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【ミャーニーからモグラキングの討伐クエストが発注されました】

【受諾しますか?  YES / NO 】


 気づかなかった。

 いつの間にこんな物が?


 スマホ画面にある「?」マークのついたアイコンをタップすると、こんな文章が表示されていた。


「クーさんがミャーニーに話した瞬間、フラグが立ったんだと思います」

「フラグ?」

「クエストが発生する条件みたいなものね。で、同時に私とお兄ぃが引っ張っていったもんだがら、メッセージウィンドウ閉じちゃったのね」

「勝手に閉じるものなのか?」


 二人は頷き、戦闘中にメッセージなんか出てきたら邪魔でしょ? と言う。

 まぁそうか。

 だから足が地面から離れる動作――つまり移動行為なんだが、その瞬間に可視化ウィンドウの類は全部消えるらしい。

 唯一、地図機能だけは除外されるが、これも戦闘行為に入ると自動で消えるシステムになっている。


「昔は任意で表示非表示してたみたい」

「でもそうすると戦闘中も表示されちゃって、ウィンドウが邪魔で視界が悪く、そのせいで死ぬ人も出て……」


 し、死ぬ!?

 あ、いや、ゲームでのことか。

 でもウィンドウが邪魔で死ぬなんて聞くと、ちょっとぞっとするな。


「お兄さんはクエストどうする?」

「僕たちは受諾したんですが、画面が消えないってことは……」

「三人揃わないとダメみたい」

「え、そうなのか? うん、受けるよ。どうせ三人で一番取るんだからさ」


 スマホ画面にあるYESをタップすると【クエスト「モグラキングを倒せ」を受諾しました】と表示が切り替わる。

 更に文字が変わり【モグラキングを倒せ】だけになった。


「お兄さん、クエスト内容はクエスト名をタップすれば出るからね」

「報酬とかも書いてますから。今後、こんな風にクエストが発生してくると思います。クエストのクリア条件なんか忘れたときには、ここで確認できますから」

「おぉ。なんかいろいろありがとうな」


 それから俺たちは、隠しダンジョンでの清算とやらをした。

 ドロップアイテムはワオールを除く俺たち三人のアイテムボックスに、順番に送られるシステムになっていた。

 清算のやり方は二つ。


 全員分の収集品をひとりに集め、NPCに売却。そのお金をみんなに分配。

 素材やレアアイテムなんかは欲しい人が買い取って、お金は全員が均等になるよう計算して分配。


 特に清算はせず、収集品は各自で処分。

 素材やレアアイテムは同じように欲しい人が。


「うぅん。レアアイテム、なかったわねぇ」

「そりゃあ簡単に手に入ったら、レアとは言わないよ」

「そうだけどぉ」

「素材はどうする?」


 そう尋ねると俺を見る二人。

 ゲットできたのはモグラの皮だの爪。そして……泥……。


「泥はお兄さんにあげる。お金はいらないから、お家造りに使って」

「うん、そうだね。お店もそろそろ完成みたいですし、そしたら新しい装備を買えるようにもなるね」


 それまでに自分たちはもうワンランク、ステータスやスキルレベルを上げたいと言う。

 他の素材は俺が買い取ることにした。あとでフォッカさんに売るためだ。

 にゃんごに価格を聞き、それより2G高く買い取って三等分する。


「ありがとうございます」

「ありがとう」


 二人はスキルのレベル上げも兼ね、太陽の沈んだ狩場へと向かった。

 この一晩でどのくらい上げられるかわからないが、1でも上がったらラッキーってことで。


 俺は攻撃スキルもないし、レベル上げする必要もない。

 だから――。


「こいつの仕上げに取り掛かろう」

『ワフ』


 そう。

 武器防具屋を完成させ、外側から二人が強くなれる手助けをする為に。






 土壁を塗りたくる作業が終わり、あとは壁の一部を木材で装飾していく。

 耐震とか強度を増すためなんだろうけど、これがカッコよく見えるんだよな。

 それらの作業がすべて終わり、あとは屋根を塗るだけ……なんだが。


「顔料、無いんだよなぁ」

「それなら――」


 ミャーニーがやってきて何かを言おうとしたその時。


「うわぁー、完成してる!」

「本当だっ」

「お、お帰りぃ。で、成果は?」

「「えへへ」」


 狩りを終え戻って来た二人が笑顔で報告してくれる。

 ティト君は筋力と耐久を1ずつ。それと防御力アップ系スキルの『ディフェンスブースター』というスキルがレベル2に上がった。

 リリーチェさんは魔力が1、スキルは『ヒール』と『ファイア』のレベルが上がった――嬉しそうにそう話す。


 スキルレベルが上がれば、その効果ももちろん上がる。

