002
草原を駆け抜ける風が頬を伝う。
見渡す限り広がる草原がここにはあった。
逆に言えば、草原しか無い。
「最初に降り立つ拠点の希望を聞かれて、人の居ない場所――とは答えたけどさ」
人が少ない方が素材の取り合いにならないだろう。そう思って答えたんだけど。
「人だけじゃなく、町や村すら無いって……」
本当に何もない。
なんか遠くの地平線に薄っすらと木みたいなのは見えるけど。
この状況って――。
「クラフト魂に火が付くぜ!」
『ワオオォォォォッ』
「そう思うだろ? ワオール」
『ワオ?』
「うん。お前の名前、ワオールな」
首を傾げるワオールだったが、気に入ってくれたようでうんうん頷いた。
こうして見ると、ワオールも結構大きいなぁ。
身長183センチの長身な俺と、拳一つ分しか違わないし。
体毛は全体的には赤茶色で、手足の先は靴下や手袋をしているように白い。お腹も一緒だ。
顔も猫で言う八割れのような感じで、白と赤茶色で毛の色が違う。
瞳は真っ赤で大きく、そこだけ見ると可愛げにも見えた。
毛は……もふもふしていそうだ。
「もふってもいいですか?」
『ワォ?』
そうか。もふるという言葉がわからないのか。
それなら仕方がない。
「もふるっていうのはな――こうするんだ!」
『ワフッ!?』
首筋にぎゅーっとしてみる。
ライオンじゃないが、この辺りにたてがみみたいな毛があってきんもちいぃ。
あぁ、頬ずりしたくなるー。してるけどー。
「獣魔を襲う変な人間がおるニャね」
「変なって言うなー……って誰!?」
ワオールを奪われないよう抱き締め、辺りを見渡す。
誰も居ない?
「下ニャ。もっと下を見るニャよ」
「下? おおおぉぉぉっ!?」
猫が居た。
いや、ただの猫ではない。
服を着た二足歩行の三毛猫だ。
NPCだろうか。それともプレイヤー? はたまたモンスター??
とりあえず可愛い。
耳も尻尾も良く動く。喋る時には髭もほんの僅かだけど動いていた。
よく出来てるなぁ。
「あっしは猫人族のにゃんごと言う、しがニャい商人ニャ。ここに来たお客ニャんは、あんたが初めてニャよ」
「てことはNPCなのか。え、ここに来たのは俺が初めて?」
ニーっと笑って猫が頷く。
その猫――にゃんごは、「ここには何もニャいからね〜。誰も来たがらニャいニャ」と話す。
「まぁまぁ。とにかくお客ニャん。せっかくだから何か買っていくニャか?」
猫特有の大きな瞳をキラキラさせ、こちらをじっと見つめてくる。
あ、これダメなヤツ。
チューブタイプの猫用おやつを見せたときの、あの目の輝きだ。
「買っていくニャか?」
「買います」
「毎度ありニャー」
ほら見ろ、即答しちゃったじゃないか。
けど、浮かび上がった商品一覧を見て俺は歓喜する。
「スコップツルハシ鍬!? え、簡易大工道具一式とか、いろいろあるじゃん!」
ホログラムディスプレイに浮かび上がった商品一覧は、武器防具、道具、ポーション類の三つにタブ分けされていた。
真っ先に開いたのは言わずもがな、道具だ。
「お客ニャん、最初に見るのそこニャのか。普通は武器防具を見るもんニャと思うニャが」
「いやいや、道具が先でしょ。おっと、お金っていくら持ってるんだろう」
「びた一文まけないニャよ。お金の確認はスマホから出来るニャ」
スマホ?
あぁ、AIもなんか言ってたかな。ステータスはスマホで確認とかなんとか。
で、そのスマホは――。
「ズボンのポケットにあるニャ」
「あった。ありがとう。初心者だからまだよくわからなくって」
「……心配ニャねー。どうせ他にお客ニャんもいニャいし、知りたいことがあったら教えてあげるニャ」
「ありがとう――あ、電源は自動ONなんだな。それぞれのアイコンで操作するのか」
「ニャ。所持金の確認はアイテムボックスを開けばわかるニャ」
巾着袋のようなアイコンがアイテムボックスか。
タップすると今所持しているアイテムのリストが表示された。
画面の右下に所持金っぽいのが出てるな。
「5000Gっていうのがお金でいいのかな」
「いいニャ。取引するときには特にお金を出し入れする必要もないニャよ。買ったアイテムは自動的にアイテムボックスへ送れるし、お金も自動で支払われるニャ」
その辺りはゲームらしく、楽な作りになっているんだな。
「それで、何買うニャ? あっしのお勧めは銅の短剣――」
「スコップと……この辺りには岩は無いからツルハシは今はいいか。向こうに見える木を切って、家も建ててみたいし、斧も買おう。それぞれ二つずつな」
「……武器は?」
「え? いらないし」
にゃんごが頭を抱えている。
猫のこういう仕草って可愛いよな。
見とれているとワオールが俺を覗き込むようにして見ていた。
「よーしよしよし。ワオールも可愛いぞ」
『ワオッ』
恥ずかしいのか、首を振って逃げてしまった。
ツンデレ属性か。
「武器がいらないって……お客ニャん。昼間はいいニャが、夜になるとこの辺りのモンスターはアクティブ化するニャよ。戦闘必須。武器がないとまともに戦えないニャ」
「んー、じゃあそれまでにこの辺りに壁を作らなきゃな」
「え? か、壁かニャ?」
「そう。あ、飛行モンスターとかいたりする? あと大型とか」
にゃんごが首を振る。
この辺りに生息しているのは、体長50センチ程度の物ばかりだとか。
「じゃあモンスターが入ってこれないよう、壁を作ろう」
「……150センチ以上の高さの壁なら、モンスターの侵入も防げるニャ」
「よし。ワオール、やるぞ!」
『ワオ?』
「ところでにゃんご。スコップはどうやって取り出せばいい?」
にゃんごから買ったスコップは、既にアイテムボックス内にある。
値段は一つ500G。斧も同じだ。二つずつ買ったので2000Gが抜き取られ、残金は3000Gと表示されている。
「取り出したいアイテムを、スマホ画面外にドラッグするように移動させるニャ。あとは掴めばいいだけニャよ」
「ふーん、割と簡単。はい、ワオールの分」
『ワ?』
「こっちは俺の分。さぁ、土を掘るぞ!!」
今回はキャラ作成時に獲得可能な生産系スキルです。
これまた思いつきで考えた程度の物なので「生産ならこんなのは?」
というアイデアがあれば、どうぞネタをください!
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