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第2話 流れ人

「勇者が戦う理由って言ったら一つしかないでしょ?

魔王を倒すんだよ。」


「 へーなるほど確かに勇者って言ったら魔王を倒す人だよねーなるほどなるほどーよし、じゃあいっちょ魔王倒してみますか!


———ってなるかい!

なんでやねん!」


あまりにもお約束すぎて関西風にツッコんでしまった。

3人組も呆気に取られている。


「—ごほん。すまない、とりみだしてしまった。

つまり、俺は今から魔王の所に乗り込めばいいのか?」


「え、今からか!?

いくら勇者でもそれは無茶だ!

しっかりとレベルを上げて、装備と仲間を揃えてから行くべきだ!」


中くらいの背の男が慌ててなだめてきた。そういうものなのか。


(装備と仲間か……まさにゲームって感じだな。

やったことないけど。)

「仲間はまだしも、その装備はどこで手に入るんだ?

この剣だけじゃ駄目なのか?」


「基本的には街の武器屋や防具屋だな。

強いモンスターを倒した時に、ごく稀に強力な装備が手に入ることがある。

初めは買ったものでもいいが魔王を倒す時にはそういった強力な装備を身につけた方がいいと思うぞ。」


強い敵を複数回倒してやっと手に入る装備か……

これはすぐには装備を整えられそうにはないな。


—まぁ、いつ目が覚めるかもわからないし、それまでやってみるとするか。

今まで、ゲームなんて時間を食いつぶすだけの暇人の娯楽だと思っていたけど、案外楽しそうだな。

起きたら風雅に買ってやるか。

ちなみに風雅というのは俺の妹の名前だ。剣持(けんもち) 風雅(ふうか)。俺は剣持 龍斗だ。

もしかして親が元ヤンなのか?

と思われそうなキラキラネームだが、実際俺の母親はむかし地元で有名なスケバンだったらしい。

どうでもいいけど、母親の旧姓は金剛らしい。ほんとにどうでもいいな。


「—その強力な装備とやらを集めるには骨が折れそうだな。

とりあえず街の防具屋に行ってみたい。

案内してもらっていいか?」


「もちろんだ。

せっかく勇者誕生の瞬間に立ち会えたんだ。

防具屋だけじゃなくギルドにも連れていってやるよ。」


—ギルド?なんだそれ?


「ああ、ギルドっていうのは、冒険者の名前を登録するところで、簡単な審査を受けると冒険者としての身分証が貰えて、その他にも冒険で必要な薬を買ったり、モンスターが落としたアイテムを売ったりも出来るんだ。」


おお、聞く前に教えてくれた。

こいつらもいい加減、俺のゲーム世界への理解度を察してくれたらしい。


「なるほど。

ということは、さっきの蜂……キラービーが落とした針も売れるのか?」


「ああ、これだと一つ50円くらいで売れるぞ。

飯付きの宿に二泊できるくらいの金額だ。」


——ん?50「円」?

俺でもわかる。普通ゲームの世界ではそれ専用の通貨単位があるはずだ。50Gみたいな。

……まぁ、そこは俺の夢の中、という事で納得するとして、50円で飯付き二泊ってどういうことだ?

1時間バイトしただけで2週間以上も泊まれるじゃないか。

デフレなんてもんじゃない。俺の金銭感覚は小学生の頃から止まってるのか?


そこまで考えて、ある事を思い出した。

「……えっと……じゃあこれってどれくらいの価値があるんだ?」


取り出したるは一万円札の束。

俺のバイト先は今時珍しい給料手渡し制で、今日がたまたま給料日だったこともあり、上着の内ポケットに入れたままになっていた。


「な……

そ、それ全部一万円札なのか!?

ちょっと裕福な家庭のの全財産レベルじゃないか!」


3人組のうち一番背の高い男が、俺がキラービーをワンパンした時よりも驚いている。


というか、これでの全財産って……

30万くらいしかないぞ


いや、50円で二泊できることを考えると、現代日本で飯付きの宿に泊まるなら5000円くらいかかるから、それ×2で1万円。

つまりこの世界では円が現代日本の200倍くらいの価値があるのだろう。

30万円×200で6千万円。それなら理解出来ないでもない。


「冒険するのに必要な装備を揃えるのに、どれくらい必要なんだ?」

「1000円くらいあれば最低限はそろうと思うぞ」


1000円……現代で言うところの20万円ってところか……

装備品って結構するんだな。

いや、あんまり安くても性能に不安が出るし、これでも安いくらいなのかもな。


実際、俺からしたら安いわけだし。


「それくらいなら問題ないな。

案内を頼む。

あ、ところで君たちの名前はなんていうんだ?俺の名前は剣持 龍斗だ。」


「ああ、お安いご用だ。

俺達の名前は——」


彼らの名前は、背が高い方からアルター、ベーファ、ガントだそうだ。

α、β、γだね。覚えやすい。




三人に案内されて1時間ほど歩いたら、大きな街が見えてきた。

木をくりぬいたりツタを編んだりして作った原始的な家が多いのに、不思議なくらい幻想的で構造美に溢れているように見える。


……というか、中にはどうやったら自然のものだけであんなに大きな家が作れるんだってくらいの大きさのものもある。

25階建てのビルくらいの高さがあるのに、なんで崩れないんだ?


