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034

 朝ご飯が遅かったのもあり、昼はお茶漬けだけで済ませた。

 ログインしたら採取をしよう。手持ちの薬草は駒田に売ったポーションで、ほぼ使い切っている。

 リベンジするならポーションは必須だろう。


 時刻は一時過ぎ。三十分あれば数は揃う。


 ログインしたのはゲーム内でも日中のタイミング。


「ワオール! 二人はまだか?」

『ワオンッ』


 ワオールの返事を聞いて胸を撫でおろす。

 ではでは、外で採取をしますかね。


「ボスに再戦するにも、ポーションは十分にあった方が良いだろ?」

『ワオン』

「だからこの時間は採取だ」

『オンッ』


 スキルを使ってマーカーを出す。

 マーカーを追ってあっちでぶちぶち、こっちでぶちぶち。

 ワオールはそんな俺をじぃっと見ている。覚えようとしているのかな?


「ワオール、この草を摘んでもいいぞ」

『ワホッ』


 嬉しそうに爪で草を摘んだ――というより引きちぎった?

 その草はひらひらと地面に落ち、そのままフェードアウト。


『クゥーン』

「よしよし。練習すれば摘めるようになるさ」


 励ましながら摘み取れる草を教えていく。

 気づくと拠点から随分と東の方へやってきた。

 採取できるだけやって拠点へと戻り、直ぐにポーションを作る作業に取り掛かった。

 取れた数は――。


「ん? 精神草ってのが何枚かあるな。――え、これ!」


 MPを回復できるマナポーションの素材、と書いてある!

 早速作ってみると、回復量は20と少ない。再使用まで六十秒。


 俺が取った(・・・)スキルと併用すれば、枯渇を防げるかもしれない。

 薬草の数だけポーションにして、二十六本完成。ライフポーションは四十七本になった。


「これで準備OKかな。杖よーし、ポーションよーし、スキルよーし……」


 スキルポイントの残りがほぼ消えてなくなったが、生産スキル欲しくなったらまた頑張ろう。

 最近の狩場はアクティブモンスターが多いし、俺もしっかり戦わなきゃな。

 あ、戦うと言えば――。


「キョウ、武器が欲しいんだ」

「いらっしゃいませぴょん。何をお求めですかぴょん?」

「うぅん……お勧めはなんだろう? 俺、攻撃スキルが無いんだ。出来るだけ破壊力のある武器がいい」

「ふむふむ」


 俺の今の筋力を尋ねられ19と答える。

 耳をピコピコ、鼻をヒクヒク、胸筋ピクピクさせながら、キョウは一本の斧を取り出した。


「鉄の戦斧バトルアックスぴょん。筋力が低いと扱えないうえ、例え必要筋力を満たしていても重さ故に攻撃速度が遅くなってしまいますぴょん。ただし――」


 でかい……木を切るための斧に比べて、刃の部分は大きく、その上二枚ある。


「これは両手斧ですぴょん。攻撃力という点では、ほかのどの武器にも負けませんぴょん」

「鑑定させて貰ってもいいか?」

「どうぞどうぞ」


***************************************

 鉄の戦斧:両手武器

 効果:ATK+40。

    攻撃速度低下。

 必要筋力:18

***************************************


 おぉ。攻撃力高いな。同じ鉄製でも、剣だと攻撃力27だ。その代わり、必要筋力が倍以上必要になるが。

 値段は……5500Gか。足りないな。

 練習で作ったワンドを買い取って貰ってギリギリ購入。


「重くないですかぴょん?」

「重く感じる……丸太より重いんじゃなかろうか」

「はっはっは。どうですかね〜。それでは、お買い上げありがとうございますぴょん」


 あ、なんか強引に〆られた感が。

 うん、まぁいいか。

 そうだ、明るいうちに頼まれていた棚を取り付けてしまおう。


 ワオールに手伝って貰いながら、五十枚の板をキョウに指示された壁に釘打ち。

 ウドマー側の壁にも棚を取り付け、全部が終わるとキョウから報酬を貰った。


「どうもありがとうございますぴょん。まだお店を開いたばかりでこれぽっちしかお出しできませんが……」


 そう言ってキョウから1000Gを貰った。

 先に仕事を済ませて報酬貰えばよかったな。


「こちらもお受け取りくださいぴょん」

「ん? 花?」

「はい。『元気草の受粉した花』ですぴょん」


 受粉した……花……。

 じゃあ、種が出来るのか?

