027
*ラスト付近、ボス再戦を誓うシーンで、ワオールに雑魚を任せる下りを改稿しました。
結論から言うと、俺たちは惨敗だった。
モグラキングの一撃で、俺たちのHPは三割以上消し飛んだのだ。
こうなるとリリーチェさんはヒールに専念しなきゃならない。
ヒールの為のMPが切れた時が俺たちの死ぬとき。
その時は来た。だけどその前にワオールの雑魚一掃も終わっていて――。
俺たちを心配するように、そして戦いたいという本能とでも言うように、ワオールは吠えっぱなしだった。
ティト君とリリーチェさんが俺を見、そして俺はワオールを呼んだ。
「ワオールッ、頼む!」
『ワオオォォォンッ』
ワオールがモグラキングの相手をし始めてすぐ、ティト君を執拗に狙っていたモグラキングがワオールにターゲットを変更。
その場を離れる俺たち。
ワオールは余裕な様子でモグラキングと対峙していた。
だけど俺たちが通路まで避難すると、ワオールが慌ててこっちに走ってくる。
『ウオオォン』
「あれ? ワオールこっちに来ちゃったぞ」
「戦闘を離脱するんですかね?」
「あ、モグラの王様が元の位置に戻っちゃった。リセットするんだ」
リセット?
よくわからないが、とにかく助かった。
『オォン?』
「ありがとうな、ワオール。助かったよ」
『オォンッ』
尻尾をふりふり。
撫でてやると、ワオールは嬉しそうに頭を摺り寄せてきた。
あのままワオールひとりで倒せたんだろうなぁ。
うん、ちょっと勿体ない。
だけど二人が帰宅モードなので、俺たちはそれに従うことにした。
隠しダンジョンを出ると、西の空がオレンジ色に輝く頃。
スマホの時計は『4:15』と『21:15』と表示されていた。
「駆け足で戻っても、向こうに到着間近で暗くなりそうだな」
「……あ、大丈夫。私、テレポートのスキル持ってるから」
「テレポート?」
「うん。一度行った場所なら、スキルで瞬間移動できるの。パーティーメンバーも一緒に飛べるから、あっという間だよ」
へぇ、便利だなぁ。
移動時間短縮できるのは羨ましい。
こうしてみると、あれもこれもスキルが欲しくなってくるなぁ。
リリーチェさんのスキルであっという間に戻って来た俺たち。
後半はアイテムボックスを確認する暇もなく、戦闘に次ぐ戦闘だったけど、どんなものを拾っているだろうか。
俺はわくわく、でも二人は少し元気がない?
疲れたんだろうか。
「ニャー、お疲れ様ニャねー。成果はどうだったかニャ?」
「やぁにゃんご。地下二階があったけど、先へは進めなかったよ」
「ニャー。やっぱり強かったかニャ?」
「みたいだ。俺は岩を砕いていたから、戦ってない」
その言葉を聞いてにゃんごが呆れ顔で溜息を吐いた。
ミャーニーはくすくすと笑っている。
「楽しそうですミャー」
「あはは。でもモグラキングには勝てなかったよ――」
「「あぁぁぁーダメェェッ」」
え?
ミャーニーにモグラキングの話をしようとした途端、元気のなかった二人が突然叫んだ。
そして俺の右にティト君、左にリリーチェさんがやって来た。二人が俺の腕をぐいっと掴み、そのまま引きずっていく。
『ウオォォン』
ワオールの物悲しそうな声が聞こえた。
「お兄さんダメダメ!」
「ボスの情報はたとえNPCであっても、安易に教えちゃダメなの」
「え、でも――ダンジョンボスの情報は、ギルドで買って貰えるって……」
ついさっきその話を二人から聞いたばかりだけど。
そもそもミャーニーはギルドのNPCじゃない。土地相談屋さんだ。
でもダメだという。
「私たちね、このゲームを始めるかどうか、悩んでいたの」
「情報が少なかったですからね。でもそれが売りだったようなんです」
「実際にプレイして、自分たちの目で耳で、そして足でゲームの中の世界を知って欲しい。そういう意図だったみたい」
だがその意図はユーザーには受け入れて貰えず、登録用チケットの事前予約がものすごーっく少なかったようだ。
余談だが、予約が少なかったことに焦った運営が、あのキャラクター作成現場での特典スキル付与を行ったのだとか。
必死なんだな、オンラインゲームの運営ってのも。
さて、そんな運営というか開発? の意図は、ただそれだけで終わるものではなかった。
ボスモンスターの情報を町にある冒険者ギルドで売ることが出来る。売られた情報を買うことも出来る。
ギルドだけじゃなく、情報を求めるNPCは他にもいるようだ。逆に教えてくれるNPCも――。
にゃんごは後者だな。いろいろ教えてくれるいい奴だ。
「でも、買ってくれるって言うなら売ればいいんじゃないか? お金になるんだし」
俺がそう言うと、リリーチェさんは指を立て「ちっちっち」と舌を鳴らす。
「わかってないなぁお兄さん。情報を売るってことは、ボスの居場所も知られるってことだよ」
「ここから一番近い町がどこだかわかりませんが、他所からこっちに来る人が現れるかもしれません」
それのどこに問題があるのか、俺にはさっぱりわからない。
「未発見のボスだったんだよ?」
「そのボスを僕たちが一番に倒したいじゃないですか!」
「うん、まぁそうだな。さっきはワオールが倒せそうだったのに、残念だったなぁ」
「「違うの!」です!」
な、なにが違うの?
