
用意された席に座り壇上の校長を見る。
「えー、早春の日を浴び、木々の……」
◇ ◇ ◇ ◇
偉い人たちの長ったらしい話も終わって、とうとうメインのステータス鑑定の時間になった。
一応、目の色で職業のランクは分かってるけど、詳しいことはここで初めて知ることになる。
子供のうちにスキルとか使えると色々問題あるから、成人までは詳しいステータスを知っちゃいけないって決まりになってるからね。
「1番、アルバン=デイックハウト!」
「はいっ」
あー、始まっちゃった。
ゲオルクとかはめちゃくちゃソワソワしてるけど、正直俺にとっては嫌な事でしかない。
何が出てもバカにされるのは確定だからね。
◇ ◇ ◇ ◇
順に鑑定されてって、ついに俺の番。
「11番、テオ=シェーファー」
「はい…」
呼ばれて壇上に上がる。
もうみんな興味ないのがわかる。
そりゃメインは終わっちゃって、ラストが俺だもんね。
メインだった最上位職二人は、ゲオルクが聖騎士、ローレが巫女だった。
パラディンは物理攻撃と物理防御が高い系統の職業の最高ランク。
戦士とかの完全上位互換。
巫女も回復系の職業の最高ランクで、死んでから数分以内なら生き返らせられるとかいうチートスキル持ち。
しかも、二人ともステータスは500越え。
まじでこのバケモンどもの後やだわ。
「はい、じゃあ石の上にかざして」
言われた通り鑑定石って呼ばれる、水晶みたいな玉の上に手を出す。
するとその上に映像が映し出された。
『ステータス』
《名前》 テオ=シェーファー
《レベル》1
《職業》 ダンジョン探索者
《HP》 10/10
《MP》 10/10
《物攻》 10
《物防》 10
《魔攻》 10
《魔防》 10
《スキル》ダンジョンキー
疲労無効
鑑定
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