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003

 見渡す限り続く平原。

 そこにぽつんと佇む三毛猫にゃんご。

 尚、にゃんごは雄というか、男だということで、凄く希少な三毛猫になる。


 この平原には彼と、俺と、ワオール、にゃんごの荷物であろう木箱、それと井戸があるだけだ。

 NPCにゃんごが居た、つまり俺たちが降り立った場所の周辺だけは草の無いむき出しの土になっている。

 ここにスコップを突き刺し、土をすくって――あれ?


「すくった土がスコップから消えた?」

「アイテムボックスに送られたニャよ」

「え、土ってアイテムなのか!?」


 スマホを確認すると、確かに土がリストにあった。

 おぉ!

 じゃあ先に土を掘りまくって、あとから一か所に盛り土すれば壁造りも楽になるな。


 どんどん掘ーっれ。

 どんどん掘ーっれ。


「ワオール、手が止まっているぞ」

『ワフ?』

「なんだ、土の掘り方を知らないのか」

「そりゃあ獣魔ですニャ。知らなくて当たり前ニャよ」


 そうか。ワオールはカッコ可愛いが、モンスター扱いなんだな。

 俺が一から教えてやらなきゃダメなんだ。


「ワオール、よく見てろ。スコップはこう握るんだ。そして地面にこう突き刺す。土が硬い時にはな、ここを足で踏んで――」

『ワオォ』


 お、ワオールもスコップの握り方がわかったようだ。

 猫のように爪を出し入れ出来ない分、ちょっと持ちにくそうではあるけれど。

 それから俺のやるのと同じように、土をすくっていく。

 すると、ワオールのスコップからも土が消えた。


「ワオールのアイテムはどこに行くんだろう?」

「そんなの、お客ニャん所に決まってるニャ」


 そうなのか?

 スマホ画面を見ていると、俺が何もしていないのに土が増えていっている。


 獣魔召喚って素晴らしい!


 ワオールと土を掘り進めること数十分。

 土がむき出しだった部分だけが、周りから40センチほど低くなってしまった。

 土の数は338個。

 掘りながら確認した限りだと、ひと掘り20センチ×20センチ、深さ20センチになるようだ。

 

 この土を低くなった所の外周にまとめて置く。

 ……あ、うん。土の上に土を置いても、山型にずさーってなるだけだよな。

 壁にしなきゃモンスターの侵入は防げないんだし……固めるためには水が――あ、井戸あるじゃん。


「にゃんご、水貰っていい?」

「いいニャ。というか井戸は共同ニャ。自由に使ってもいいニャよ。ただアイテム化するためには、空き瓶が必要にゃ。買うニャか?」


 にゃんごの目がキラキラ輝く。

 なので買いました。

 ただこの空き瓶、消耗品と書かれているのが気になる。


 試しに井戸の水を入れて、その水を土に撒くと――いや、消えない?

 まぁいいや。

 だったら次は土を捏ねて――こ、捏ねて――。


「何しているニャか?」

「いや、土に水を混ぜて、捏ねてから形を整えようと思ってさ。積み重ねやすくね」

「だったら『錬金』スキルと『成形』スキルがあれば出来るニャけど?」

「持ってる」


 まずは水と土をアイテムボックス内にある状態を作る。

 そして錬金スキルで二つを混ぜ、粘土という新しいアイテムに作り直す。

 水加減で粘土じゃない物にもなるので注意が必要だ。

 粘土が出来たら、今度は成形スキルで形を整える。四角くすれば積み上げやすくもなる。


「という訳ニャ。わかったかニャん?」

「うん」

「土ひとつに付き、水の入った瓶もひとつで粘土ニャ。水の量を調整することで、別の物にも錬金できるニャよ」


 空き瓶は5Gと安く、ひとまず50本購入。

 だがここでようやく、空き瓶が消耗品たる所以がわかった。


 スマホのスキル一覧から錬金を選びタップすると、左右に二つのホログラムディスプレイが現れる。

 左側には錬金するために素材を置くための枠が二つあり、右側には完成予定アイテムが出るようだ。

 水と土を枠に置き、錬金スタートのボタンを押す。

 錬金した途端、水入り瓶が消え、空き瓶が残らなかった。


「瓶が消えたぁ〜」

「そりゃあ消えるニャよ。消耗品ニャし」


 リアルに水を振りかけると残る。でもそうすると粘土にはならない。

 汚いっ。ゲームって汚い!


 だがそれが仕様だというのなら仕方ない。


 今度は出来上がった粘土を四角い煉瓦風に成形する。

 スキルをタップすると、成形可能なアイテムの一覧が出てきた。

 といっても、あるのは粘土と土の二つだけ。

 あれ? 土も成形できるんじゃないか。


 じゃあ四角く形を整え、出来上がった物をクリックドラッグで地面に置く。

 どしゃって……どしゃって崩れた!

 今度は視線を低くして、慎重に置く。そして次も同じように――よし、置けた!