 いや、でも摘み取ってしまっているし……。


 にこにこ笑うマッチョ兎のキョウさんの代わりに、ウドマーが髭を揺らしながら教えてくれた。


「受粉しておるということは、種が出来る。ではどうやって種が手に入るのか――。それには二通りのやり方があるぞい」

「二通り?」

「んむ」


 髭を揺らしそう語るウドマーは、こう続けた。

 

 栽培するか、分解するか。

 栽培はスキルを使って畑に植えること。

 分解はスキルを使って、花を分解する方法だ。

 前者は時間が掛かるが、数も多く、発芽率の高い種になる。

 後者は直ぐに手に入れられるが、数は少なく発芽率もやや低い種になるとのこと。


 栽培はある。農耕も持っている。

 今は時間がないので、花は大事に取っておこう。






「遅くなっちゃってごめんね、お兄さん」

「すみませんっ。車が渋滞してて時間かかっちゃって」

「いやいや、お帰り」


 車が渋滞……か。

 ゲーム内で聞くと、ものすごく違和感のある言葉に聞こえるな。

 車なんて存在しない世界。だからこそ渋滞とも無縁だ。

 なんかいい世界じゃないか。


「さて、早速ですが――じゃーんっ」


 俺は昼ご飯前に完成させた杖をリリーチェさんの前に出す。

 スマホ移動ではなく、実際に取り出して彼女へ手渡したのだ。

 そうしたのは、彼女の反応を見たかったから。


「わっ。持ち手が青くて、綺麗〜」

「わぁ、本当だ。どうしたんですか、この青いの」

「あぁ、あれを塗るために買った青色顔料なんだ」


 そう言って俺は武具店の屋根を指差す。

 まだ色は塗っていないので、ベージュ色のままだ。

 顔料は町の方でプレイしている知り合いに代理で買って貰い、宅配してもらったと説明。


「町だと簡単に手に入るんですね」

「みたいだよ。まぁアレも早く完成させたかったしね」

「リベンジ終わったら、また三人で頑張りましょう!」

「うん! 次はにゃんごとミャーニーのお家よね」


 それから必要なポーションを二人に渡す。

 今晩、にゃんごたちの住宅建設を手伝って貰うのと引き換えに、だ。


「さぁ、それじゃあ行こうか!」

「「はい!」」

『ワオオォォォォォンッ』






 あっという間に隠しダンジョンへと到着。

 テレポート……欲しいなぁ。


「移動時間が減れば、その分効率よく狩りが出来るからね」

「そうだよねぇ。駆け足でもここまで十五分は掛かるし」

「でもそのうちライドモンスターとか、ライドペットとか実装されるんじゃないですかね」


 ライドモンスター?

 ワオールを見ると、違うよと言うように首を横に振った。


「乗れるってこと?」

「はい。MMOの時代から、そういうシステムがありましたから」

「普通に馬に乗るっていうゲームもあるんだけどね」

「ドラゴンに乗って空を飛ぶゲームもありますよ! ただ低空飛行でしたけど」


 そう言って二人は笑う。

 ドラゴンなんかに跨って、なのに低空飛行か。普通に邪魔じゃないか?

 ドラゴンでなくてもいいから、早く走れる乗り物は確かに欲しいな。


 そんな話をしながらダンジョンの奥へと向かう。

 やがてモグラキングの部屋へと到着した。


「念のため鑑定したけど、名前しか出ないわね」

「ん――うん、そうだね」

「つまりぃ、誰もモグラキングの情報を、ギルドに売ってないってこと」

「あっ」


 そうか。つまりまだ誰もこいつを倒していない……可能性が大ってことか。

 

 突撃する前に作戦を練る。

 まずはワオールが突撃していって、キング周辺のモグラを集めて貰う。その場はワオールに任せ、次にティト君が。


「僕、青銅のブレストアーマーになったんです」

「おぉ。その青みがかった上半身鎧か」

「はい。防御力が昨日の1.5倍ですよ」


 嬉しそうにそう話すティト君。靴も新しくなっていて、こちらは皮のブーツなのだとか。

 追加されるHPも増え、聞けば俺よりも高くなっていた。

 せ、先輩プレイヤーなのに、早くも追い抜かれている。


 変わったのはリリーチェさんもだ。昨日はハーフパンツだったけど、今日はショートパンツになって、更にハーフマントのような物を羽織っていた。

 足の防御力は落ちているように見えるんだが……。


 ティト君が先に突っ込んで行って、俺とリリーチェさんはワンテンポ遅れて突撃。

 ティト君が盾役というのを引き受けることになる。


「クーさんはモグラキングの側面から攻撃してください」

「側面じゃないとダメなのか?」

「もしかすると、範囲攻撃をするかもしれないんです」

「ボスってそういうものなの。それでね、範囲攻撃にも種類があって――」


 正面に居る敵に――狙った相手を中心にした範囲――そういうものの場合、側面で戦っていれば被害にあわずに済むから、と。

 なるほどなるほど。そういう戦い方もしなきゃいけないんだな。


「オケ。俺も君たちの役に立てるスキルを取ってきたんだ。ポーションもあるし、がんがんスキル使って戦ってくれ」


 首を傾げる二人を他所に、俺はやる気に満ち溢れていた。

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