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011

 作りかけの丸太壁の向こうに、見慣れない――いやある意味見慣れた物がそびえ立っていた。


「こんにちは、にゃんご。あれはなんだ?」

「いらっしゃいお客ニャん。あれはお客ニャんが植えたケヤキニャよ」


 ・ ・ ・。


「うおおぉぉぉぉぉっ!」

『ワオオオォォーンッ』

「ケヤキが成長したぞおおぉぉぉぉつ」

「それぐらいで吠えなくってもいいニャよ。植えたニャから、生えて当たり前ニャろ?」


 最初に十五本植林して、あとで二十二本追加してある。

 成長していたのは十七本。うち七本が大きく、十本は10メートルぐらいか。

 ということは約半分が無事に成長しているってことか。

 よく見ると枯れた苗木がある。もう少ししたらデータの藻屑と化すんだろうな。


 切るのはあとにしよう。

 まずは採取だ。

 元気草を集めてポーションを作らなきゃいけない。


 駒田との取引で、情報を内緒にして貰う代わりにポーションをタダでくれてやる約束をしたからだ。

 

「にゃんご、空き瓶三十本売ってくれ」

「150Gニャ」


 三十本分の元気草を摘み取り作業開始。


「あ、ワオールはいつものようにしてていいぞ」

『ワオォーンッ』


 嬉しそうに駆け出したワオールが、早速モンスターを瞬殺していく。

 それを見届け俺はやるべきことに取り掛かった。


 竈に火を入れ――あぁ、夜でもないのに焚火を消耗するのって勿体ないな。

 とか思いつつ元気草を煮詰めて――今回は水の色が変わったところで鍋掴みが登場!

 そして鍋を――とりあえずにゃんごの木箱の上に移動させよう。

 これでぐつぐつ沸騰することもない。安心して空き瓶に移し替えて、空になったら再び水を入れ元気草を煮込む。

 こぼすことなく『手作りライフポーション☆』が三十本完成した!


「うおおぉぉぉぉっ!」

「出来上がったのかニャ。いちいち叫ばなくてもいいニャよ」

「えー……そう言うなよぉ」


 せっかくの喜びの表現が。

 そうこうしていると、ピコーンっという甲高い音が聞こえた。

 視界には【マッキーさんからメッセージが届いています】と浮かぶ。

 駒田 恭介。略してマッキーね。


 スマホのコミュニケーションってのを開くと、メッセージボックスがそこにはある。

 これも駒田に教えて貰っていた。

 メッセージの差出人項目をタップすると、【返信】【削除】【通報】【フレンド登録】の四つの項目がある。

 間違っても【通報】を押すなよと駒田に言われていたが、間違って押しそうな位置じゃないか!


 で、ここでは【フレンド登録】を選択。

 ちなみにメッセージ内容は――「あ」の一言だけ。


【マッキー:あ】


 今度はチャットウィンドウだぞ!

 どうやって返信するんだよちくしょう。


【マッキー:チャットわかんねーか】

【マッキー:ウィンドウの左側タップしたら、俺の名前でてるはず】

【マッキー:あとは普通にチャット打ち込むんだ】

【マッキー:あ、その時点でホログラムキーボード出てるからな】


 うん、確かに出てた。

 それを使ってメッセージを打ち込む。


【クー:い】

【マッキー:う】

【クー:え】

【マッキー:おいそのぐらいにしようぜ】


 最後まで続けてるじゃないか。


【マッキー:ぶつは出来たか?】

【クー:出来た。30あるけどどうする?】

【マッキー:20でいいよ。お前も使うだろ?】

【クー:たぶん?】

【マッキー:いらないなら買うよ。星ひとつだろ?】

【マッキー:こっちの町だと一本相場30Gで売ってるけど】


 え? なんで30??

 にゃんごが売ってるポーションより回復量少ないんだぞ?

 そう尋ねると、なんでもポーションには再利用時間「クールタイム」ってのがあって、NPC販売と調薬のとではそれぞれ別々にカウントされるとのこと。


【マッキー:ただしNPC売りだと初級も中級も同じクールタイム扱いで】

【マッキー:調薬で作るのも星が違おうが同じクールタイム扱いなんだ】


 初級ポーションを飲んですぐ、手作りポーション☆は飲める。

 でも初級ポーションを飲んですぐ、中級ポーションを飲むことは出来ない。

 同じように手作りポーション☆を飲んだ後、☆☆を飲むことは出来ない。


【マッキー:だから効果は低くても、手作りが高くなっちまうんだ】

【マッキー:プレイヤー産の値段を付けるのもプレイヤーだからな】


 そういうことか。

 でも友達だし、このゲームを教えてくれた恩人でもある駒田に、相場と同じ価格なのは気が引けるな。

 だいたい相場ってことは、これより安く売ってる人もいるってことだろうし。


【クー:駒田だけなら一本20Gでいいよ。ただし大量には作れないから】

【マッキー:え、マジで!? 時々でいいから売ってくれないか?】

【クー:一日三十本ぐらいなら時間あるからいいよ】

【クー:俺も貧乏だから買って貰えると助かるし】

【マッキー:ok。じゃあ今日は20本貰いで10本買いな】


 顧客ゲット。

 フレンド登録が出来れば、遠く離れた相手にもアイテムを送ることが出来るようになる。

 宅配っていうシステムを使うらしく、現実での一日三回までは無料で使える。

 それを過ぎた場合は一度に5G支払うことに。

 

 コミュニティーから【宅配】を選んで、送る相手はマッキーしかいないっと。

 送るアイテムも、所持品から自動的にリストアップされるので、それを選択。

 個数を入力すればOKか。

 簡単だな。


 最後に「宅配」ボタンを押せば――。


【マッキー:届いた。今200G送ったから】


 チャットが出たのとほぼ同じタイミングで【アイテム入りメッセージが届きました】と浮かぶ。

 メッセージを開くと、200G入っています。受け取りますか? というような内容だった。

 YES/NOとあるけど、ここでNOを押すとどうなるのか。返金されるのか。

 やってみたい。


 ポチっと。


 普通にメッセージが閉じただけで、もう一度開くと同じ内容が。

 じゃあ受け取ろう。


【クー:受け取った。まいどあり〜】

【マッキー:なんか面白い情報とかアイテム見つけたら教えてくれ】

【クー:植林したら木が生えたぞ! 昨日植えたばっかなのに】

【マッキー:ゲーム内時間で24時間らしいぞ】


 ふーん……なんだ。知ってたのか。


 駒田との会話を終了させると、成長したケヤキが八本になっていた。

 突然伸びるのかよ……。


 そろそろ夕方になる時間だな。ケヤキ林まで往復する時間もないし。アレを伐採して午前中の分と合わせて切っておくか。

 暗くなってから丸太の壁造り再開だ!

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