014
朝ご飯は簡単に済ませるため、食パンをトースターで焼いてチョコバターをぬったもの。
パンを食べながらタブレットを操作し、昨日のウィキで情報集めだ。
お、町のページが出来てるな。
・ティアナの町
・・雑貨屋×5。武器防具屋×4。生産工房×3。冒険者ギルド×1。
・・八百屋。肉屋。
・トール村
・・雑貨屋×2。武器防具屋×1。生産工房×1。
・ギブリ村
・・雑貨屋×1。武器防具屋×1。生産工房×1。
*村ではNPCに直接交渉して野菜や肉を買うことが出来た。
うん。物凄く簡易データしかなかった。
コメント欄見る限り、町や村はもっとあるようだ。
町のほうが施設の数が多いみたいだな。その分、利用者も多いってことだろう。
こうして見ると、俺の夢の王国に必要な最低限度の施設がわかる。
雑貨屋はにゃんごがいる。あとは武器防具屋と工房か。
町にはあって村には無い、冒険者ギルドってのはなんだろう?
ログインしたらにゃんごに聞いてみよう。
「冒険者ギルドニャか? お仕事を紹介してくれたり、冒険の仲間を募集出来たりいろいろしてくれるニャよ」
「お仕事紹介……。紹介される程暇でもないしなぁ……。優先順位は下だな」
「まぁ冒険者ギルドを作る為にも、他のお客ニャんが増えなきゃいけニャいんだけどニャ」
「ふーん……んじゃまぁ、壁を完成させますかね」
ゲーム内は日中だが、太陽の角度を見る限りもう少しで夕方になりそうだ。
ちょうどいい。日中だと伐採しに行きたくなるからな。
「ワオール。丸太を切る作業をしている間は狩りをしててくれ。終わったら壁造りを手伝って欲しいから、その時は戻ってきてくれるか?」
『オォォーン』
いつものように嬉しそうにモンスターを瞬殺しに行ったワオールを見送って、俺は大工スキルで丸太の切断作業っと。
二百七十五のケヤキの丸太が、千三百七十五本に。
作業が終わると、太陽が沈んでしまった。
このタイミングでワオールが嬉しそうに戻ってくる。
「スキルを使ってみたのか?」
『ワホッ』
「そっか。楽しかったか?」
『オオォォーンッ』
楽しかったようで、なによりだ。
それじゃあ焚火で灯りを確保し、作業開始するか。
今回も削りカスで焚火の燃焼時間の延長作戦!
西側の壁に出入口用の扉を設置するための隙間を開けておく。
ケヤキの丸太も十分にある。むしろ余るほどにだ。
まぁ余ったと言っても、建設で使うから実際には余る訳じゃないんだけどね。
こうして出来上がったのは、南北に80メートル、東西に100メートルの壁。
「うおおおぉぉぉぉぉっ!」
『ワオオォォォォーンッ!』
「あーはいはい。いつものやつニャね。けど扉がまだニャから、完成ではニャいニャー」
「うおおぉぉ、あ、そうか。ってことは朝までに完成できなかったな。残念」
俺とワオールの雄たけびは、朝日に向かって行われていた。
せっかく絵になってたのになぁ。
じゃあ扉を作ろうか。
扉は観音開きにするつもりでいる。
普通に考えれば蝶番を使って、壁と扉を固定するんだけども――。
にゃんごの販売道具リストに釘があったのは覚えているけど、蝶番はどうだったかなぁ。
「にゃんごぉ、蝶番って売ってたか?」
「蝶番? 丁番ならあるニャよ」
「それ同じもんだよ。売ってんのか。じゃあ釘と一緒に買う」
「釘は百本で250Gニャ。丁番は大・中・小とあって……壁に使うニャか?」
俺が頷くと、大サイズになるとにゃんごは教えてくれる。
価格は一つ500G。
うぅん。
扉だからなぁ。最低でも片側で二つはいるだろう。
そして高さ4メートルの扉だ。二つで固定できるとも思えない。
1メートルに付き一つは欲しいよなぁ。
あ、壁の高さは3メートルなのに、扉だけ4メートルって……まぁいいか。そこだけ高いと、扉の位置も離れた所から見てわかりやすいだろうし。
そして圧倒的にお金が足りない罠。
ポーション作って駒田に買って貰おう。あいつの知り合いで買ってくれる人いないか、聞いて貰おう。
「ワオール。お金を稼ぐ為に採取するから、お前は狩りをしてくれないか?」
『ワオーンッ』
そうだ。せっかくだし、ワオールの近くで採取しよう。そして解体スキルで素材ゲットだ!
死体は放置していると、だいたい一分ほどで消えてなくなるようだ。
なので手早く解体しなきゃな。
ワオールが倒したホーンラビットの死体。
スマホから解体スキルを選ぶと、解体用ナイフを持てとメッセージが浮かんだ。
装備じゃなく持つのでいいんだな?
アイテムボックスから取り出して握ると、転がっている死体にマーカーが出た。
ウィキに書いてあった通りナイフを兎に当てると、ゲージが出てきて数秒後には光の藻屑に。
あれ?
アイテムは?
ボックスを確認するが、ワオールがどんどんモンスターを倒していっているのでよくわからない。
ワオールに一度手を止めてもらう。
そこかしこに転がるマーカー付き死体にナイフを当てる。
お、毛皮が一個増えた。
だいたい五秒で解体が完了するし、まとめて解体したほうがいいな。
その間に採取して――。
「あ、ワオール。戦ってていいぞ」
『ワホッ♪』
倒す速度が速いし、消滅する死体も出るだろうけどまぁいいか。
しばらく採取と解体とを繰り返し、一時間ほどでにゃんごのところへ。
ふっふっふ。解体ってすんばらしい!
ドロップと合わせて680G。
うん、でもまだ全然足りない。
しかし今回の狩りでは、なーんと!
「ボーンナイフってのが出たんだぜっ。ワオールは装備出来ないし、これを売るっ」
「お客ニャん。自分で装備しニャいのかニャ?」
「必要ない。買ってくれ」
「……いいニャけど。一本1650Gニャよ」
おおおおぉぉぉ!
キタキタキターッ。
所持金3453Gになりましたーっ!
切りのいいところで丁番六個購入。余ったお金で釘ワンセットと空き瓶四十本購入。
ポーションを四十本作ってから駒田にチャットで……あれ?
相手がログインしてないとチャット出来ないのか。
「にゃんご、今何時だかわかるか?」
「スマホに出てるニャよ?」
「あ――本当だ。なんだ、まだ二時か……ん?」
スマホの時計表示が右上に二つある。
上の段の数字が大きく、2:08とあった。その下には小さく13:08と。
下が現実の時間か?
あ、昼ごはん食べ損ねてる!