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『TLS第四話』  作者: 黒田純能介
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二十階、『破壊するモノ』


カツ、カツ、カツ。


階段を上りきる。眼前には扉。辺りには他に何も見受けられない。


「…ここか」


如月が呟く。


「………」


布津が刀を握り締め、その扉の前に出る。


「俺が先に突入する。用意は良いか?」


「言うまでも無い」


その言葉にニヒルな笑みを浮かべる。…扉に手を掛けた。


バンッッ!


二人が室内になだれ込む。



……広い一室が眼前に広がる。

床には絨毯が敷かれ、真直ぐ突き当たりにはガラス張りの壁。そこから蒼い月光が降り注いでいた。


…その月光を浴び、一人の人物がデスクの側に佇んでいる。他に誰かが居る気配は無かった。


「…ようやく、此処まで来たか」


その人物が背を向けたまま語る。


「キサマ等もこれまでだ!観念しろっ!」


如月が進み出て叫ぶ。


「フッフフ。威勢だけは一人前だな、如月 由雨。だが」


その人物が振り返った。


仮面の下の眼光が、二人を射る。


「何人も私を止める事はできん」


スッ。


手にした剣を向ける。


「こっちは二人だ。逃げられると思うな」


如月が小太刀に手を掛け、布津が身構える。


「フッ…」


「何がおかしい!」


「お前は、このセカイをどう見ている?」


「……何?」


質問の意図が分からず、疑問を口にする。


「…この『セカイ』だよ。……表の日常に生きる怠惰な人間達は仮初の平穏に甘んじ、裏の日常ではテロや闘争が絶えぬ」


「……何が言いたい」


「私はな、全てを無に、ゼロにしたいのだよ」


「………」


布津は押し黙っている。


「全てを破壊してゼロにし、人間を原初に戻す。……それが『G・B』、『ゴッドブレス』の思想」


首領が外を振り返り、天を仰ぐ。


「この静かな蒼い月が、いつまでも続く事を私は望む。だが放っておけば、人間は全てを滅亡へと向かわせる」


「だから全てを破壊すると言うのか?」


「そうだ。…お前達の言う、平穏というものがそれで訪れる」


「詭弁を語るなっ!」


シャラッッ!


如月が小太刀を抜く。


「キサマのエゴで、どれだけの人間が死んだか分かるかッ!?」


「………」


再び振り返り、如月を見つめる。


「…詮無き事。全ては大義の為。……そうか、お前は」


「五月蠅いッッ!」


悲鳴の様な如月の怒鳴り声に、その先が掻き消される。


「……首領よ」


布津が不意に口を開く。


「お前は、もう待てなかったのか」


「………」


沈黙。それが肯定ともとれた。



「…NO.6…。お前も見てきただろう?かつてお前が始末してきた者達を」


その言葉に眉をひそめる。


「在る者は支配欲に駆られ、在る者は富に惑わされ、無用な行動に走る」


「………」


布津は黙って聞いている。


「結局、人間は知恵を得るべきでは無かった。アダムとイヴがエデンを追放された様に」


首領が一歩、踏み出す。


「私はもう見てはいられなかった。これ以上人間が醜態を晒すのに、我慢ならなかった」


「……そうかもしれん」


「!?…何を!?」


如月が喰ってかかりそうな勢いで布津を見る。


「増長し過ぎたのかもしれんな、人間は」


シャラン。布津が刀を抜く。


「だが、それを理由にするのは、お前の思い上がりだ…」


チャキッ。正眼に構える。


「………」


如月はジッ、と布津を見つめていたが、直ぐに向き直り構えた。


「…そうか。やはりお前達とは相容れぬか…。残念だ」


ヒュンッ。


剣を払う。


「来い。お前達と私、どちらが正しいか見極めてやろう!」


「…後悔するぞ」


「…倒す」



最後の闘いが始まる。


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