表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/56

008

「おはようワオール」

『ワオォ?』


 午前中は講義が無いので昼の十二時にアラームをセットしてログイン。

 アラームセットはログインロビーのに伝えるだけという、親切設定になっていた。


 朝の八時過ぎだったはずが、ゲーム内では太陽が西に傾き始める頃。

 まだ夕方ではないが、これはさっさとやれることをやっておかなきゃな。


「こんにちはお客ニャん」

「こんにちはにゃんご。相変わらずか?」

「相変わらず、閑古鳥が鳴いてるニャ」

「ははは。まぁ俺が頑張るからさ。っと、買取を頼む。チュチュの尻尾と――マンティスの鎌とスライムゼリーも収集品か。とにかく買ってくれ。あ、忘れるところだった。チュチュの肉もな」


 収集品とチュチュの肉を売りさばいて792Gに。

 買取価格は尻尾が8G、鎌が10G、ゼリーは5Gだ。これに肉代も合わせてこの金額だ。

 毛皮だなんだのを売ればもう少しお金になるだろうが、素材は残しておきたい。ネズミ肉を除いて。


「あと薪木も頼む。肉を焼きながら作業するからさ、火加減見ててくれないかにゃんご」

「え…………まぁ、いいニャけど」


 空腹用の肉を焼きつつ、俺は壁を立てるための丸太を切る作業をする。


「にゃんご。簡易大工道具一式にノコギリとか入ってるのか?」

「入ってるニャよ。丸太で壁を作るなら、切った丸太を地面に立ててからハンマーで上から叩けばいいニャ」

「じゃあ簡易大工道具一式とハンマーを買う」


 それぞれ500Gずつ。残金は605G。財布がとても寒い。


 とにかくまずは丸太を切りそろえよう。

 これは『大工』スキルだな。


 スキルをタップすると、更に項目が出てくる。

 木材加工――その他自動アシスト。

 この二つか。

 自動アシストって、何をアシストしてくれるのだろうか。

 とりあえず丸太を切るなら、木材加工だろうか?

 タップすると、加工したい素材を選べと出る。そこに表示されたのはケヤキの丸太のみ。

 これをタップすると――。


「広い所に行けってか」

「丸太を切るニャか? そりゃ丸太を置ける場所じゃないと、作業は出来ないニャよ」

「なるほど。変なところでリアル志向なんだな」


 今は昼間だ。モンスターも襲って来ない。

 お金が欲しいのでワオールには狩りをしてもらい、俺一人で作業をしよう。

 日が暮れる頃には周辺で焚火をして明るさを確保し、アクティブモンスターが寄ってこないようにすればいい。


 20メートルの木を4メートル×五本にし、全部で三百二十本の丸太が完成。

 更に地面に打ち付けるため、斧で先端を細くする作業――もしかして『その他自動アシスト』ってここで使えないか?


 試しにスキルを発動させたが何も起こらない。

 違ったか?


 斧を手に持ち丸太を削ろうとすると、【枝切】【ささ切り】というメッセージが浮かぶ。

 どちらかを選べってことかな。ささ切りっていうと、あのごぼうみたいなヤツだよな。そうそう、それそれ。

 選択すると、斧を振り下ろす位置にマーカーが。

 そこに斧を当てれば、カッターでえんぴつを削るかのようにサクっと。


 お、しかもこの削りカス。そのままアイテムとして残ってるじゃないか!

 これ、薪木の代わりにならないか?


 全てを切り終える頃には夕方になった。


「よおおぉぉぉぉっし! 切り終えたぞおおおぉぉぉぉっ!!」

『ワオオオォォォーンッ』

「いちいち五月蠅いニャーもう」

「よし、ワオール。今度は手伝ってくれ」

『ワオ』


 丸太をワオールに支えてもらい、俺がハンマーで……あぁ、届かない。

 そうだった。丸太は四メートルあるんだった。

 粘土ブロックを作って、それで階段を作るか?

