030
丘までやって来た俺とワオール。
少し高い場所に立つと、周辺がどうなっているのか少しわかった。
丘の向こうはまだ暫く草原が続くが、遠くには森が見える。
東から続く川は、その森に向かって伸びていた。
振り返って隠しダンジョン側を見れば、遠くにケヤキ林がある。更にその奥にここと同じような丘が見えるな。
だけど町とか村は全然見えない。
ひとつひとつがかなり遠いんだろうな。
丘といっても草原より家一軒分高い程度の小さな丘。
それを下ってすぐ、ケヤキではない木が生えていた。
これも切って帰ろう。
伐採後のアイテムボックスには『樫の丸太』と『樫の苗木』が。
手あたり次第伐採して行くか。
ただこれ以上遠くには行けない。帰りの時間が掛かってしまうしな。
「リリーチェさんの魔法、便利だったよな」
『ウォン』
「あぁいう便利スキルもいいよな」
そう思ってスマホでスキルを見てみる。
『テレポート』を取るために必要なポイントが、250……。
今っていくつポイントがあるんだろう。そう思ってステータスを確認してみた。
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名前:クー
HP:175→350/350 MP:50/50
筋力:17→19 耐久:4→6 魔力:1
【獲得スキル】
『夜目:LV3→4』『鷹の目:LV1』『逃走:LV2』
『採取:LV2→3』『掘削:LV2→3』『採掘:LV1→2』『伐採:LV3→4』
『調薬:LV2』『加工:LV1』『製錬:LV1』『錬成:LV1』
『分解:LV1』『錬金:LV1→2』『成形:LV2→3』『解体:LV1→2』
『木工:LV1』『大工:LV3→4』『栽培:LV1』『農耕:LV1』
『石工:LV1』『釣り:LV1』『鑑定:LV2』『獣魔召喚:LV1』
『植林:LV1→2』『料理:LV1』『彫金:LV1』
SP:558
満腹■■■■■■□□□□空腹
【確認完了?】
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あ、スキル取れるじゃん。
じゃあ取ってしまおうかな。
でも――便利だからってんで、後先考えず取るのもなぁ。
どうせなら攻撃系スキルを取れば、ボス戦の役にも立つんじゃないか。
今のままだと、ただ剣で斬りつけるだけしか出来ないし。
そう思って未獲得スキル欄を見てみたが、じゃあどれを取ればいいのかわからない。
何を取れば戦闘で二人の役に立てるのか。
モグラキングとの戦い……それまでの道中での戦い……初めてのパーティーでの戦闘を思い出す。
二人はスキルのレベルを上げるためにも、積極的に使っていた。
その結果、MPが枯渇するみたいなことを言っていたな。
「移動中はMPが回復しないのだろうか?」
しかし確かめることができない。俺はスキルでMPが減ることはないから。
あ、ワオールが居たな。
「ワオール、教えて欲しいんだけど」
『ワホ』
この近辺にはミニマムボア――のミニマムでないボアが出る。
その名も『ミニマムママボア』『ミニマムパパボア』。
なんだよそれ……。
大きさはただのミニマムよりは大きく、たぶんリアル猪と同等だろう。
ママの頬には赤い丸があり、睫毛まである。
パパは――頬に十字の傷があって、なんともいかつい。
そんな猪を圧倒して、ワオールが尻尾を振る。
「スキルを使うとMPが減るだろ?」
『ワン』
「MPって移動中は回復しないのか?」
そう尋ねると、ワオールは顔を左右に振った。
じゃあ回復するってこと?
だがワオールは手で、「ほんの少し」というようなジェスチャーをする。
「じゃあ、止まっているときの方が回復量が多いのか?」
ワオールが頷く。
それで固定狩り云々言ってたのか。
でもそれじゃあ、戦闘中もほんの少ししか回復しないってことになるよな。
MPが切れ、ヒールが出来なくなったら俺たちの負け。
モグラキングとの戦いはそんなだった。
そしてリリーチェさんのMPは、案外早く切れた。
俺のMPは攻撃スキルが無いので、戦闘中減ることは無い。
だったら俺もヒールを取るか?
だけどヒールの説明には、レベルに応じた固定回復量と魔力に応じた回復量の合計だと書いてある。
今取っても明日までにスキルレベルをいくつ上げられるか……。
そして俺の魔力は1だ。
ヒールを何回使って魔力が上がるだろうか。
「うぅん。戦闘スキル取るのって、難しいなぁ」
一覧にあるスキルを全部見ていく。
そして俺は、ある二つのスキルに注目した。
これなら俺があれこれ悩まずに、二人の役に立てるかもしれない。
無駄に持ったままのMPを彼らの為に使える。
いや、普段の狩りでもワオールに。
ただスキルポイントが足りない。
ひとつは取れる。でももうひとつが取れない。
二つが揃わないと俺の計画通りに行かないからな。
スマホを見ると、リアル時間は間もなく二時。
「ワオール! 俺も戦うぞっ」
『ワオンッ』
嬉しそうに尻尾を振るワオールと肩を並べ、俺はママを襲うのだった。
夕方になり、俺たちは拠点へと引き返した。
樫の苗木はケヤキの植林地の隣に植えておこう。
頑張った甲斐あって、スキルポイントは150ほど増えた。
丘の辺りの敵は強く、俺ひとりだと倒すのに結構時間掛かっていたのは痛いな。
「あ、でもこの辺りの敵なら、二発で倒せるようにもなったし。効率上がるんじゃなかな?」
『クゥーン』
ワオールが首を振る。
え? 効率、上がらないのか?
苗木の植林をしながらネズミや兎をばったばったと斬りつけ倒していく。
ほら。こんなにあっさり倒せるじゃん。
攻撃回数が少ないと、それだけ一匹あたりを倒す時間だって短いじゃん。
だけどワオールは首を振る。
何故か――。
「ニャー。弱い敵を倒しても、スキルの神様はポイントをくれないニャよ」
暗くなって、そろそろ眠気が差してきた頃、アイテム整理をするためににゃんごの所へ。
そこでワオールとの一件を話すと、返って来たにゃんごの言葉がこうだ。
スキルの神様……そんなの居るのかよ。
レベルの存在しないこのゲームで、どの敵が強くてどの敵が弱いのか、どうやって判断すればいいんだよ!
「じゃあワオール。明日はスキルポイント稼ぎにいい敵を教えてくれよな?」
『ワホッ』
「じゃあおやすみ」
『ワオォォォーン』




