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「ツ、ツルハシで掘ってもいいですか!?」


 たぶん地下二階へと降りてきた俺たち。

 目の前に広がるのは360度、見渡す限りの岩!


「こんな所に石切り場があったとはーっ!」

「違うわよお兄さん。ここはダンジョン。ダ・ン・ジョ・ンなの!」

「まぁまぁ。どんなモンスターが出るのか確認もしておきたいですし、少しここで固定狩りしませんか? 移動狩りだとMPの回復も遅くなって、すぐ枯渇するんです。クーさんは採掘でしたっけ? やってても構いませんよ」

「いいのか!?」


 銅の剣と盾を置き、ツルハシに持ち替え嬉々として壁に向かって振り下ろす。

 やっぱり砕けた石が下に転がることは無かった。

 これだと実際何を採掘しているのかわからり難いな。


 でもよく見てみると、土を掘るのと一緒で一定量の岩だけが砕けているようだ。

 そして砕けた後ろにある岩に色が付いていたりすると――。


「お、今のは花崗岩なのか。薄紫色っぽいけど、これなら建材に仕えそうだな」


 煉瓦の代わりにもなりそうだ。

 そしてまたまた取れる石炭。

 白っぽいのは石灰石で、これはセメントの材料だな。

 ひとつ見つかると、その周辺は同じ石で出来ているので数も揃えやすい。


 暫く好きに掘っていると、ちょっと穴が大きくなった。

 これ、ダンジョンの拡張とかって出来るのかね?


「クーさん。この辺りのモンスターは僕たちにはまだ厳しいようです」

「うん。敵のHP多くて倒すのに魔法三発以上使っちゃう」

「先に進むのは無理そう?」

「もうちょっとステータスを上げて、全体的に装備もランクアップしないと無理そうですね」


 そっか。残念だ。

 でも無理は禁物だからな。ここは素直に上の階に戻るとしよう。


「そっちの収穫は?」


 リリーチェさんが訪ねてくるので、拾った石を取り出して見せる。


「砕くとこの状態でアイテムボックスに入っているんだ」

「ふーん。拾う必要ないから楽だね」

「飛び散った石が当たるなんてこともないんですね」


 あぁそうか。そういう考え方もあるのか。

 確かに拾わなくていいから楽だとは思ったけど、怪我のことまでは考えてなかった。


 坂道を登って元の階に戻って来た俺たちは、せっかくだから奥を目指すことにした。

 なんでもボスモンスターが居ないか、探したいらしい。


 でもボス倒したら、そのゲームは終わってしまうんじゃ?

 それは困る。まだにゃんごの店だって建てていないんだし。


「え? 終わりませんよ」

「ボスってね、ダンジョンに一体か二体はいるもんなのよ。まぁ片方は中ボスって言うんだけど」


 俺が思い浮かべたボスってのは、RPGで言うラスボスのこと。

 MMOって、ボスがあっちにもこっちにも居るようだな。

 なんかボスの安売りみたいなんだけど?






 奥へと進んでも、出てくるモンスターのメインはモグラ。

 ただし――。


「ダッシュ来るよーっ」

「モグラのくせに、足が速いって非常識!」


 やたら足が速く、一直線に突進してくる『ダッシュモグラ』。


『ワオワオッ』

「バーサク来た! ワオール、頼むっ」

『ワオォン』


 身の丈――と言ってもモグラがそもそも1メートル程だが……その身の丈程もある斧を振り回す『バーサクモグラ』なんてのが居る。


「モグラの種類だけ多いけど、この階ってやっぱりモグラのボス居るんじゃない?」

「うん。なんとなくそう思うね」


 オンラインゲームだと、ダンジョンの階層ごとにボスが配置されているのはよくあるとのこと。

 更に種族単位でもボスを配するモンスターもいると。

 特に動物タイプはその傾向にあるようだ。


 モグラも確かに動物だ。こいつらデカいしヘルメット被ってるし、武器持ってたりするけど。

 

 そうして進んだ先では、本当にモグラの親玉が居た。


 不自然にそこだけ空間が広く作られていて、入る前から俺たちは警戒していた。


「居る、わよね」

「居るでしょう」

「初心者の俺にだってわかるよ。ここは何かが居る部屋だってね」

『ワッホワッホ』


 嬉しそうなワオールを横目に、俺たち三人はそぉっと顔だけ出して中を覗いた。

 そこには、二足歩行の大きなモグラが居た。

 フォルムは他のモグラと同じ。ずんぐりむっくりした、コミカルにデザインされたモグラだ。

 ただなんだろう……ちょっと鼻につく。


 黒いサングラスをかけ、プールの脇に置いてあるようなリクライニングチェアに座っているのだ。


「ここ、洞窟だよな?」


 俺の言葉に頷く二人。


 暗いのにサングラス必要か?


「鑑定したよ。名前はモグラキング。そのまんまね」

「あ、リリーチェさんも鑑定持ってたのか」

「うん。だって必要SPが1だったし」

「僕は持ってません。リリーが取るって言ったから」


 つまり一家にひとり持っていれば便利だけど、それ以上はいらないスキルでもあるってことか。

 

 彼女の説明だと、名前以外の項目には何も書かれていないそうだ。

 そしてその意味を二人は知っていた。


「未発見のボスモンスターです。ボスの情報はギルドで買ってくれるそうなんですが、誰かが売るとその分の情報を他のプレイヤーが購入して閲覧できるようになるってシステムなんです」

「へぇ。面白いシステムだな」


 ただしこれはボスに限ったもので、雑魚にこういったシステムは無いということだ。

 そりゃそうだ。鑑定でわかるもんな。

 しかもお金を払って閲覧した人が一定数に達すると、今度は誰でも見れるように――鑑定でもわかるようになると。

 ますます面白いシステムだ。

 じゃあ俺たちも戻ったらギルドに――あ、ギルドが無かった……。


「冒険者ギルドも、思ったより早く建てた方が良さそうだな」


 ただしその為にも他プレイヤーが来てくれなきゃいけないんだが。


「ギルドは置いといて、とにかく戦ってみなきゃ何もわからないわ」

「そうだね」

「よし、じゃあ行くか」

『ワフッ』


 っと、ここでワオールの行動をどうするか決めなきゃな。

 ワオールも参戦させるか、それとも俺たち三人で戦うか。

 それを二人に尋ねると、彼らは申し訳なさそうに――。


「出来れば僕たちの力だけで戦ってみたいです」

「うん。私たちの力が、どのくらいなのか……試してみたいから」

「「ごめんね、ワオール」ちゃん」


 それを聞いたワオールは寂しそうに、だけどしっかりと頷いていた。

 だがワオールに仕事がない訳ではない。

 キングの周辺には十匹のモグラ各種が居る。そいつらをワオールに引き受けて貰わなきゃならない。

 それを聞くとワオールは嬉しそうに尻尾を振って、任せろと言わんばかりに鼻を鳴らす。


 さぁ、行こうか。

 キングの下へ。

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