032
ティト君に教わった通り、クエストの内容確認をしておく。
キョウは棚と言ったが、そんなのすぐに作れるだろ? それでスキルのレベル上げって……。
なーんて思ったがそんなことは無かった。
「店舗の壁一面に棚をつけるのか」
依頼された棚は壁に取り付けるタイプで、一枚の板を下から棚受けで支える簡単なタイプだった。
これを五十枚。もちろんL字の棚受けもクエストに含まれていた。
「こういう作業するなら、作業台が欲しいよな。いっそそれから作るか」
『ワオ』
作業台作りの為ににゃんごの所で釘を三セット購入。
「にゃんご、挽き廻しのことか売ってないのか?」
「ニャー。お客ニャん、良かったニャねー。昨日、ちょうど入荷したニャよー」
「本当か!?」
にゃんごの販売物一覧を見ると、確かに挽き廻しのこぎりがあった。
価格は2500G。
あれ? いきなり高額になってるぞ!
「ニャー。お客ニャん、実はもっといいノコギリあるニャが」
「え? もっといい?」
「ニャー。裏ルートアイテムニャよ。それを買うためには、異世界のお金が必要ニャが……」
は? い、異世界?
「スマホにある異次元ショップを見てみるニャよ」
「異次元ショップ……なんだ、その怪しいお店は」
だが開いてみて納得。ただの課金アイテムだった。
ここで謎の単語を見つける。
「にゃんご、この『魔導挽き廻しのこぎり』ってなんだ?」
「それはニャね、MPを消費することで使える、挽き廻しのこぎりニャ。普通は手動でギコギコやるニャよね?」
「あぁ……なんかわかった気がする。MP使って自動で動くノコってことだよな?」
「そうニャ。説明を見るニャよ」
ふむふむ、なるほどねー。
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魔導挽き廻しのこぎり:道具
効果:10秒でMPを1消費する、自動挽き廻しのこぎり
切れ味が悪くなれば、刃の交換だけで済む
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で、替刃もちゃんと売られてあった。
本体価格は千円。替刃は百円。
欲しい。
課金は別にしてもいいと思っている。まぁ大金は使えないが。
ただ問題は、どうやって決済するのかだ。
「一度朝飯ログアウトして、ついでに公式サイト見てくるか」
『ワホ?』
「ワオール、ごめんな。俺ご飯食べてくるよ。その後で棚作り開始だ」
『ワオンッ』
尻尾をふりふり。ワオールって俺が居ない間、どうしてるんだろう。
犬座りをして、ここで待ってるねという顔で俺を見送ろうとする。
やっぱカッコ可愛い。
「もふりたい」
『オォン』
ダメ――首を振るワオールは、きっとそう言っているのだろう。
ちょっと寂しいままログアウト。
『お疲れさまでした』
ロビーの声にそう言われ、ハタと思いつく。
「あのー、課金したいんだけど、決済方法ってどんなのがあるんだ?」
『いくつか方法がございます。クレジット払い、電子マネー、ネットバンキング、通信端末決済、となっております』
「クレカとネットバンキングは無理だな。電子マネーはコンビニなんかに買いに行かなきゃならないし……」
となると残るは通信端末による決済だな。
後払いになるから気をつけなきゃならないが……。
「限度額設定とか出来るのか?」
『はい。一か月の課金金額を事前に設定し、その金額から差し引いていく形での課金も可能でございます』
「お、それいいな。ご飯食べる前に決済設定だけしておこう」
『ありがとうございます。必要設定は公式サイトの【ショップ利用について】のページより行えます』
「ありがとう」
お礼を言って完全ログアウトをすると、さっそく公式サイトから決算登録をした。
その後、遅めの朝ご飯。まぁ軽めにしておこう。
食べている間にタブレットへ通信会社からメールが届き、必要手続きを行えば――。
「よし、これで決済設定完了っと。とりあえず上限を一万円に設定しておこう」
全部を済ませ再ログイン!
「お待たせワオール」
『ワオンワオンッ』
撫でさせてはくれても、もふらせてはくれないワオール。
ひとしきり撫でまわした後、異次元ショップから魔導挽き廻しのこぎりを購入。
ついでに魔導サンダー千円もポチっておこう。角があると、息子のガチャ君が怪我をするかもしれないし。
ポチったあと、メッセージが届いた。
【お買い上げまことにありがとうございます】
そんなメッセージと共に、魔導挽き廻しのこぎりとサンダーが届いていた。
残金八千円。節約しなきゃな。
魔導ノコも欲しかったが、こっちは千五百円とちょっとお値段が高かったので見送り。
さて、じゃあ作業台から作りますか!
スキルを使って壁板材を作る。寸法設定で作業台にちょうと良いサイズにして――。
次にスキルを使わず土台部分を釘打ちしていく。最後にさっき作った壁板材を天板にして、釘打ちする。
よし、完成!
「もうすぐ夜か。焚火に火を点けて作業を続けよう」
『オン』
作業台に丸太を乗せ、スキルを使って木材を切り出していく。
クエスト指示にあった、横幅120センチ、奥行き45センチ、厚さ3センチをスキルセットする。
まずは丸太を120センチに切り、今度はワオールに支えて貰って縦に割るように切って行く。
うん、やっぱり魔導ノコ欲しい。
そして思わずポチってしまう俺。
「よぉし、いっきに行くぞ!」
ワオールに丸太を支えて貰いつつ縦に切り終えると、そこには指定した通りの木材六枚が。
なんていうか、切り終える瞬間までは丸太なんだと。終わった瞬間に見た目が木材になるんだよな。
何度やっても、この瞬間は違和感が半端ない。
まぁゲームだし、全て現実と同じって訳にはいかないんだろう。
時間的な意味でも。
こうでもしないと、需要と供給が追い付かないもんな。
細かいことは気にすんなの精神で。
郷に入れば郷に従え、だ。
サクサクっと合計百二十枚が完成。
次は棚受け作成だ。
余分な二十枚を魔導挽き廻しのこぎりを使ってL字にカットしていく。
全部の木材を消費して百六十本できた。
板材一枚に付き三本の棚受けが指定されていたので、これで足りるな。
空はすっかり陽も暮れ夜になってしまった。
店に行くとキョウとウドマーの二人は居たが、それぞれの家族は就寝中とのこと。
壁に打ち付けるのは朝になってからにしよう。
【マッキー:おは】
お、駒田だ。
【マッキー:ポーション売ってくれないか?】
【クー:あ、忙しくて全然作ってなかった。少し時間くれ】
【マッキー:忙しいなら後ででもいいぞ】
【クー:素材はあるからすぐ作れる】
【クー:そうそう。武具店完成してNPC増えたぞ】
【マッキー:マジか! おめでとう】
ポーション作りの準備をしながら、合間にチャット打ち。面倒くさい。
【クー:ポーション作るからチャット止まるぞ】
【マッキー:ボイスチャットもあるぜ? ただ課金しなきゃ出来ないけど】
【クー:しない】
【マッキー:だよな】
にゃんごから空き瓶を買って、ポーション四十本作成。
【マッキー:一本24Gでどうだ? 使う分は20G、売る分は28Gって計算面倒だからさ】
【クー:お前が良いならそれでいいよ】
そんなわけで960Gが届く。
毎度あり♪
さ、夜中に植林したヤツが立派に成長しているころだ。
伐採してそれから杖を作ろう。
木工レベル……2。
心配だから不要な杖を作りまくってレベル上げでもしようかな。




