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ここから第二章となります。


『FreeStyle Adventure』をプレイ初めて一週間。

 今日は日曜日。朝からガッツリ遊ぶぜ!


「おはよう、声」

『おはようございます、クー様』

「昼の十二時にアラームセットしてくれ」

『畏まりました。では正午にアラームをセット致します』

「ありがとう。じゃあ行ってくるな」

『いってらっしゃいませ』


 行ってくる――そうは言ったが、実際には俺はどこにも行かない。

 が俺をゲームに送り届けてくれるからだ。


 視界が変わると、そこは俺たちの町。

 と言っても、今あるのは武器防具屋、雑貨屋、そして住居が二軒だ。


 モグラキングを倒したあの日、にゃんごの店舗完成を祝っている最中にログインしてきたのは――。


「お、クー! おはー」

「おはようドミンゴ」

「丸太の加工、終わってるぜ」

「おおぉぉ、助かる!!」


 筋力を上げることを目的に大工スキルを取ったというドミンゴ。

 大工スキル以外は戦闘系スキルで固めてあって、ティト君と同じ戦士タイプの人だ。

 伐採は持っていないというので、俺が木を伐採。彼に渡して木材への加工を頼んでおいた。というかそうさせてくれと頼まれた。


「筋力上がった?」

「上がった上がった。2増えたよ。いやぁ、戦闘するより上がりやすいって情報、本当だったよ」

「そりゃあよかった。てことは、大工スキル持ってれば攻撃力だけで戦えるんじゃない?」


 俺の筋力は、どうやら今時点では高い方に分類されるようだ。

 ドミンゴはスタートが出遅れた分、情報をガッツリ集めて始めたらしい。


「いやぁ、どっかで調整されるだろうな。例えば序盤は生産スキルでステータス上昇が良いけど、それ以降は戦闘が有利とかさ」

「ううん。そうかもなぁ。そうでなきゃ、戦闘系で固めた人は涙目だもんな」

「そうそう。俺は序盤だけでもいいんだ。出遅れた分、少しでも早くステータスを上げて、先へ進みたいからさ」


 先へ進みたい。

 しかし地理的な情報は皆無に等しい。

 なんせここを拠点とするプレイヤーが、あまりにも少なすぎるからだ。

 とはいえ、狩場には苦労していない。

 隠しダンジョンがあるからな。


 あの日から二日。

 モグラキングを倒したその日の夜に、ドミンゴの協力もあってミャーニーの家が完成。

 土曜日の昨日は午前中に講義と、自動車事故の加害者と車のメーカーの人が来て慰謝料その他の話があって……ログインしたのは夜だけ。

 その夜に、見知らぬプレイヤーが二人、増えていた。


「おはよう〜」


 おっと、その内のひとりがログインしたようだ。


「おはようございます、渚さん」

「クーさん、おはようございますー」

「ユキトは――お、ログインしたか」

「おは」

「「おはー」」


 ユキト君と渚さん。この二人はリア充だった。

 二人は同じ拠点からプレイを始めるのに、合流しやすい、比較的人の少ない場所を選んでここに送られてきた。

 ドミンゴは大工スキルで筋力アップしたいため、発展途中の、大工スキルが役に立ちそうな場所を選んで、ここに送られてきた。


 ここの人口はプレイヤー六人、NPC十人だ。

 昨晩、住居を一軒建てると、直ぐにNPCの一家がやって来て入居。

 彼らの為に畑の柵をと思ったが、ミャーニーはもう二、三家族増えてからでもいいと言う。


「クーさんはこれから家作りですか?」

「うん。今日中に三軒建てようと思って」

「オレが木材の加工しまくったから、直ぐにでも作業できるだろ?」

「うんうん。加工の手間が無くなっただけでも、作業が早くなって助かるよ」


 ログインしてきたばかりの二人は狩りの準備へ、ドミンゴは狩りでもしていたのか、アイテム整理をすると言ってにゃんごの店へと入っていった。


「クーさん。ポーションを作成、お願いできますか?」


 建設準備に取り掛かろうとしたところへ、渚さんがやって来た。

 リア彼氏なユキト君は、口数の少ないクールな印象だ。対照的に渚さんは、とても馴染みやすい人だ。

 見た目はドミンゴも含めて二十歳前後と、俺と変わらない。


「オケ。いくついる?」

「んー、ユキトぉ」

「ん……」


 ユキト君は相槌だけして、スマホを俺に向かって差し出した。

 取引?