 いや、それだと勿体ない。


「梯子だったらあるニャよ」

「脚立じゃないんだろ?」

「違うニャ。でも作ることは可能ニャよ。二つの梯子を縄でくくればいいニャから」


 まぁバランスが良ければそれで脚立の代わりにはなる。

 そして梯子はひとつが300G。

 ワオールが仕留めた獲物の収集品を売って200Gの収入。残金は205Gとなった。


「お客ニャんにはいっぱい買って貰ったからニャー。縄はオマケするニャよ」


 と。

 でも縄って、たった10Gじゃないですかー。


 作業を進めるにあたってまずは焚火を設置。



「昨日の分の薪木が八セット残っているし、とりあえず――」


 ブロック塀から4メートルぐらいの所に一か所、焚火を設置する。

 明るい所にまず一本丸太を立て、ワオールに支えてもらう。

 そうしてハンマーを取り出し叩くが、上手く地面に打ち込めないな。

 よし、自動アシストだ。


 すると予想的中。こちらも自動アシストスキルを使うことで、さくさくというか、ガツーンガツーンと丸太を打ち込めるようになった。

 立てた丸太の横に、次の丸太をくっつけて立て、そして打つ。

 これがゲーム所以なんだろうな。丸太は全て見た目がそっくりそのまま。サイズだって一寸の狂いもない。

 直径は40センチぐらいかな。

 十本ほど立てたらもう危険区域だ。


 少しずらしたところに焚火を設置して火を点ける。

 そこに向かって丸太の壁を伸ばす。

 そしてまた焚火を設置して――壁を伸ばして――手持ちの薪木が無くなり、振り向けばブロック塀付近が暗闇に包まれていた。


「ワオール! 俺がにゃんごから薪木を買って火を点けるまで、頼むな!」

『ワオーンッ』

「早く点けるニャ。早くぅーっ!」






「ふぅ。なんとか生き延びた」

「生き延びたニャね〜」

『ワッフワオォー』


 ワオールは元気だ。

 余裕そうだ。

 そりゃあHPが1000以上だもんな〜。俺なんて100だし。


 ブロック塀で囲った中の焚火を気にしながら作業をし、立てた丸太は百本程。長さにして僅か40メートルだ。

 時に暗闇を走ってブロック塀の中へ逃げ込むこともあり、そうやって夜が明けると俺のHPは風前の灯にまで落ちていた。


「にゃんごぉ、HPってどうやって回復するんだよぉ?」

「お勧めはポーションを飲むことニャよ! 初級ライフポーション一本25Gニャ」

「他にはぁ?」

「……満腹度マックス状態で座っていたら回復するニャ……」


 最初と後とで声のテンションが全然違う。

 物を売るときには嬉々としているのになぁ。

 だが今の俺は貧乏だ。

『採取』に『調薬』と持っているんだ。自分でポーションを作れるだろう。


 でも薬草ってどこに生えているんだろうか?

 スマホを開いてスキル欄から『採取』をタップすると、する目の前の草に緑色のマーカーが現れる。

 え……薬草……なのか?


 マーカーの下にある草を摘んでみると、その瞬間に手から消えた。

 アイテムボックスには「謎の草」とある。


「にゃんごぉー。謎の草ってのをゲットしたんだがー」

「鑑定するニャよ。もしくはそのまま『加工』なり『調合』スキルがあれば使ってみるニャ」


 鑑定があるので使う。


***************************************

 元気草:薬草

 効果:そのまま食すとHPが5回復。

    ライフポーションの素材。

***************************************


 ふぅん。そのまま食べられるのか。

 食べてみると苦かった。

 ポーションにするとどのくらい回復する?

 にゃんごの販売リストから鑑定すると、回復量が50……おぉう、食べたの勿体ない。


 日中になるまでの時間は採取に専念。ワオールは狩り。

 日中からはまたケヤキの伐採に向かった。


 そうそう。ケヤキの苗木ってのをドロップしていたので、近くに植えておいた。

『植林』スキルがあると、植えるのに最適な場所がわかるだとか、成長速度を上げられるとかあるようだが……ここは無いので普通に。

 何年かかるかなー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