 それを嬉しそうに話す二人を見ていると、俺も戦闘系のスキルが欲しくなったりもした。


「えへへ。でもお兄さんもレベルアップしたよね」

「遂に最初の一軒が出来たんだもんね」

「もう匠だね」

「え、た、匠!?」


 そんなこと言われたら照れるじゃないかぁ。

 照れ隠しにワオールをもふ……あ、ダメですか。


「こほんっ。いいですかミャ?」

「あ、ミャーニー。さっき言いかけてたことって?」

「はいですミャ。住居や店舗といった建築物は、着色作業は完成後でも出来ますミャ」


 つまり、この時点で完成させることも出来る、と。

 特に屋根や外壁の色塗りであれば、入居者が生活を続けながら出来る作業なので大丈夫とのこと。

 室内の壁や床板だと、一度家具などをどかさなきゃならない。

 なんでこういう微妙なところだけ、リアルに作ってんだろうなぁ。

 

「じゃあじゃあ、遂に武器屋さんが出来るのね!」

「ここって防具屋さんも兼ねてるんですよね?」

「ニャー。だから大きな店舗なんニャよ」


 にゃんごもやって来て、全員で完成を喜び合う。

 これからやってくるNPCはどんな人が来るのか、そんな話題で盛り上がった。


「私、にゃんごやミャーニーみたいな猫人族がいいなぁ」 

「ニャー。あっしら猫人族は、重たい物を取り扱うのは苦手ニャから、別の種族が来るニャよ」


 重い……あんだけの商品売っておきながら、あれが重くないと言い張るのだろうか。


「武具専門の商人は、力自慢の種族もいますミャよ。運が良ければ鍛冶スキル持ちの、トビト(・・・)族やドワーフ族が来てくれるかもしれないミャ」

「とびとぞく?」

「トビト族に来て欲しいのに、来てくれなかったときは?」


 リリーチェさんの質問に、にゃんごは「門を閉めればいいニャ」と話す。

 なんでも新しくやってくるNPCは、まず門をノックするようだ。ミャーニーがそうだったように。

 そして招き入れる前に門を閉めれば、NPCは帰って行き、次のNPCがやってくる……と。


「だけど何度も何度も商人を追い返していると、悪いうわさがたって誰も来てくれなくなるニャから気をつけるようにニャ」

「ふぅん。じゃあ一回のチェンジぐらいならいいのね」


 そうニャねーっと、間延びした声でにゃんごが答える。


「それよりお客ニャん。まだ完成ボタン押してないニャよ」

「着色以外すべてが終わっていれば、作業画面の右下に【完了】ボタンが出ていますミャ。それを押せば、人が住める状況になりますミャよ」


 おっと。どんなNPCがって話に夢中になってて、作業を終わらせてなかったな。

 スマホの大工スキルから、建設中画面を出して――【完了】をポチリ。


「トビト族って、きっとふわもこよね」

「トビト族が来るといいね」


 二人が楽しそうにそう話す。


『クゥーン』


 そんな二人の会話を聞いてワオールが悲しげな目で俺を見る。

 もふもふの座を奪われるのかと、心配でもしているんだろうか。


「大丈夫だワオール。お前が一番カッコ可愛いからな」

『ワホッ』


 尻尾をぶんぶん振り回し、だけどもふらせてはくれない微妙なツンデレさんだ。


『ウォ?』


 その時ワオールの耳がピクリと動く。


「どうやら来たみたいニャよ」

「来ましたミャー」

「え、もう!?」

「早くない!?」


 双子は驚くが、ミャーニーの前例もあって俺はそれほど驚かなかった。

 たぶん建物が完成したら、その建物に該当するNPCが即行でやって来るのだろう。

 猫人族の二人も加わって、全員で門へと向かった。

 時刻はまだ夜。というか朝に近づいてはいるが、空はまだ薄暗い。

 閉じられた門をノックする音が、どことなくミャーニーの時と比べると力強く聞こえる。


「開けるニャよ」

「迎え入れてくださいミャ」


 猫人族に促され、そして双子が俺を見て頷く。


「い、今開けますね」


 そう言って扉を引くと、そこには純白の毛――があった。


「はじめましてぴょん。わたくし、兎人族のキョウと申しますぴょん」


 純白の短毛に包まれ、頭にあるのは長い耳。目は赤く、その鼻は小刻みにひくひく動いていた。

 どうみても兎。

 ただし――。


「いやあぁぁぁっ、こんなマッチョな兎なんて、私認めないもんーっ」


 そう叫んでリリーチェさんが門を……。


「あぁーリリー!」

「ちょ、閉めちゃダメ。閉めちゃダメーッ!」


 180センチ超えの俺よりまだ長身の、筋骨逞し過ぎるムキムキな兎――兎人族だった。

 もちろん男……だ。

*前話のラスト、若干文章を変えております。ストーリーに変更はありません。



濃いキャラだしたったw

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