道中現れたモンスターは、みんな俺がワンパンした。

せっかくの綺麗な剣が汚れるのが嫌だから素手で殴った。


「おお、見えてきたな。」


「ああ、あれが俺達の故郷、【エルブンガルド】だ。」


—ん?エルブンガルド?

ってたしか、妖精さん達が住んでる空想上の国じゃなかったっけ?


「ということは、お前達は妖精……エルフなのか?」


「何をいまさら……

この耳を見て気付かなかったのか?

あと、何か勘違いしているようだが、エルフと妖精は別物だぞ。」


あ、そっか。

妖精はフェアリーか。

じゃあ妖精さん達の国の名前ってなんだっけ?

ティルナローグ?アヴァントヘイム?


まぁいいか。


「これは失礼。

とりあえずギルドとやらに行くんだっけか?」


「ああ、そうだ。

ギルドは街の中心にある領主の城の隣だ。

ついてきてくれ。」


ギルドに向かう道中、アルターにエルフについて教えてもらった。

どうやらエルフという種族は、男は弓矢や細剣によるスピード戦法を得意とし、女は基本的に魔法を使うらしい。


街を行き交う人々を見た感じだと、男女共に容姿に優れていて、加齢による見た目の劣化は少ないようだ。

羨ましい話だな。



「よし、ついたぞ。

ここがギルドだ。」


「これ……ギルド……え?」


案内された建物は、一つの建物としては現代日本でもなかなか見ることが出来ないような大きさだった。

目算で幅は約100メートル、奥行は50メートルちょっとくらい、高さは……入口の前からだとよく見えないくらいある。

一瞬、マンモス団地かと思った。

てゆうか、隣にある領主の城とあまり大きさが変わらないのだが、問題ないのだろうか?


「ものすごく大きいな。

こんなに大きくする必要あったのか?」


「まぁ、職員は住み込みだし、よそから来た大物客なんかは宿屋じゃなくこっちに泊まるからな。

これだけの大きさがあっても無駄にはなってない。」


大物客か……

それが他の貴族なんかも含まれるとしたら、城とタメ張るくらいの大きさにするのも納得だ。

この街よりも大きな街の領主を自分の城よりも遥かに小さい建物に寝泊りさせては、変なイチャモンを付けられかねない。


まぁそんな大人の事情は置いといて、やるべき事をやってしまおう。

「ここで冒険者としての身分証がもらえるんだったな。

どこの窓口にいけばいいんだ?」


「ああ、それなら1番窓口から6番窓口までを順番に回っていって必要書類を作っていくんだ。」


なんか、免許センターみたいだなぁなんて思いつつ言われた通りに窓口を周り、最後に個室に通されてステータスの確認をしてもらった。


俺のステータス確認係は緑の髪と大きな青い瞳が特徴的なエルフの少女だった。

まぁ、エルフだから本当に少女かはわからないけどな。


「はい、ではステータスの確認をさせてもらいますね。


……え?なにこのステータス……

レベルは……18…

種族は……ええっ!?流れ人!?」


なんかめちゃくちゃ驚いている。

元から大きな目をさらに大きく開いて口をパクパクさせている姿はとても可愛らしかった。


「流れ人……らしいな。

俺のステータスがそんなに変なのか?」


「そりゃあ変ですよ!

こんなの普通ならレベル100オーバーの人のステータスですよ!

噂には聞いてましたけど、流れ人ってやっぱり滅茶苦茶なんですね…」


なんか若干失礼だな…

いや、それよりも今この子は気になることを言ってたな。


「噂には聞いてたって、最近俺以外にも流れ人が現れたのか?」


「え、ええ。

といっても14年前ですけどね。

金剛 由美さんって女性で、今では世界一の魔法使いですよ。

しかもその人、魔法使いなのに王国騎士団の団長を素手の喧嘩で倒したらしいんですよ。」


——ん?

金剛……由美……金剛……


それってもしかして俺の母親じゃね?

キャラの名前考えるのって大変ですね……

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