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恐怖のゴリラ  作者: 松戸 尚
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態度までゴリラになった男

初めて夕子と居酒屋に行ってからたった2週間の間に、俺達はすでに5回も飲みに行った。6回目の約束をした日に、俺は花屋の閉店時間5分前に店に入ると、そこには身体の大きな男がおり、花束を購入していた。

その大男をよく見ると、それは間違いなくジョルジュであった。俺はジョルジュに話しかけた。

「ジョルジュだよな。久しぶり。」

「おお、久しぶりだな。花買いに来たの?」

「そうだね、あ、でももうすぐ閉店だな」

久しぶりに話したジョルジュは昔のような内向的な感じは無くなっていた。そして俺は夕子と飲みに行く事を隠した。何故って、俺は彼女がいるし、それに久しぶりに会ったジョルジュに、わざわざ言う必要もないから。

夕子がレジを締めて閉店しようとしたので、俺は花屋を出て、店の前で待つ事にした。しかし、何故かジョルジュが店から出てこない。中を覗くと夕子と何か話している様子だ。


5分ほど待ったであろうか、夕子とジョルジュが店から出て来た。

俺は夕子と隣の居酒屋に入る予定なのだが、ジョルジュが一向に帰ろうとしない。夕子も困った顔をしているのだが、ジョルジュは御構い無しだ。

いつまで経っても閉店した花屋の店先での立ち話が終わらない。とうとう痺れを切らした俺が、3人で隣の居酒屋で飲もうかと提案したのである。これが俺の最大のミスであり、恐怖の始まりであった。


居酒屋に入り、ジョルジュは夕子の隣に座った。おいおい、そこに座るのか?という普通の人であれば当たり前に突っ込みたくなる行動を取った。

一体なんなんだ。そもそも、俺と夕子の関係については何も気になる事はないのか。

俺としては非常に面白くない展開ではあるが、忘れてはならない事がある。そう、俺には彼女がいるのである。


ジョルジュの行動については大変に遺憾であるが、もともと何を考えているか分からん奴だったのであり、そんな事を気にしても仕方ない。

まあとにかく、ジョルジュの現状でも質問してやろうといろいろ聞いたのだが、相変わらず会話にならん。態度は身体に追いつきデカくなったが、モゴモゴと喋るのは変わっておらず、聞いた事にもはっきり答えない。

分かった事はと言えば、未だ親と同居をしており、仕事はオペレーター、と言ってもそのオペレーターってのが一体何なのかは不明であるが、そしてたまに夕子のいる花屋で花を購入しているらしい、そんなところである。


初めはそんな会話をしていたのだが、酔いが回ってきたのか、ジョルジュの態度が益々デカくなってきた。そして職場での事を愚痴り出し、居酒屋の店員に対する言葉使いも横柄で、俺はもう我慢が出来なくなって、店を出ようと提案した。

2人とも同意し、会計をしようとしたのだが、ジョルジュは一向に席を立とうとしない。しかし俺が促し、やっと店を出た。そしてどうやら会計は全て俺の担当のようで、金を払う様子がない。まあ飲み代くらい払ったって構わないが、何か納得行かないものがある。


とにかく店を出る事に成功、ってそんな大袈裟な表現をするようなものではないのだが、そう表現したくなるほど疲弊した。

飲んでる時にジョルジュが話していたのだが、駅から少し行ったところに行きつけの店があって、この後、そこで軽く飲んで夕食を済ませて帰宅するらしい。

ならば俺は夕子ともう一軒行って飲み直したいところだが、一向にジョルジュが帰らない。

俺はかなり面倒臭い気持ちになり、夕子と飲み直すのは諦め、家のある方向が違う夕子と別れ、ジョルジュと一緒に帰路についた。


家に向かって歩いている間、ジョルジュはずっと一人でぶつぶつと何か呟いている。

何を言っているのかと思い、注意深く聞いてみたのだが、ハッキリとは聞こえてこない。どうにか聞き取った言葉の断片は次のようなものだ。

「バカヤロウ、、、、、ふざけやがって、、、知らねーよ、、、やんのかよ、、、、、ナメんじゃねーよ、、、、、、、」

こんな言葉を延々と言っているのである。

そして禁煙である場所で、さっきからずっとタバコを吸い続けており、この姿だけ見れば、世の中からドロップアウトした人間にしか見えないのである。

いや、むしろドロップアウトした人間であれば、ドロップアウトした自覚があるのであり、ジョルジュは実際にはドロップアウトしていない訳で、自身の行為と自身の評価が一致していないと思われるから面倒臭い。


俺の家が近づき、ジョルジュと別れた。別れ際にジョルジュからまた飲みに行こうと誘われた。

いや、二度と行きたくない、とは言えず、そうだな、と言って誤魔化したつもりである。つもりであった。誤魔化せたはずだった。にも関わらず、ジョルジュから飲みに行こうと電話があった。

電話番号を教えるんじゃなかった。

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