 同じようにスマホを出すと、彼がやって来てアイテム――元気草を二十七枚と、空き瓶を二十七本くれた。


「二十七個でいい? ていうか、採取スキル持ってたのかい?」

「それ、モンスタードロップなの」

「えぇ!?」

「ここから真っ直ぐ北に行った狩場に、『ランラン』がいる」


 ユキト君はそこまで話すと、渚さんの方を見た。

 たぶん、あとの説明はよろしく、みたいなとこだろう。

 苦笑いを浮かべた渚さんが、彼の話を引き継ぎ教えてくれた。

 俺はその間、頼まれたポーションを作りながら耳を傾ける。


「名前からして、なんか凄くテンションの高いモンスターなんです。見た目は土団子に、毛が三本……ではなくって、草が三本生えてるんです」

「へんてこなモンスターだね」

「同感」


 そう言って笑う渚さんの隣で、ユキト君もニヤりと笑う。

 もっと普通に笑ってよ……。


 そのランランが、わりと高確率で元気草を落としてくれるそうだ。

 雑貨屋でポーションを買うより、俺に依頼して作ってもらった方が安上がりだからと、昨晩の狩りでゲットした草は残しておいたのだと。


「よっし。出来上がりっと」

「わはっ。ありがとうクーさん。これお礼、使えるかしら?」

「ん?」


 ポーションと引き換えに貰ったのは、『良く肥えた土』。これもランランのドロップだと彼女は話す。

 肥えた土ってことは、畑に使える土だろうな。これを十個貰った。


「そんなお礼しか出来なくってごめんね」

「いやいや。栽培とか農耕スキルもあるし、家を建て終わったら今度は畑にも手を出そうと思ってるから。その時に使うよ」


 ちょうど栽培したい物があるからと伝えると、また拾ったら譲ってくれると二人は言う。


「ポーションの製造依頼代として」


 ユキト君がぼそりと呟くと、アイテム整理を終えたドミンゴが戻ってきた。


「ユキト、渚さん、行こうぜ」


 三人はこれから隠しダンジョンに行くようだ。

 モグラキングにはまだ挑めないが、敵の数も多く、定点狩りでも十分稼げるあそこは効率がいいと。


「クーさんも今度一緒に行きましょうね」

「うん。こっちがひと段落したら」

「その頃にはオレも、クーの筋力に追いつくぜ!」


 今の俺……筋力21なんだぜ。


 渚さんのテレポートで三人が消えると、改めて建設準備に取り掛かった。


「ワオール、今日は俺とお前の二人だけだ。手伝ってくれよな」

『ワオンッ』

「終わったら俺たちも北の方に行ってみよう」

『ワホッ!』


 新しい場所に行くのが嬉しいのか、ワオールは尻尾を振りながらぴょんぴょんと駆けまわる。

 北の方には行ってないんだよな……。いつも林や隠しダンジョンのある西側か、川がある東側ばかりだし。

 南側はその帰りに横断したことぐらいはある。生息するモンスターに代わり映えはしない。

 だけどさっきの話を聞く限り、俺の知らないモンスターが居そうだ。

 この一軒を建てたら行ってみよう。


 俺とワオールの二人で朝八時過ぎから始めた建築作業は、約三時間掛けて一軒の家が建った。


「夜分遅くにすみません。この辺りに開拓中の土地があると聞いてやってきました」


 相変わらず、家が建った瞬間にNPCはやってきた。

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