025
「ご、ごめんねティト君」
「いえ、クーさんにサーベル貰ったあと、銅の剣を売らずにおいて良かったです」
自分の防具。そして杖と盾の作成で頭がいっぱいだったせいもあり、武器を用意しておくのを忘れた俺。
素手でモンスターをボコボコ殴りつけていたのを見て、ティト君が銅の剣をくれた。
ただ問題は松明だ。
右手に銅の剣、左手に木の盾。
第三の手が無いので松明は――。
『ワオオォォンッ』
松明を左手に、右手でモグラモンスターを瞬殺していくワオールが居る。
松明の火に照らされ、ワオールの赤茶色の毛並みが、余計に赤々として見えた。
更にその赤がモンスターの返り血のようにも見え……。
「なんかすっごいシュールな光景ね……」
「は、迫力あり過ぎですね」
ワオール……やっぱカッコいいぜ!
よぉし、俺もこの銅の剣で――。
「でも一度装備した物なのに、なんで俺も装備できるんだろう?」
おかげで攻撃力が17から27に急増。ダメージも17から20だったのが、27から32に増えた。
「あぁ、それはにゃんごが売っている物だからですよ」
「NPCが売ってる物はね、アイテムロックが掛からないの。だから使いまわせるのよ」
「へぇ〜」
でもドロップ品や製造品は違うらしい。
事実、俺が作った木の盾には「クー専用」と書いてある。作って貰った防具にもだ。
使いまわし出来なくすることで、製造装備の需要を維持するためなんだろうな。
使いまわせたら、ある程度の数が市場に出たらもう必要なくなる。
作り手としてそれは悲しいものがあるからなぁ。
「でもクーさんって、元々の筋力が高いからか、銅の剣でも僕とダメージがそう変わりませんね」
「そうか? ティト君は一発30から35出てるじゃな……あぁ、うん。変わらないね」
自分で言ってみてわかった。
3ぐらいしか変わってない。
ふぅーん。これも物作りの賜物かぁ。
けど俺には攻撃スキルが無い。
二人は――特にリリーチェさんはスキルを多用して攻撃を繰り出している。
炎、氷、風。これらを使い分け、臨機応変な戦いをしていた。
「魔法……カッコいい」
「でっしょー♪ でも魔法スキルって、ゲーム内で取ろうとしたら必要SP多くて大変なの」
「クーさんは攻撃スキル取ってないそうですが、生産系がほとんどなんですか?」
頷く俺。
物作りがしたいから、ほとんどそっちで固めてある。
逃走スキルが役に立っているのか、サッパリわからないぐらいだ。
「でもお兄さんはさ、ワオールちゃん居るじゃない」
「うん。戦闘面で言えばワオールが居れば、全然平気そう」
「俺もそれは思う」
武器を持ってみてわかった。
ワオールの強さは尋常じゃない。
攻撃力は、筋力+武器の攻撃力の合計値だ。
武器を装備した俺の攻撃力は27になった。
武器を装備していないワオールの攻撃力は108ある。
四倍だよ……。
「今はワオールちゃん、すっごく強いけど」
「武器を装備できないとなると、いつかはプレイヤーが追い付くかな〜」
「え、そうなのか?」
『クゥーン』
武器の攻撃力が三桁とかになれば、さすがに素手であるワオールも負けるだろうと二人は言う。
その話をワオールは悲しそうに聞いていた。
「でも確か……にゃんごは極一部の武器や防具は装備できるって――あ、実際装備出来ているじゃないか」
『ウォ……ウォウウォウウォウ!』
ワオールも思い出して首からぶら下げた兎の足を指差す。
そうだよ。装備しているじゃないか!
「あれ、それって召喚時にデフォで持ってる物じゃなかったの?」
「え、クーさんが作ったんですか? なんか物凄く一体感あったんで、そういう外見なのかと思ってました」
「心配するなワオール。お前が装備できる武器を、俺が絶対見つけてやるからな」
『ワフゥ』
「私も情報探してあげる」
「うん、僕も」
もしかしたらこのダンジョンで見つけられるかも?
そんな期待を胸に、俺たちはダンジョンの奥へと進んでいった。
暫くモンスターとの戦闘を繰り返しながら、下へと続く坂道を発見。
「これって、地下二階行きかなぁ」
「そもそもここが地下一階なの?」
双子が俺を見る。
いや、俺も知らないから。たまたま穴掘ってここに繋がっただけだし。
「二人とも時間大丈夫? 先に進むとなると帰り道のことも考えないといけないし」
十四歳。ピチピチの中学生を遅くまで連れまわすわけにもいかない。
確か十二時までだってご両親と約束していたはずだし。
二人はスマホを取り出し時間を確認した。
拠点から穴までは駆け足でも二十分は掛かる。それも考えて――。
「お兄さん、まだあっちじゃあ七時ぐらいよ」
「ダンジョンに入って、まだ三十分程ですし大丈夫です」
「ここ、思ったほど広くないのかもね」
「うん。まぁ奥がまだあるから、実は広いのかもしれないけど」
下り坂はあるものの、通路はまだ先へと伸びている。
ここが地下一階と想定しても、まだその地下一階は続いているのだ。
だけど進むとしたら――。
「そか。じゃあ下りてみる?」
「「行く〜」」
進むなら下に向かってでしょう!
まずはリリーチェさんがホーリーライトを坂道の向こうに投げ飛ばす。
ワオールの反応も無いし、坂道にモンスターの姿は無かった。
リリーチェさんが再びホーリーライトを使い、その光を俺の剣先にくっつける。
俺とティト君が並んで下りて行って、その後ろにリリーチェさん。
松明を持ったワオールが最後尾だ。
これは後ろからの攻撃を警戒してだけど、ワオールを先頭にするとあっという間にモンスターを駆逐してしまうからでもある。
「パーティーを組んでいると、スキルポイントは順番に分配される方式になっていますけど――」
「スキルレベルなんかは行動しなきゃレベルあがらないし」
「1レベル上げるのに何回って決まっているのかな?」
俺の素朴な疑問に双子は「たぶん」と答える。
その辺りの情報は公式でも出ていないし、このゲームはクローズドベータもオープンベータも無い、稀なVRMMOだったから情報も少ない――と話す。
クローズドとかオープンとか、俺にはよくわからない。
でも確かに情報少ないよな。
そういうこともあり、スキルレベルを上げたい二人にとって、一撃で敵を葬り去るワオールが先頭では困るのだ。
ワオールもそれを理解しているようで、敵の数が少ない時には灯り役に徹してくれている。
「ワオール……お前、ほんっとうに賢くってカッコよくって可愛いやつだな。もふっていいか?」
『ワオォンッ』
尻尾を振りながら顔も左右に振るワオール。
いつか……いつかもふってやるからな!
今日は1話更新にしようと思ったのですが・・・
ブクマ3000達成しましたし、ランキングもまだ1位を頂けているので
嬉しくて調子に乗って二度目の更新です。




