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018

「えぇっと、クーです。覚えやすい名前でしょ?」

「私、リリーチェ。攻撃魔法メインでスキルを取ってまーす。あ、でも『ヒール』もあるよ」

「僕はティト。物理攻撃と肉体強化系スキルで固めてます」

「「双子です」」


 見事にハモった。

 女の子のリリーチェさんが妹で、ティト君がお兄さん。

 リリーチェさんは髪と瞳が菫色で、ティト君は水色。

 正直、色以外の違いがわからないぐらい、そっくりだ。まぁリリーチェさんのほうが髪が長いけど。


 そんな二人はつい今しがた、このゲームを始めたらしい。


「冒険がしたいって声に言ったの」

「いろいろ揃っているより、厳しい条件の場所から始めたいってお願いしたんです」

「でもまさかこーんなに何も無い場所に出されるなんてねぇ」

「まぁまぁいいじゃないかリリー。こっちの方がわくわくするよ」


 という訳で、物作りにはまったく興味ないようだ。

 よかったよかった。

 そういうことなら大歓迎だ!

 人が増えればギルドも建てられるようだし。

 その前に雑貨屋だな。あとNPC用の住居も必要だし。


「でもお兄ぃ。雑貨屋さんの猫ちゃんだけだと、銅の剣しか買えないわよ」

「う……そうか。青銅とかは武器防具商人しか売ってないんだっけ」

「ニャー。そこの人がきっと店舗を建ててくれるニャよー」


 と、にゃんごが俺を見てそう話す。


「お兄さん本当!?」

「え、そうなんですか?」

「お……おう! にゃんごの家を先に――」

「ニャー! ちょっとこっち来るニャッ」


 にゃんごに呼び出された俺は、少し離れたところでひそひそ話に。


「あっしの店は後回しでいいニャ。よく聞くニャよ。ここで武器防具屋は後回しなんて言ってみるニャ。そしたらあの二人、別の土地に行っちゃうニャよ! あっしはもう、お客ニャんを逃がしたくないニャー」

「お前……お客は俺一人じゃあ満足できないっていうのか!」

「あったりまえニャ!」


 即答された。

 俺とにゃんごは固い絆で結ばれていると思ったのに。


「あ、でも土地は――」

「十日間は放置してても大丈夫ですミャ。それを過ぎると申請が白紙になりますミャ」

「十日か」

「期日が近づいてきたら、何か作業を少ししていただければリセットされますミャ」


 そこからまた十日間は土地の確保がされるとミャーニーは話す。

 そうだな。ある程度似た作業は、同時に平行して行うってのも手だな。


「よし。にゃんごの店舗の向かいに、武器防具店を建てるか」

「ニャー」

「武器防具屋は二階建ての店舗になりますミャー」


 おぉ。二階建てかー。いいねぇ。


 双子の下に戻って、改めて武器防具屋を建設すると宣言。


「お店って本当に建てられんだ〜」

「そんなことまで出来るんですねぇ」

「おう! まぁスキルが必要だけどな」

「「へぇ〜」」


 そして俺のスキルを一部紹介。


「え……お兄さん……攻撃スキルは?」

「ん? ないけど」

「ど、どうやって戦うんですか!?」

「ん? 殴ってるけど?」

「「えぇーっ」」

「と言っても、ほとんどワオールが戦ってるんだけどな」

『オォンッ』

「「うわっ」」


 それまで大人しく俺の傍にいたワオールが急に声を上げると、二人は驚いて飛び跳ねた。

 それが楽しかったのか、ワオールは超ご機嫌で尻尾を振っている。


「こいつ、俺の相棒でワオールって言うんだ」

「テ、テイマー系スキル、持ってたの!?」

「でもこのモンスター……とても低レベルには見えないよ」


 ワオールとの出会いはそう……キャラクター作成時!

