表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/56

033

「何だろう……この『質の良いケヤキの丸太』って」


 それが取れたのは、種から植えたケヤキからだった。

 ただ全部という訳ではなく、二十粒ほど植えた内、質の良いと付いたのは三本だけ。


 先輩生産者に聞いてみるか。


【クー:もしもし、フォッカさんですか?】


 暫くして返事が来た。

 フォッカさんに質の良いケヤキの丸太をゲットした旨を話、これがなんなのか尋ねてみる。

 すると、嬉しい返事が返って来た。


【フォッカ:同じ物を作った場合、質の良いって出る素材で作ると】

【フォッカ:少しだけ性能の良い物が作れるの】

【フォッカ:他の素材でもそういうのがあるけど】

【フォッカ:買い取り価格なんかは五倍にまで跳ね上がってるわよ】


 これ売ったら金持ちになれそうだ。

 というか誰も植林しないのか?

 まぁ町の外じゃないと、植えられないんだろうけど。

 それを聞くと――。


【フォッカ:誰が植林しても誰でも切り倒せるのよ】

【フォッカ:植林しても気づいたら他人に切り倒されるんだって】



 うわー、都会って大変だなぁ。

 それに引き換えこっちは、他に誰と言えば双子やNPCだし。

 誰も切り倒そうとしないから植林し放題だ。


【フォッカ:でも植林だけで質の良い物が取れるとは思えないんだけど】

【フォッカ:ほかに何かしたの?】


 他にといえば、種を植えたところから始めたことぐらいか。

 世話はもちろんしていないし。

 そう話すと、フォッカさんはこの情報をギルドに売ってもいいか尋ねてきた。


【フォッカ:私は木工も植林も持ってないけど】

【フォッカ:これが広まれば素材の価格も下がってくると思うの】

【フォッカ:そうしたら杖や弓使いが助かると思うし】


 彼女は生産者でありながら、購入する側のことも思って価格は安定したほうがいいと語る。

 俺もその意見に賛成だ。


【フォッカ:そっちにはギルドが無いんでしょ?】


 だから自分が代わりに情報を買う――と。


【フォッカ:ギルドに売るためには、本人にその実績がないとダメなの】

【フォッカ:知り合いの植林持ちにやって貰って、出来上がったらギルドに行くわ】

【クー:でももし俺の考えが間違っていたら?】

【フォッカ:その時はマッキーから損した分を巻き上げるからw】


 うん。だったらいいや。


【フォッカ:他に何か欲しいものとかは? 町の工房だといろいろ売ってるけど】


 いろいろ?


【クー:あ、そうだ。だったらひとつ頼みたいんだけどいいかな?】


 顔料……まだ心残りでもある店舗の屋根に色を塗りたい。

 町なら顔料とか取引されていないだろうか?


【フォッカ:それなら工房のNPCが売っているわ】


 顔料はひとつ1500Gとやや高め。

 大工スキルで着色に必要な顔料の数を見ると、三つと書いてある。

 にゃんごやミャーニーの屋根のことも考えて……。


【クー:素材買い取って貰っていいですか? その金額含め手持ちが幾らになるか】

【フォッカ:オッケー】


 昨晩のダンジョン狩りでの素材は4982Gになった。

 情報は7500G。これまでギルドに売られた情報価格――の情報だと、そのぐらいが平均価格だという。


 おぉぉ。これで13000G超えか。


【クー:じゃあ顔料を八個送って貰っていいですか?】

【フォッカ:オッケー。じゃあ差額の482Gと顔料送るわね】


 こうして手元に青色顔料が届いた。

 これでやっと、本当の意味で完成する。

 そして俺の所持金は、再び2000Gを下回るのだった。






 質の良いケヤキの丸太は三本あるんだ。

 試しにどのくらい性能が違うのか、ワンドを作って比べてみよう。

 自動アシストでそれぞれ一本づつワンドを作成。

 質の良いケヤキの木材からは『ケヤキのワンド☆』が完成。

 魔法攻撃力も追加されるMPも、確かにほんの少しだけ☆有のほうが高かった。


 手作業だと品質が良くなるとあったよな……。


 じゃあやってみようか!


 まず木材を取り出し、杖っぽい形に魔導挽き廻しのこぎりで切り出していく。

 のみを使って形を整え――あぁ!


「細く削り過ぎて折れてしまった……でもよかった。普通の木材で」


 案外難しいな。

 ただのこぎり作業は実際やるのと比べると、力はそれほどいらない。

 のみにしても現実で使う彫刻刀の方が、よっぽど手首を痛めるだろってぐらい楽ではある。

 逆にそのせいで力加減が難しいってのもあるかもしれないな。

 軽〜くいくか。


 そうして三十分ほどかけ、やっと杖が一本作れた。

 ある程度形が出来ると『完了しますか?』というボタンが、視界にちらちらしていたが。

 満足する形になってボタンを押すと出来上がりのようだな。


 完成したのは『高品質のケヤキのワンド』。能力は☆付と同じだった。

 普通のケヤキの木材で作って☆付と同じか。

 じゃあこれに魔力石をどこかにはめ込めばいいんじゃないのか?


 じゃあ先端にのみで穴を空けて――あ。


 のみを立てた瞬間。ワンドがポキっと折れてしまった……。


 一度完成させた物に手を加えるのはダメなのか。

 不安だ。もう少し手作りで練習しよう。


 次のワンドは無事成功。

 その次は形を凝ろうとして失敗。ワンドと言ってもただの棒だ。少しでも喜んで貰いたくて、ちょっとだけ可愛くしてみようと思ったんだけどなぁ。

 シンプルだけど、それでいて可愛くみえるように……。


 赤い魔力石をはめ込む、もしくは取り付けることも考えて――。


 こうして出来上がった試作品は、先端に石を乗せられるように丸くくり抜いた形に。

 試しに預かった石を乗せてみる。

 もう少し彫を深くしたほうがいいな。


 それから微調整をしながら、いざ本番へ!

 練習した甲斐あって、木工スキルはレベル3になっている。

 素材に魔力石をセットして、いざ――勝負!

GW中はお昼12時に予約更新することが多いと思います。


*所持金に関しての誤字報告がありますが、誤字ではありません。

もともと持っているお金もありますので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