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列車内にて
タタタン…タタタン…。
列車に揺られながら、一人の髪を逆立てた男が暗い窓の外を眺めていた。
傍らには、布を巻き付けた長い物体。中身は窺い知れなかった。
ガラッ。
個室のドアが開けられる。
「おい、まだ着かへんのかっ」
イライラした様子で、現れた女性が関西訛りの声を上げた。男が振り向く。
「しょーがねぇだろ。列車ってのは時間通りにしか出ないんだから」
苦笑いを浮かべながら男が嗜める様に言う。
対する女は、ムスッとした表情で男の対面に腰を下ろした。
「何で本部ももっと早よう時間に連絡を寄越さへんかったんや!」
「ん…。まぁ相手も東京さんだからな。まさか北海道から志願者が出るとは思って無かったんだろ」
落ち着けよ、と男が付け加える。
時刻は夜十時。到着まではまだ時間が掛かりそうだった。
―――純能介…。
逸る思いを乗せ、列車が走り抜けていった。