 二人には特典で貰った『獣魔召喚』というスキルだと説明する。

 ティトくんは「どうりで強そうな訳だ」と納得している様子。


「いいなぁ。私も強いお供欲しい。お兄ぃじゃ頼りないし〜」

「……酷い」


 ティト君、可哀そう。

 お兄ちゃんの方が妹ちゃんに弱いみたいだなぁ。

 まぁ……わからなくもないけど。

 俺も妹によくアイスだのお菓子だの取られても、文句言えないし。


「さぁ、お兄ぃ。冒険に行くわよ!」


 俺も晩ご飯食べに行こう。


「あ、そうだ。よかったらさ、これ使ってよ」


 さっき作ったポーションを、十五本ずつ二人に手渡す。


「え、これってポーション……」

「ニャー。ポーションならあっしの――」

「最初は何かとお金が掛かるからな! あ、そうだ。肉もあげるよ」

「だったらあっしの店でパンとかリンゴ――」

「空腹になると気絶するっていうからな。気を付けろ」

「い、いいんですか?」

「いいの!?」

「いいんだ」

「あっしの……ニャー」


 こうして俺の夢の王国に、住民が二人増えた。






 晩ご飯食べてシャワー浴びて、明日の予定を確認。

 あぁ、明日は一限目に講義。二限がなくって代わりに病院。三限無くって四限目講義。

 終わるのは夕方の四時四十五分。

 遊べるのは五時過ぎるな。

 病院終わって一時間だけ遊ぶかな。


 さて、夜のレッツプレイ!

 如何わしいプレイじゃないからな!


 ゲーム内はまだ日中か。あと一時間ぐらいで夕方になるな。

 狩りをしつつ採取して解体もするか。


「ワオール、お待たせ」

『ワオォン』


 尻尾をふりふり、ワオールが頭を下げる。


「もふらせてくれるのか?」

『オォン』


 首を横に振る。違うらしい。

 でも頭を下げる。撫でろってことか?

 頭に手を乗せると、気持ちよさそうに摺り寄せてくる。

 だったらもふらせてくれよ!


「えー、何ここ。何もないじゃないっ」


 え? ま、まさか、また新しいプレイヤーさん!?

 慌てて振り向くと、女の人が立っていた。ただし凄く不機嫌そう。


「あ、人が居る。ねぇ、ここから一番近い町って、どこだか知ってる?」

「さぁ? にゃんご、知ってるか?」


 近くに居たにゃんごに尋ねる。


「ニャー。一番近くだと、東の川沿いに歩いて三日ニャねー」

「三日って……ふざけてるの! 雑貨屋しかない場所で、どうやってプレイしろってのよっ」

「あ、武器防具屋は建設予定――」

「はぁ?」


 こ、この人怖い。

 いちいち目をむき出してるし、語気も荒いし。


「ざっけんじゃないわよ! 一回だけキャラリセ出来たっけ。もう、安全な所って言ったのに、なんでこんな所なのよっ」


 そのまま彼女はすぅっと消えていった。


『クゥーン』

「ワオール、お前も怖かったんだな。俺も怖かったよ」

「ニャー。新しいお客ニャん、逃げちゃったニャねー。実はお客ニャんが来てから、あんな感じの人は何人か居たニャよ」


 マジか。

 どうやら何も無いのを見て、そのまま帰ってしまったプレイヤーは居たようだ。

 駒田も言ってたもんな。一度だけ直ぐにキャラクターを作り直せるって。


 そんなにここはダメか?

 あの双子は受け入れてくれたんだけども。


「あの双子みたいな人が増えるといいな」

『オォン』

「そうニャねー」

「よし、狩りに行こう!」

『ワオーンッ』


 扉を出て、せっかくなので東へと向かった。

 川があるって言ってたもんな。

 地図も全然埋まってないし、たまには未開の地へ行ってみよう。

お読み頂きありがとうございます。


もっともっとたくさんの方に読んで頂きたいので、是非とも応援の程よろしくお願いいたします。

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