「ワオールは規格外な強さだと思うんです。まぁ今現在で見れば……ですが」
「上位スキルで召喚したモンスターでしょ? きっと初期エリアでは見れない種族なのよ。だから強くて当たり前」
「ワオールが悪いんじゃないんです。ワオールは賢いし、もふもふでカッコいいし……あ、そういうんじゃなくって、つまりその――」
「私たちは、私たちの持てる力で戦いたいの。あいつを倒したいのっ」
「はい。ワオールに頼ることなく、僕の力であいつを倒したい。だからクーさんお願いします。僕たちともう一度、あいつを倒しに行きませんか?」
二人はそう懇願する。
俺には正直わからないことなのかもしれない。
ワオールは俺にとって大切な相棒だし、倒せればそれでいいんじゃなかって思う。
だけど二人の気持ちはわからなくもない。
昔、父さんに物作りのゲームを買って貰ったことがある。
随分と小さい頃にだ。
初めて触ったコントローラーを上手く操作できず、3Dタイプだったことからゲームの中のキャラのカメラアングルを動かすのに、何故か俺自身が動いていた。
歩くだけでもゲーム内のカメラがグルグル回り、設置したい物も狙った所に置けず――。
ブロックで家の形にしたくて、でも上手くいかず。見かねた父さんが手伝ってくれた。
数分でそれは完成し、だけどその完成品を見て俺は――。
これは僕んのじゃない!
そう泣きながら壊した記憶がある。
きっとそれと同じなんだ。
ワオールならモグラキングを簡単に倒せるだろう。
でもそれじゃああの二人の冒険は完成しないんだ。
あの二人が最初から最後まで頑張って戦って、そして倒せたら完成するんだ。
うん。
俺は二人の作りたいモノの完成を手伝おう。
「でもそうすると、あの雑魚モグラはどうする?」
「うーん、どうしよう。お兄ぃは王様の相手しなきゃいけないし、同時にあの数持てる?」
「無理だよ。クーさんは……厳しい、ですよね?」
言われて俺は考える。
ワオールは余裕だった。だからあのモグラの強さがわからない。
ワオールを見つめると、何故か嬉しそうに尻尾を振っている。
その目は、「ボクがやるよ。任せて」と言っているように見えた。
「なぁ……あの雑魚だけでもワオールにやらせてやってくれないか? こいつ、戦闘が大好きなんだよ。な?」
『ワフッワフッ』
「こいつは俺の相棒だし、何かやらせてやりたい」
尻尾をふりふり、そして撫でてと頭を差し出してくる。
その姿を見て、双子の顔は緩んだ。
「そう、ですね。ワオールもクーさんの仲間ですもんね」
「そうよ。お兄さんの仲間は私たちの仲間。我侭に付き合わせてごめんね、ワオールちゃん」
『ウォーン』
「じゃあ決まり。キングは俺たち三人で、そして雑魚はワオールに任せよう」
「「はい」」
それから二人は、雑魚はきっと途中から湧いて出てくるだろうと話す。
なんでもそれがMMOのセオリーなんだとか。
となると、速攻で殲滅できるワオールは、重要なポジションでもあるそうだ。
ちまちま倒していたんじゃ、雑魚が増え過ぎて対処しきれなくなって全滅なんてことも間々あると二人は言う。
うひー、それは嫌だなぁ。
「ごめんね、ワオールちゃん。本当は王様とも戦いたいよね」
「一度でいい。最初の一度目だけ、僕たちにやらせて欲しいんだ」
『ワフゥ』
撫でて――と、ワオールは二人に頭を差し出す。
その頭を二人が何度も何度も撫でていた。
「ただ……ね、こんな風に熱く語ったってのに、ミャーニーからクエストが発注されてるのよね」
「うん。今見たら、モグラキングを倒してきてください……て」
「え? クエスト??」
*雑魚をワオールに任せる。
となると「僕たちだけで」とはちょっと違うよねー、うーん。
と思いながらも、なぁなぁで執筆していたのですが。
ツッコマれてしまい気づかれてしまいました(笑)
執筆していた時は、どう書き直そうかと思い浮かばずそのまま更新してしまったのですが
今になって、じゃあこうするかみたいなのが出たため書き直しております。




