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 ティト君に教わった通り、クエストの内容確認をしておく。

 キョウは棚と言ったが、そんなのすぐに作れるだろ? それでスキルのレベル上げって……。

 なーんて思ったがそんなことは無かった。


「店舗の壁一面に棚をつけるのか」


 依頼された棚は壁に取り付けるタイプで、一枚の板を下から棚受けで支える簡単なタイプだった。

 これを五十枚。もちろんL字の棚受けもクエストに含まれていた。


「こういう作業するなら、作業台が欲しいよな。いっそそれから作るか」

『ワオ』


 作業台作りの為ににゃんごの所で釘を三セット購入。


「にゃんご、挽き廻しのことか売ってないのか?」

「ニャー。お客ニャん、良かったニャねー。昨日、ちょうど入荷したニャよー」

「本当か!?」



 にゃんごの販売物一覧を見ると、確かに挽き廻しのこぎりがあった。

 価格は2500G。

 あれ? いきなり高額になってるぞ!


「ニャー。お客ニャん、実はもっといいノコギリあるニャが」

「え? もっといい?」

「ニャー。裏ルートアイテムニャよ。それを買うためには、異世界のお金が必要ニャが……」


 は? い、異世界?


「スマホにある異次元ショップを見てみるニャよ」

「異次元ショップ……なんだ、その怪しいお店は」


 だが開いてみて納得。ただの課金アイテムだった。

 ここで謎の単語を見つける。


「にゃんご、この『魔導挽き廻しのこぎり』ってなんだ?」

「それはニャね、MPを消費することで使える、挽き廻しのこぎりニャ。普通は手動でギコギコやるニャよね?」

「あぁ……なんかわかった気がする。MP使って自動で動くノコってことだよな?」

「そうニャ。説明を見るニャよ」


 ふむふむ、なるほどねー。


***************************************

 魔導挽き廻しのこぎり:道具

 効果:10秒でMPを1消費する、自動挽き廻しのこぎり

    切れ味が悪くなれば、刃の交換だけで済む

***************************************


 で、替刃もちゃんと売られてあった。

 本体価格は千円。替刃は百円。


 欲しい。

 課金は別にしてもいいと思っている。まぁ大金は使えないが。

 ただ問題は、どうやって決済するのかだ。


「一度朝飯ログアウトして、ついでに公式サイト見てくるか」

『ワホ?』

「ワオール、ごめんな。俺ご飯食べてくるよ。その後で棚作り開始だ」

『ワオンッ』


 尻尾をふりふり。ワオールって俺が居ない間、どうしてるんだろう。

 犬座りをして、ここで待ってるねという顔で俺を見送ろうとする。

 やっぱカッコ可愛い。


「もふりたい」

『オォン』


 ダメ――首を振るワオールは、きっとそう言っているのだろう。

 ちょっと寂しいままログアウト。


『お疲れさまでした』


 ロビーの声にそう言われ、ハタと思いつく。


「あのー、課金したいんだけど、決済方法ってどんなのがあるんだ?」

『いくつか方法がございます。クレジット払い、電子マネー、ネットバンキング、通信端末決済、となっております』

「クレカとネットバンキングは無理だな。電子マネーはコンビニなんかに買いに行かなきゃならないし……」


 となると残るは通信端末による決済だな。

 後払いになるから気をつけなきゃならないが……。


「限度額設定とか出来るのか?」

『はい。一か月の課金金額を事前に設定し、その金額から差し引いていく形での課金も可能でございます』

「お、それいいな。ご飯食べる前に決済設定だけしておこう」

『ありがとうございます。必要設定は公式サイトの【ショップ利用について】のページより行えます』

「ありがとう」


 お礼を言って完全ログアウトをすると、さっそく公式サイトから決算登録をした。

 その後、遅めの朝ご飯。まぁ軽めにしておこう。

 食べている間にタブレットへ通信会社からメールが届き、必要手続きを行えば――。


「よし、これで決済設定完了っと。とりあえず上限を一万円に設定しておこう」


 全部を済ませ再ログイン!


