005
「そりゃあ獣魔は強いニャよ。だけど武器や防具は極一部の物しか装備できないニャ。代わりに基礎ステータスが高いんニャよ」
「へぇ」
「お客ニャんも、せめて銅の剣でも装備すれば攻撃力が+10ニャれて強く――」
「さて、シャドウラビットの肉が焼けたな。ワオール、食べるか?」
『ワオォォ』
物凄い勢いで尻尾を振っているな。
ワオールの満腹度も10マックスで、今はなんと2だった。
しっかり肉を手で持って食べるワオール。お行儀のいい奴だ。
兎の肉一つで満腹度はどのくらい回復するのか、確認する為にワオールのステータスを見る。
――色付ゲージが二つ増えたな。じゃあ回復度2か。
あと三つだな。
兎肉と言っても、焼いているうちに何故か骨付き肉に変わるのは、見た目を考慮されてのことだろうか。
それでもネズミの肉は食べる気がしない。
「お客ニャん。どうしても武器防具を買ってくれない気ニャね」
「いや、そういう訳じゃないけどさ。ここってまだ序盤のエリアだろ?」
「当たり前ニャ。とぉーっても弱いモンスターしかいないニャよ」
「だったらまずは、拠点を作るためのお金を取っておいた方がいいだろ? スコップも消耗品のようだしさ」
追加でスコップを買い、そのスコップを鑑定スキルを使って調べてわかった。
スコップを含め、ほとんどの道具には耐久度が設定されている。
使えば使う程消耗していき、ゼロになると壊れる仕組みだ。
まぁクラフト系ゲームのあるあるだから許容範囲だ。
食べたくないチュチュ肉はにゃんごに買い取って貰う。
なんとひとつ15Gで買ってくれた! 十五個あったので225Gになる。
兎のほうは十四個あったが、こっちは取っておこう。
俺もひとつ食べて……。
「うぅん。ただの肉だ。なんの味付けもないしな」
「ソルトとブラックペッパー、あと香草ならあるよ?」
「あるのかよ! それ先に言ってくれよにゃんごっ」
ソルト=塩。それにブラックペッパーを購入。
それぞれ150Gでチュチュ肉の売り上げをオーバー。
更にショックな出来事があった。
「俺の空腹度、さっきの兎肉でゲージ四つ増えたんだが……」
「獣魔と人間とで、お腹の膨れ具合は違うニャよ。焼きあがった肉を鑑定すればいいニャ」
じゃあ――ワオールに渡す前に鑑定してみる。
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焼いたシャドウラビットの肉:料理
効果:満腹度を40%回復
テイムモンスターや獣魔の場合は
大きさによって効果が異なる。
小:同等 中・大:半減
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「ワオールって、中サイズ?」
『ワフ』
「そっか。よし、食べていいぞ」
『ワッフー』
効果には「40%」と書かれていた。
空腹ゲージは10だと思っていたが、ゲージひとつで10%なのか。
よーく見ていると、ワオ−ルが一口食べることでゲージがすこーしずつ、左から色が付き始めている。
ふぅん。1%単位もあるようだ。
俺の満腹ゲージはあと三つ残っているが、ウサギ肉だとオーバーしてしまう。
「満腹度を15%回復する林檎を持ってるニャよ?」
「売り物?」
そう尋ねると、にゃんごは目をキラキラ輝かせた。
そして――。
「当たり前ニャ。買うニャか!?」
と尋ね返してくる。
俺は答えた。
「うん、買う」
手持ちの兎肉を全て焼いた。
十個中、三個は真っ黒になって、一個は生焼けで……。
ただワオールは生焼けでも気にしないようだ。アイテム鑑定にも「動物系のテイミングモンスターと獣魔はお腹を壊さない」とちゃんと書いてあったし、気にしなくてもいいようだ。
結果、七個は今後の食料としてアイテムボックスへ。
真っ黒な肉は……。
「ゴミニャね。1Gで引き取ってやってもいいニャけど」
「凄く嫌そうだな」
「だってそんなの、誰も買ってくれニャいニャろ?」
「そもそもお客が俺しか居ないしね」
「そうニャね」
という訳で、焦げた肉三つは3Gになった。
そうこうしていると東の空が白み始めてくる。
「よし、ワオール。木を切りに行くぞ!」
『ワオンッ』
「行ってらっニャい。地図を確認しながら、帰り道を忘れないようにするニャよ」
「地図?」
にゃんごは頭を抱え、それからスマホを出すよう促す。
ホーム画面にあるメニューアイコンの中に、地図っぽいのが描かれた物があった。
タップしてみる。
何故かスマホ画面じゃなく、ホログラムディスプレイの方に地図が映し出された。
けど、ほとんどがグレーで塗り潰されていてよくわからない。
「地図の真ん中にある青い三角マークがお客ニャんの位置ニャ。地図の神様による自動マッピングシステムがあるニャけど、実際に歩いて回らないと地図は表示されないニャよ」
「地図の神様って?」
「大人の都合ってものがいろいろあるニャ」
今、汚い大人の都合というものを見た気がする。
まぁいいや。
夜の間に少しだけブロック塀の外に出たけど――それを差し引きして考えると、表示されている面積は多いな。
自分を中心に、半径数メートル分は表示されるのかもしれない。
地図には他ににゃんごの位置も表示されていた。
にゃんごはやっぱりNPCだった。俺のすぐ近くにある白い丸に触れると、「NPCにゃんご」と出た。
更にもうひとつ。緑色の三角マークがあって、それに触れると「獣魔ワイルドウルフキング」と出る。
「これならワオールと逸れても合流できるな」
「でも地図を持っているのはお客ニャんだけニャよ」
「そうか。ワオールが迷子になったら、俺が探してやればいい。問題ない。それじゃあ行くか」
『ワオ』
斧を背負い、遠くに見える木を目指した。
何か書こうと思ったのに忘れた・・・
年取るとこうなるんだよ・・・