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 アラームが鳴り、俺は森から少し離れてログアウトした。

 昼ご飯を食べ終え再びログインすると――。


『キシェエェェッ』

「おわっ!? い、いきなりなんだっ」

『ワオォンッ』


 ゲーム内に移動早々、何かに襲われた。

 ワオールが対峙するソレは、草原を移動中に見たモンスターだ。


「鑑定しておくか」


***************************************

 スネークマン:モンスター

 備考:蛇のような顔を持つ。

    時々リザードマンと間違われる。

    火が苦手。

***************************************


 なんとなく可哀そうだと思ってしまう備考欄。

 確かにトカゲではなく、蛇のような顔だ。

 だけど手足があるので、やっぱりトカゲっぽく見える気もしないではない。

 そう思うと、余計に哀愁を感じてしまう。


 だが、さっきのゴブと違ってこっちはワンランク弱いようだ。

 ワオールが確実に仕留めていく。


「ワオール。森に入るか?」

『ワホッ。ワンワンッ』

「よしよし、じゃあ行こう」


 森に近づけば早速ご登場のゴブ……。


「ゴブ、なんだっけ?」

『ゲッギャアァァッ!』


 こ、こいつら! 俺の言葉がわかるのか!?

 てぐらい、怒っている。

 ちょっとド忘れしてるだけじゃないかー。そんなに怒るなよ。

 仕方ないので鑑定して調べよう。


***************************************

 ゴブリン:モンスター

 備考:雑魚モンスター筆頭。

    超メジャーモンスター。

***************************************


「お前ら……雑魚モンスター筆頭とか……可哀そうにな」

『ギッギャギャッ!!』

「ちょ、なんで怒るんだよ。だって鑑定したらそう書いてあったんだぞっ」

『ゲギャッ!』


 数匹のゴブリン(・・)の中に、やたら敵意むき出しの奴が一匹いる。

 そいつは手に枝を持ち、それを振り回してやってきた。

 その枝――何か付いている?

 

 それが何なのか興味が湧き、つい枝に目が行ってしまう。

 結果、じっと見つめていたソレが何であるかわかったが、代償にソレで殴られるという。


「うわっ、いって!」

『ゲギャギャー』


 あぁくそっ。あいつ今絶対笑いやがった!

 あんな物で殴られたら、痛いに決まってるだろ!

 だってあれは――。


「その毬栗、よこせ!!」


 栗……植えたら芽が出るかなぁ。






 森の中はゴブリンだらけ。しかも数が多い。

 ワオールが強いとはいえ、俺がそれに追いついていない。

 結局森に入って数分ほどしか先に進めず、囲まれ過ぎて殲滅が追い付かなくなり引き返すことに。


 森を完全に出てしまうと、ゴブリンたちは追いかけて来なくなった。


「はぁ……はぁ……あいつらのテリトリーは、森の中、だけみたいだな……はぁ」

『ワフゥ……フゥ』

「さすがにお前も疲れたみたいだな。戻って休むか」

『ワンッ』


 駆け足で拠点へと戻ると、武具店と雑貨屋の間、地面に座ってくつろぐドミンゴたちを発見。

 ダンジョンから戻って来たのか、それとも午後の狩り準備なのか。


「こんにちはー。それとただいまー」

「お、クーおかえり。どこ行ってたん?」

「うん。北のほう」

「おかえりなさい、クーさん。どの辺りまで行きました? 北東のほうに森とか見えませんでしたか?」

「あった。そこまで行ったんだ」


 森にはゴブリンが、常に複数で徒党を組んでて手強かったと感想を口にする。

 あと備考欄が切なかったことも。


「ぶわっは。それマジつれー」

「雑魚筆頭……ぷっ」


 おぉ、ユキト君も笑ってくれた。

 

 森の中ではゴブリン以外のモンスターも、チラっとは見たんだ。

 かなり大きな蜘蛛だとか、1メートルほどもある跳ねるキノコなど。

 全てアクティブモンスターだった。


「地上のダンジョンみたいな場所かなぁ」

「かも」

「地上のダンジョン?」


 渚さんと、彼女の言葉に同意するユキト君に、それがなんなのか聞いてみた。


 ダンジョン――洞窟だったり、地下の遺跡なんかを俺は想像する。

 でもゲームにおいて、そんな常識はどこにもないようだ。

 例えば――。


「クーさんが見たような森でも、他のエリアと比べて敵の数が圧倒的に多かったり、迷路のように入り組んだ構造だったり、あとはマップそのものが隔離構造になっているような場合はダンジョン扱いなの」

「お城がダンジョンなんてのもあるぜ。もちろん中はモンスターだらけだけどな」

「ボス……居ればわかりやすいな」

「ふぅん。そういえばゴブリンたち、俺たちが森を出て逃げても、追いかけて来なかったな」

「てことは、確実にダンジョン扱いだな。エリアが違うから追いかけて来れないんだよ」


 ほぉ。

 最初は何もないただの草原だと思っていたけど、案外少し行けばダンジョンが二つもあって、冒険メインのプレイヤーにも嬉しい立地じゃないか。


「もっと人が増えるといいのになぁ」


 ぽつりとそう呟いた言葉に、三人も頷く。


「そのためにも、やはり冒険者ギルドが……」

「ユキト君も、ギルドがあった方がいいと思う?」


 俺の質問に彼は頷いて答えた。

 そしてぼそりと――。


「クエスト、受けられるし、情報も買える」

「それに他所の町の人とも、取引できるようになるものね。今だと製造やってるの、クーさんだけだし」


 と渚さんが苦笑い。

 何故か。


「製造装備は店売りと違って、レアランクの高い物まで作れるからなぁ」

「店売りがノーマルで、製造が……えぇっと確か」

「プチレア、レア、激レア」


 そうそう。武器の名前の後ろに☆マークが付くんだっけ。

 同じ名前の武器でも、☆が多い方が攻撃力も高いし、その上特殊能力が付くようだ。

 もちろん、その為の素材が必要だってことだけど。


 俺は木工を持っているが、作れる武器は杖と弓。

 ユキト君は弓使いで、俺の獣魔召喚に似たテイマースキルを持っている。

 今はまだモンスターを捕獲しておらず、渚さんがこれというモンスターを見つけるまでお預けなんだとか。

 

 その渚さんは魔法系スキルで固めた、リリーチェさんと似たタイプだ。

 このカップルの武器は作ってやれる。

 でもドミンゴのは無理だ。

 彼はティト君と同じ、戦士タイプなので剣、そして防具も鉄製――になる予定だ。


「そっか……俺ひとりじゃあ作れる物にも限界があるな」


 スキルがまだ無いという問題がある。

 それを解決させても、今度は時間の問題が発生する。


 住宅を作りたい。ポーションも作ってみんなに買って貰いたい。

 何をやるにしても素材を集めなきゃならない。

 伐採に掘削に採掘に採取……。

 ひとりでそれらを全部賄うのは無理だって、最近わかるようになった。


 ティト君やリリーチェさんに手伝って貰えば、平屋の家なら二時間で完成する。

 俺とワオールだけだと三時間掛かった。それもドミンゴに木材を用意して貰ってだ。


 ひとりじゃあ無理だ。

 物作り……生産好きが来てくれないだろうか?

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