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045

 無事に工房NPCもやってきた。

 だけど俺はどうしてもやりたい。

 赤と青の顔料を混ぜて、紫を作りたい!


 だけどNPCの販売リストには、良さ気な容器は売っていなかった。

 あるのは空き瓶やザル、タライ、そして鍋。この辺りは調薬で使う道具だろう。

 鍋に顔料入れるか?


「クーさん、どうしたんデスか?」

「あー、うん。顔料を混ぜる容器がないかなーって」

「紫の顔料ならありますけど」

「うん。でも自分で混ぜたいんだ。そしたら微妙な色の違いも出せるじゃん?」

「まぁー……出来るなら。んー……ちょっと待ってくださいね。今作った鉄があるので、何か作ってみるデス」


 そう言って彼女は窯の中に鉄の塊を投げ込む。

 見ていると、直ぐに柔らかくなった鉄を取り出し、ハンマーで叩き始めた。

 鉄の塊はものの数十秒で、深さ10センチほどの長方形の器になった。


「おぉ。これならペンキまぜまぜ出来るな」

「そんなものでいい?」

「オケオケ。じゃあ早速――」


 アイテムボックスから赤と青の顔料を取り出し、調薬で使うおたまでそれぞれ少しずつ掬って鉄の器に入れる。

 屋根に使うなら、明るい感じよりもシックなほうがいいな。

 なら、青を足すか。


 こうして出来上がった青紫の顔料を見て、メネネトさんは感嘆な声を漏らす。


「本当に出来てる……。これなら売ってない、微妙な色も作れるってことデスね」

「うん。でもペンキだと、木工や大工でしか使えないんじゃないかな」

「いえ、実はこれ、顔料という名前ですけど染料としても使えるんデスよ」


 その上、鉄の色を変えるのにも使えるのだと彼女は言う。

 マジか……顔料優秀過ぎ。






 完成した青紫を屋根に塗って、その後はすぐにログアウト。

 こちら、未完成のレポートです。

 ゲームのようにパパパっと簡略化して作成できないものだろうか。


 そんなことを思いながら、二時間近くかけて書き終えた。

 予想より時間が掛かったなぁ。


 翌朝、一限目、二時限目、そして三時限目が休みで四時限目を終え帰宅。

 夕飯前にちょっとだけ、アラームをセットしてログイン!


「ワオール、ただいま」

『ワホッ』


 嬉しそうに尻尾を振るワオールに、採取のためダッシュするぞと伝える。

 大学の休憩時間にネットで調べたが、町や村から遠くに行けば元気草の上位版が採取できるとあった。

 クエストは町でも村でもないが、最初に送られる場所という点では同じだ。

 ゴブ森付近では採取していないので、あっちの方で新しい発見がないか見てみたい。


 全力疾走で五分強。ゴブ森までもうちょいだが、この辺りで採取をしよう。


「ワオール。俺は採取したいから、後は頼めるか?」

『ワオッ』


 尻尾を振るワオールは、俺から着かず離れずの距離保ってモンスターをデストロイしていく。

 さて、採取スキルっと――おぉ、あちこちマーカーが出てるな。

 どれどれ。


 んん?

 採取出来たのは元気草……三枚?

 一度に三枚!?

 つ、次!


「お、『質の良い元気草』が採れた。こっちは一枚か」


 精神草もこの辺りは多いようだ。

 結果、普通の元気草>精神草>質の良い元気草ぐらいの割合で採取できた。


「もっといろいろ欲しいなぁ……ワオール、ゴブ森で少しだけ採取したいんだが……」

『ワオォ。ワンワン!』

「ん? なんだ? 俺のおし……お尻!?」


 ワオール、え、お前……雄じゃないのか?

 いやそれ以前に何故俺のお尻を触りたがる!?

 ワオールから俺のお尻を守るべく手で押さえると、そこにあったのはスマホ……。


 スマホを見たかったのか?

 ってことは、自分のステータスでも確認したいのだろうか。


「ステータス見たいのか?」


 頷きつつも、微妙に違うらしく手で違う違うとジェスチャーを送ってくる。

 よくわからないのでとりあえず画面を見せよう。

 すると、ステータスではなくスキルアイコンを爪で刺した。


「あぁ、スキルを見たいのか。もしかして新しいスキルが欲しいとか?」

『ワオンワオンッ』

「そうか。最初にひとつ取ったっきりだしな」


 俺は二つ新しいのを取ったから、暫くポイント貯めないといけないもんなぁ。

 

 ワオールのスキル未獲得一覧を出すと、その画面をじぃーっと見て何やら考えている様子だ。


「ワオール、今ポイントいくつあるんだろうな。ちょっとステータス確認させてくれ」

『ワンッ』


*********************************************


 名前:ワイルドウルフキング(ワオール)

 HP:1700→1750/1750  MP:50/50

 筋力:114→119  耐久:37→38  魔力:1


【獲得スキル】

『学習:LV5→7』『夜目:LV6→7』『嗅覚:LV1→2』『聴力:LV2』

『ワイルドクロウ:LV2』『ムーンライトシザース:LV2』

『自由戦闘:LV1→LV2』


 SP:964


満腹■■■■■■□□□□空腹


【確認完了?】

*********************************************


「うぉ! もう少しで1000じゃないか」

『ワフ!?』

「お前はどのスキルが欲しいんだ?」

『オゥ〜ン』


 スキル画面に戻し、ワオールの爪の動きに合わせて画面をフリックしてやる。

 上から順に最後まで見終えると、今度は上にフリックを要求された。


『ワンッ』

「これか? 『アースウルフ』。おぉ、範囲攻撃スキルか! しかしこれひとつで必要ポイント700って……まぁ取れるからいいか」

『ワンッ』

「え? これも? 『満月の雫』……へぇ、MPがスキルレベル×10増えるのか」


 MPを増やす方法は魔力を上げるしかない。その魔力を上げるには、魔法を使うこと……とある。

 でもスキルそのものは魔法には該当しないようだ。

 その証拠とでも言うのかな。この前取ったドレインとエナジーディストビューを使うようになって、俺も初めて魔力が上がった。

 実際に魔法と呼べるようなものでないと、魔力は上がらないってことだな。


「でもそうなると、魔法スキルを持ってない人はどうやってMPを増やすんだろう?」


 いつまでもMP50のままって、きつくないか?

 とりあえずワオールのスキルを取って……あ、これ、ポイント足りないぞ。


「ワオール、この二つを取るためには、スキルポイントが1050必要だ。どうする?」

『ワホ』


 アースウルフを取るのか。

 それから満月の雫……両方取りたいってことだな。

 よし、なら。


「たまには俺がお前を手伝ってやらないとな」


 アースウルフをポチってから、俺たちは森へと走る。


『ゲギャッ』

『ゲギャゴギャ』

「きたきたきたーっ」

『ワオッワオッワオッ』


 森に入ってすぐ、三匹のゴブリンがお出迎え。もう少し奥に進むと、更に二匹が寄って来た。


『ウオオオオオォォォォォォォォッ』


 森に響き渡るワオールの勇ましい声。

 拳を突き上げ、その拳を思いっきり地面に叩きつける。

 赤い衝撃波が波紋のように広がり、地面が揺らぐ。

 衝撃波でゴブリンたちに20ダメージを与えたかと思うと、今度は地面が盛り上がり、石礫が奴らを襲う。

 

『ギャギャーッ』


 断末魔が木霊する。

 かろうじて生きていたゴブリンに、俺は戦斧を振り下ろした。


 駆逐、完了。

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