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「よし……カウンターも完成!」
「おぉ。これでここも立派な町やな」
バムートと協力してギルドの一階から三階分のカウンターを設置。
それが今、やっと終わった!
と言っても、カウンターだもんな。しかもなんの飾り気も無い、シンプルなものだ。
板材は既に作っていたので、それを釘打ちしていくだけだったっていうね。
「ふぅ。さてっと……じゃあ行きますか」
「本当に来てるんやろか?」
「来てる来てる」
『ワオワオ』
俺とワオールでバムートの手を引っ張って外へと出る。向かうのは門の所だ。
きっとね、今頃門の外にギルド職員とかいうNPCが来てるハズなんだよ。今までの経験からするとね。
で、門の所に行ってみると――。
「初めまして。私、この度冒険者ギルド本部から派遣されました、ギルドマスターのアリーネと申します」
たまたま門の近くに居たプレイヤーが、NPC御一行様の応対をしていた。
やっぱりね、完成と同時にNPC来てたよ。
門の所に居たのはアリーネと名乗った女の人を筆頭に、十数人も居る。
まぁ三階建ての建物だし、プレイヤーの応対しなきゃならないんだから多くて当たり前だよね。
「この町に新しく冒険者ギルド施設が完成したと聞き、派遣されてきたのですが」
「あ、ああ。それならクーさんが……あ、クーさん!」
NPCの応対をしていた人が俺を見つけて手招きをしている。
バムートとワオールの三人でそちらに向かうと、ギルドマスターさんに微笑まれた。
うぅん……美人だ。
他のNPCも美男美女ばかり。あ……美少女も居るな。あれはロリ好きプレイヤー向けなんだろうか?
「初めまして、私ギルドマスターのアリーネと申します。この町に新しく冒険者ギルド施設が完成したと聞き、派遣されてきたのですが」
「あ、はい。こっちにあります」
「今完成したとこなんや」
俺たちの案内で、NPC御一行がゾロゾロと着いてくる。ついでにプレイヤーも着いてくる。
三階建てのギルドに到着すると、NPCたちがゾロゾロと入って行った。
「ステキな建物ですね」
「いやぁ〜それほどでもぉ」
「クー、社交辞令やから」
「あ……そうなんだ」
「では私どもは、さっそく仕事を開始いたしますので」
アリーネさんもそう言って中へ入って行った。
俺たちも後を追うように中に入ると――。
「冒険者ギルドへようこそ。一階はクエストのご紹介、パーティーの募集用掲示板などがございます――」
入り口には各階の紹介を行うNPCが居た。
もう仕事してるよ!?
この紹介NPCがエレベーターガールでもあるようだ。常に彼女の横には、可視化された階層ボタンが浮かんでいた。
バムートが押したようで、消えた……。
「クーさん、ギルド建設お疲れさまー」
「あ、ども」
「これで他所の町の商品も買えるようになるな」
「委託がやっぱ一番見たいところだもんね。こっちもレアっぽいの出たら、売りに出せるし」
そんな言葉を掛けてくる人がいる。
この町で売るって選択肢はないのだろうか?
まぁでも選択肢増えるって良いことだよね。俺も委託販売欲しさに建てたんだしさ!
ヒャハー、三階に行くぜーっ。
で、バムートも三階に居ました。
「クー! ギルド建ててよかったな!」
「いいものあった?」
バムートは首を横に振る。何故?
「売りにだしたら、即行で売れたんや!」
「え、マジ!? お、俺も!!」
自作カウンターに向かって、そこに居るNPC――の横にある宙に浮いたボタンをポチリ。
委託依頼と販売物を見る、説明を見るというボタンがあるが、もちろん――見る!
委託依頼は手数料が取られる……えぇ、取るのか!?
あ、販売価格が1万Gを超える金額から、手数料1%発生するのか。ポーションだとそこまでいかないだろう。
でもポーションなどの消耗品は、一枠999個出品可能で、完売した際の合計金額で計算されるようだ。
数百本単位で出すと、手数料発生しそうだな。ならわざと合計が1万G超えないよう、出品すればいいか。
委託に登録して48時間経過しても売れなかったら、強制的に商品を取り下げられるようだな。
売れなかったら手数料は取られないので、何度でも出品すればいい。
購入者の方は手数料とかは一切ないのか。
買いたい商品の詳細なんかも見れるし、買いたければポチる。すると所持金から自動的にお金が引かれ、商品はメッセージボックスに届くのか。
「ふんふん。よし、俺もさっそく出品してみよう!」
『ワオ?』
「ん? どうしたワオール」
『ワオォ』
うん。何を言っているのかわかりません。
まぁいいや。出品出品っと――あ。
「出品できる物が……無かった」
『ワオー』
そうか。ワオールはこのことを言っていたのか。
「ワオール。何でもいいから作るぞ!」
『オォーン!』
隠しダンジョン――の更に遠くまで行って、小高い丘向こうの森近くまでやって来た。
走りっぱなしで来たのでポーションを飲んでっと。
「さぁて、採取するぞー」
『ワオーッ』
「ワオールは俺を守ってくれよな」
『ワンッ』
この辺りの森には採取できるポイントも多く、しかも上質な元気草が良く採れる。
ふっふっふ。これでポーション御殿を建てるんだ。
建てる、か。
あぁ……クエストの町がほとんど出来上がってしまった。
どうしよう。
また別の町を造ってみようか?
そうだよな。狩場の近くにセーフティーエリアを造って、移動を楽にって目標もあったじゃないか。
まさにこの辺りにセーフティーエリア欲しいんだよな。
みんなが欲しいと思うのは、隠しダンジョンの所だろうな。
転送装置目的なら、雑貨屋とそれがあれば十分だろう。だったら10メートル×10メートルぐらいの壁で囲ったぐらいで十分か。
雑貨屋は5×5メートルぐらいで建てられるし、転送屋も小屋程度も要らないってミャーニーは言ってたし。
プレイヤーが休憩できるスペースも考えて……。
「15×15メートルぐらいで十分じゃないかな?」
『ワオ?』
「うん。次のセーフティーゾーンの建設を考えてるんだよ」
『ワオッワオッ』
ここに? と言う具合にワオールが地面を指差す。
違うんだけど、この辺りにも欲しいよな。
でも隠しダンジョンからちょっと近い気もするから、それだともう少し遠くに作りたいな。全力疾走で30分ぐらいは自力でいい。
「あ、そういや騎乗モンスターの実装がどうこうのって。と、まだアップデートされてないんだよな」
『ウォン』
「ワオールも一緒に乗れるんだろうか?」
『ウオォーン?』
首を傾げているワオール。まぁわからないよな。
よし。とりあえず隠しダンジョン近くにセーフティーゾーンを作ろう!