 

「ワオール、強度はどうだ? 少し叩いてみてくれ」

『ワホ』


 ワオールのかる〜いパンチは、土ブロックを見事に打ち砕いた。

 あぁ、粘土じゃない分、強度が落ちるのか。

 自分の拳と壊れた土とを見比べ、それから耳と尾を垂らしたワオールが俺を見る。


「いいんだワオール。強度を確認するのは大事だからな」

「そうニャ。じゃんじゃん空き瓶を買うニャよ」

「うぅ、じゃんじゃんと言われてもなぁ。手持ちのお金は2745Gなんだ。残り549本しか買えないし」


 頭の中でいろいろ計算をしていく。

 掘ったのは一辺が260センチだ。壁の高さは150センチ以上必要になる。

 ブロックは横20センチ、高さ40センチだから……高さだけでも4つあればいいのか。

 掘った部分の外側に壁を作るなら、少し長さも余分に。通路用に隙間も考えて……粘土230個もあれば足りるのか。

 じゃあ残り空き瓶は180個。土は今あるので十分だな。


 900Gを支払って空き瓶を追加。

 粘土ブロックを足元に置いて――。


「ワオール。これを積み上げていってくれないか?」

『ワフ』

「俺はこっちから積み上げていくから、そっちは頼んだぞ」

『オォォ』


 二足歩行で手も使える獣魔は、本当に物作りに適した奴だ。

 獣魔召喚なんて、最初聞いたときは「ケッ、戦闘スキルかよ」と思ったけど、なんだ、物作り最適スキルだったじゃないか。

 却下しなくてよかった。

 カッコ可愛いワオールは、癒しにもなるしな。


 それにしても、粘土ブロックって意外と重いな。

 積み上げただけで、強度は大丈夫だろうか。

 試しに自分が積み上げたブロック塀を叩いてみたが――うん、手が痛い。

 何故かブロック塀にゲージのようなものが現れた。


「あまり叩くと耐久度が減って、壊れるニャよ」

「このゲージみたいなもの?」

「ニャー。ブロックひとつでHP50と思ってくれたらいいニャ」


 ブロックにHPが……じゃあブロックのHPがゼロになったら死ぬ――いや壊れるのか。

 絶対的な安全が確保された訳ではない、と。

 まぁ頑丈なものは時間を掛けて作るし、今夜一晩持てばそれでいい。

 

 そうしてなんとか無事、四方を囲むブロック塀は完成した。


「うおおおぉぉぉぉぉっ! 完成したぞおおおぉぉぉぉぉっ!!」

『ワオオオォォォォーンッ』

「うぉおおぉぉぉぉぉっ!」

『ワオオオォォォォーンッ』

「五月蠅いニャー、もう」



 完成したのは西の空がオレンジ色に染まり、まもなく夜になろうという時刻だ。


「なんとかギリギリ完成したか。ワオールがいてくれたおかげだ」


 ワオールは何も言わず、明後日の方を見ている。

 だけど尻尾を振っているあたり、褒めれば喜んでくれるようだ。

 カッコ可愛いな。


「にゃんご、セメントとかは無いのか? あと石切り場とか」

「セメントは錬金で作れるニャね。材料は石灰石と粘土、けい石ニャよ。石切り場はこの近くにないニャね」

「じゃあ粘土ブロックを素焼きにでもして煉瓦にするか」

「煉瓦をセメントで固めて壁にするニャか? それなら丸太を立てて壁にしたほうがいいニャよ」

「HPが高いのか?」

「うんニャ。どっちも永久的な壁になるニャが、丸太の壁なら後から広げるときも、丸太を引っこ抜けばいいだけニャ」


 あぁ、そうか。

 煉瓦で壁を作ってしまうと。壁を広げる際には破壊しなきゃならなくなる。

 先々のことを考えるとコストパフォーマンスが最悪なのか。


「それにセメントの材料はどうするニャ? 鉱山もこの近くには無いニャし」

「掘ったら出てこないか?」


 一昔前に大流行した、某クラフトゲームみたいに。

 俺の問いににゃんごは渋い顔をして「あるかもしれニャいが」と口を濁す。

 可能性があるなら俺は掘る!


 けどまぁ壁は丸太で作ろう。

 壁が終わったら家造りだ。ここを拠点にするなら、まずは家を造らなきゃな。


「よし、ワオール。夜が明けたらあっち……だったかな? とにかく伐採に行くぞ!」

『ワオーンッ』


 こうしてログイン最初の夜が訪れる。

ステータスに関して。

キャラクター作成時にステータスの振り分け等がありません。

単純に、全プレイヤーステータスオール1からスタートというシステムです。

重い物を持ち運びしたり重い武器で攻撃を繰り返すことで筋力があがります。

魔力は魔法を使い続けることで上がっていきます。

ステータスが上がれば上がるほど、次に上がるまでの行動回数が増えていく仕組みです。

時間と根気があればオールステ上昇も可能ですが・・・当然一極型より成長が遅くなってしまいます。


またキャラクターだけでなく、モンスターにもレベルはありません。

しかしステータスなどで強さの基準があるため、戦いながら相手の強さを確認するという行動が

必要になってきます。

やみくもにマップを進んでいくと、痛い目を見る。そんなゲームとなっております。

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