「お待たせワオール」

『ワオンワオンッ』


 撫でさせてはくれても、もふらせてはくれないワオール。

 ひとしきり撫でまわした後、異次元ショップから魔導挽き廻しのこぎりを購入。

 ついでに魔導サンダー千円もポチっておこう。角があると、息子のガチャ君が怪我をするかもしれないし。

 ポチったあと、メッセージが届いた。


【お買い上げまことにありがとうございます】


 そんなメッセージと共に、魔導挽き廻しのこぎりとサンダーが届いていた。

 残金八千円。節約しなきゃな。


 魔導ノコも欲しかったが、こっちは千五百円とちょっとお値段が高かったので見送り。

 さて、じゃあ作業台から作りますか!


 スキルを使って壁板材を作る。寸法設定で作業台にちょうと良いサイズにして――。

 次にスキルを使わず土台部分を釘打ちしていく。最後にさっき作った壁板材を天板にして、釘打ちする。

 よし、完成!


「もうすぐ夜か。焚火に火を点けて作業を続けよう」

『オン』


 作業台に丸太を乗せ、スキルを使って木材を切り出していく。

 クエスト指示にあった、横幅120センチ、奥行き45センチ、厚さ3センチをスキルセットする。

 まずは丸太を120センチに切り、今度はワオールに支えて貰って縦に割るように切って行く。

 うん、やっぱり魔導ノコ欲しい。

 そして思わずポチってしまう俺。


「よぉし、いっきに行くぞ!」


 ワオールに丸太を支えて貰いつつ縦に切り終えると、そこには指定した通りの木材六枚が。

 なんていうか、切り終える瞬間までは丸太なんだと。終わった瞬間に見た目が木材になるんだよな。

 何度やっても、この瞬間は違和感が半端ない。

 まぁゲームだし、全て現実と同じって訳にはいかないんだろう。

 時間的な意味でも。

 こうでもしないと、需要と供給が追い付かないもんな。

 細かいことは気にすんなの精神で。

 郷に入れば郷に従え、だ。


 サクサクっと合計百二十枚が完成。

 次は棚受け作成だ。

 余分な二十枚を魔導挽き廻しのこぎりを使ってL字にカットしていく。

 全部の木材を消費して百六十本できた。

 板材一枚に付き三本の棚受けが指定されていたので、これで足りるな。


 空はすっかり陽も暮れ夜になってしまった。

 店に行くとキョウとウドマーの二人は居たが、それぞれの家族は就寝中とのこと。

 壁に打ち付けるのは朝になってからにしよう。

 

【マッキー:おは】


 お、駒田だ。


【マッキー:ポーション売ってくれないか?】

【クー:あ、忙しくて全然作ってなかった。少し時間くれ】

【マッキー:忙しいなら後ででもいいぞ】

【クー:素材はあるからすぐ作れる】

【クー:そうそう。武具店完成してNPC増えたぞ】

【マッキー:マジか! おめでとう】


 ポーション作りの準備をしながら、合間にチャット打ち。面倒くさい。


【クー:ポーション作るからチャット止まるぞ】

【マッキー:ボイスチャットもあるぜ? ただ課金しなきゃ出来ないけど】

【クー:しない】

【マッキー:だよな】


 にゃんごから空き瓶を買って、ポーション四十本作成。

 

【マッキー:一本24Gでどうだ? 使う分は20G、売る分は28Gって計算面倒だからさ】

【クー:お前が良いならそれでいいよ】


 そんなわけで960Gが届く。

 毎度あり♪


 さ、夜中に植林したヤツが立派に成長しているころだ。

 伐採してそれから杖を作ろう。


 木工レベル……2。

 心配だから不要な杖を作りまくってレベル上げでもしようかな。

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