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恐怖のゴリラ  作者: 松戸 尚
3/4

ゴリラの本性

駅前の居酒屋で待ち合わせをした。

数日前に来たばかりの店である。何故ジョルジュと頻繁に会わなきゃならんのだ。断っても良かったのだが、俺は奴が怖くもあった。一人でぶつぶつ喋ってるような奴を怒らせたくなかった。

だから店に行ったのだが、奴が一向に現れない。


ここ数日の間、夕子とは電話で話すだけだった。店に行く時間がなかったし、彼女と会う時間も必要だったからである。しかし、俺は夕子と会いたかった。彼女と別れて、夕子と付き合いたかった。


そんな事を考えていると、ジョルジュが30分遅れてやってきた。

誘った奴が遅れてくると言う時点で、最低な行為であるのだが、奴は謝罪も何もなく、席に着くなり生ビールを注文した。トイレから戻ってきたかのように、普通に座り、普通に飲み出した。


ジョルジュから誘われたにも関わらず、奴はほとんど話して来ない。いったい何なのだ。仕方がないので、俺からいくつか聞いてやろうと思い、聞きたくなかったが手始めに仕事の事を聞いてみた。

どんな仕事をしているのか、上手くいっているのかなど。

仕事の内容は相変わらずよく分からない。オペレーターとは一体なんなのだ。そして上司の話を奴が始めたら、もう止まらなくなった。

「上司が最悪なんだよ。年中飲みに誘いやがって。しかも同じ店ばかり行って、もうあそこの料理は食いたくねえよ」

「別に同じ店だっていいんじゃないか?」

「ダメだね。最悪だよ。もっといい店用意しろよ。大体ムカつくのが、歳下だぜ。最悪だろ」

「仕事上はそんな事よくあるだろう。俺だって歳下を相手に仕事してるよ」

「あいつは最悪なんだよ。威張りやがって」

いや、最悪はお前だ。その歳下に使われなきゃならん状況を作ったのはお前自らである。

「飲みに誘ってもらえるなんて、いい事だと思うけどな。」

「誘われたくないね。」

「断れないの?」

「上司だから」

こんな話は終わりにしたい。だから来たくなたっかんだ。

そもそもなんで俺が今日、ジョルジュからの誘いを断らなかったかというと、まあ奴が内向的な奴で怖いというのもあるが、俺は記憶力がいいと言うか、昔の事をよく覚えている。ある意味で根に持つタイプなのかもしれんが、ジョルジュについて覚えているのは、俺がジョルジュを泣かしたと言う事だ。だからその償いと言う訳でもないのだが、なんとなく断りづらかった。ジョルジュはそんな事は覚えていないだろう。だから俺の中での事だけなのだが、しかし実際にこうしてジョルジュと話していると、今すぐ帰りたくなる。もう昔の事などどうでもよくて、そして俺は夕子に連絡して飲み直したい。


とにかくここは、話題を変えなければ。

「夕子の店、あ、隣の花屋の事ね。あそこはよく行くの?」

「夕子のところにはたまに行くよ」

え?夕子?夕子って呼んじゃうの?

「花が好きなのか?」

「いや、そうじゃないよ。夕子が頑張ってるからさ、買ってあげてるの」

え、お前と夕子はそんな関係?夕子からお前の話なんか聞いた事ないぞ。

「何?夕子の事好きなのか?」と俺が聞くと、ジョルジュは、

「好きじゃないよ。でも嫌いじゃない」

なんだ、その表現は。かなりムカつくのだが。

「本当は好きなんだろ?」

「嫌いじゃないね」

いい加減にしてくれ。中2か!いや、小学生か!って書いたところで、俺は小学生に大変失礼な事を書いたと後悔している。

面倒臭い!好きと言えばいいだろ。なんだその浮かれた顔は。

俺はもう我慢ならなくなり、帰ろうと提案した。

しかし、ジョルジュは帰ろうとしない。どうにか促し、そして誘ったジョルジュは一向に伝票を持とうとしないので、俺が会計を済まし、店を出た。

また俺の支払いだ。奴から誘ったのに。


店を出て、帰路についた。相変わらずジョルジュはタバコを吸っている。

そして呟きが始まった。

「ふざけんじゃねーよ、、、なめやがって、、、、、表出ろ、、、なめてんのか、、出ろ、なめてんのか、、ベロベロベロ、、、、ピロピロピロ、、、プププププププ、、、、、、、ピコピコピコピコ、、、ポポポポポ、、、ピピッ、ププッ」


もうやめてくれ!こいつは一体なんなんだ。とうとう宇宙人との交信が始まったぞ。


「あのさ」

「、、、、、」

「あのさ」

「、、、え?何?どうした?」

「タバコ買いたいんだけど、コンビニ寄っていい?」

「ああ、コンビニか。いいよ」


ジョルジュがタバコを買いたいと言うのでコンビニに寄る事になったのだが、そのコンビニは俺の彼女がたまに利用しているし、店長とは知り合いなので、ジョルジュと一緒に行きたくないなー、と思ったのだが、まあタバコを買うくらいどうって事ないだろうと思い、一緒に店内に入った。

ジョルジュはレジにいる店長の所に向かい、指定の銘柄を伝えた次の瞬間、「きったねえ顔しやがって」と言ったのである。

俺は咄嗟に言葉を挟み、「タバコは何吸ってるんだよ?あったか?」と言ってみたものの、とても誤魔化せたとは思えない。

他人のフリをするべきであったろうか。

実はその日以来、店長は俺に素っ気ない態度を取るようになった。きっとこの事が原因である。


もう限界である。二度とこんな奴には会わん、そう誓った。家に着いてから、夕子にメールを送ったが、返信はなかった。

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