表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/56

054

 晩御飯の後は筋力増強の為に壁造りを手伝いたいという男二人を加え、拡張工事に取り掛かった。

 ユキト君の時と同じように、まずはロープで位置決めをする。

 あとはやり方を伝え、俺とワオールが支える係、二人がハンマー係と運ぶ係で作業を開始。筋力増強の効率を考えてこうやった。

 まぁ俺は何か出来ればそれでいいし、筋力も十分あるもんな。


 そうこうしていると、他にも手伝いたいって人がやって来て――。

 陽が沈む頃にはなんと、拡張壁がL字型になるまで作業が出来た!


「うおおぉぉぉぉぉっ、はえぇーっ!」

『ワオッワオッワオオォォォ』


 俺とワオールは感動して、万歳をしながら飛び跳ねた。

 なんか感動の踊りみたいだな!


 でも他には誰も一緒に踊ってはくれないようだ。

 しょんぼり。


「どうせなら、完全に囲ってしまいませんか? その方が安心して動き回れるし」

「そうだな。俺は賛成」

「筋力の上がりいいなぁ。今の一時間半の間に、1上がってるぞ」


 と、そんな会話が聞こえてくる。

 あ、やっちゃう? うん、それだと丸太足りないんだよね。あ、伐採してくれるの? じゃあ俺も――他にもスキル持ちが二人いたよ。伐採に四人もいらないね。しょんぼり。

 だが伐採する者が居るってことは、禿が出来るってこと。

 そこに俺は手持ちの苗木を植林することにした。


 伐採された丸太は、大工スキル持ちメンバーがどんどん加工していく。

 ただ先端を尖らせるための魔導サンダーを持っているのは俺ひとりと、ここでも俺は大活躍出来る。


 ちょこっと植林して戻ってくると、大量の加工済み丸太が用意されていた。

 それをチュイーンっと削って、再び大工メンバーへと渡す。

 うおぉぉぉ、ディスクの消耗が激しいぜヒャッハー。

 あと俺のMPの消費もやばいぜぇーっ!


「あれ? クー、何座ってんだ?」

「あぁ、ユキト君。こんばんは」

「あぁ、こんばんは」

「いやね、魔導サンダー使ってたらね、MPが無くなったんだ」

「そうか」


 それだけ言うと、ユキト君は出来上がった丸太を運ぶ手伝いに行ってしまった。

 座っていたらMPが回復するんだが、なかなか全快までは遠い。

 なんせ2秒座って1しか回復しないんだから!


 ようやく全快しても、魔導サンダーを使えばすぐだ。


「あ、モンスターからちゅーちゅーするか」


 ダッシュで外に出ていき、襲ってくる夜型モンスターにエナジードレイン!

 ちゅーちゅーしてMP20回復! やったね!

 けどこれCT60秒だし!!


 結果、CT中に座っていると全快するということに。

 これだと移動時間の分、大人しく工房で座ってた方がいいなってことになった。






 最初の作業開始から三時間ちょっと――ゲーム内で朝日が昇り始めた頃。


「うおおおぉぉぉぉっ!!」

『ワオオオオオォォォッ!』

「完成!」

「やったぁ〜っ」


 地平線を昇る朝日に向かって、俺たちは吠えた。

 主に俺とワオールだけど。それでも参加したみんなが声を上げる。


 そう。

 クエストを囲む拡張壁が、完成したのだ!

 

「あとはあっちの壁を壊さなきゃな」

「というか、あっちの丸太も利用すればよかったわね。そうすれば無駄に木材作らなくてよかったんだし」

「いやいや、それだと俺たちのステータス上げにならないじゃん」


 だけど勿体ない――という女性陣に、元の壁は『丸太』のままなので、加工して再利用もできるだろうと俺は話す。

 あれを使って建材を作ろう。

 

 朝日が昇る中、今までお世話になった壁を――


「ぬおおぉぉっ!」


 引き抜く!


 ずぼっと丸太が抜けた瞬間だった。


『ワオォ』

「ミャー。どうやらお客さんみたいですミャ」

「おわっ! ミャーニー、いつの間にっ」


 抜いた丸太の向こう側に、ミャーニーが立っていた。

 ワオールが反応したのはそのミャーニーにではなく、ずっと後方にある新しく作った門のほうからだった。


 ワオールのこの反応に、ミャーニーが出てきたってことは……新たなNPC!?


 ミャーニーが先行して歩き、その後ろをぞろぞろとみんなが着いて行く。

 朝や日中は扉は自動的に開き、夜になるとまた自動で閉じる仕組みになっている。

 そういう風に作ったのではなく、そういうシステムのようだ。


 今は朝。門の扉は開いている。

 そしてそこには、ヒューマンだのドワーフだの数人のNPCっぽいのが立っていた。


「やぁやぁおはよう。随分と殺風景な町ですなー」

「はいミャ。今しがた完成したばかりで、町認定されたばかりですミャよ」


 え? 町認定されたの? いつ? どこで?

 そう尋ねると、条件を満たせばミャーニーが申請を出して、直ぐに許可が下りるのだと話す。

 いつのまに……とか考えるだけ野暮か。


 このNPCたちは、町の全体の面積に対し、建造物が少ないとやってくるボランティアなのだって。


「ボランティア……」

「えぇ。我々が町の発展に協力いたしましょう」

「こんだけ殺風景な町も珍しいもんだ。腕が鳴るわい」


 どうやらプレイヤーだけでは間に合いそうにないような時に、手助けしてくれるヘルプ要員ってことだな。

 しかも勝手にあれこれ建て始めるんじゃなく、ちゃんと指示された区画にしか手を出さないと言う。

 いいねぇ。

 じゃあ――。


「NPC用の家とか任せてしまっていいと思うんだけど」

「そうですね。メイン通り以外の場所はだいたいそうなるんでしょ?」

「うんうん。商業施設だけは僕らの都合の良い場所に欲しいし、それ以外の区画は任せていいんじゃないかな」

「じゃあ――」


 新しくなった町の見取り図をミャーニーから受け取り、NPC用住居になる部分をクリックすれば彼らが自由に建設出来る区画に変わった。

 その見取り図はミャーニーがコピーしてくれて、大工軍団へと渡す。

 すると彼らはさっそく、作業を開始するのだと。


「伐採した丸太を持ってきてくだされば、我々が買取ますよ」

「加工済みの木材でも大歓迎でさぁ」


 え、この人たち……ボランティアで家建ててくれるってんのに、お金までくれるの?

 と思ったら、建てた家の家賃収入があるからとかなんとか。

 え? 金取ってんの?


 そんな疑問にユキト君が、


「あんたがツッコミ入れるからそういうことになっただけだろ」


 ――と。

 

 ゲームってツッコミ所満載だけど、つっこんじゃあダメらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