死神と刀と
最初に動いたのは如月だった。
「ハアアッ!」
愚直なまでの突進から、ニ連の斬撃。
カキキンッ!
布津は難無く片手で弾き返し、正拳突きの要領で拳を突き出すッ!
「ハッ!」
しかし如月は読んでいたのか、跳躍し躱す。
トンッ。
布津の肩を足場にし、後方へと着地。
「正気に戻れッ!布津ッ!!」
向き直り怒鳴る。
しかし反応は無い。
…スッ…。
布津が構える。
「貴様はその程度なのかっ!」
チャキッ。
左手を下段、右手を変型脇に構える。
タンッ!布津が床を蹴るっ!
まるで嵐の様な突き。刺突の雨が如月を襲う。
…一撃一撃をいなしながら、思考を巡らせる。
―――…どうすればいい…。教えてくれ…。
カタカタと背中の刀が笑う。
休み無く攻撃を繰り出す、サングラスの下にある布津の表情は読めなかった。
「!」
不意に気付く。
―――あれはっ!
ドンッッ。
いつの間にか壁際まで追い詰められていた。
ブンッッ!ガギンッ!
大きく振りかぶった一撃を躱す。目標を見失った切っ先が壁を穿った。
―――奴はあんな物は着けない…。
ギギギ、と音がしそうな程緩慢に、布津が首を巡らせる。
如月の視線は、その耳元に集中していた。
イヤリングが、そこで揺れている。
―――一か八か、賭けてみるか。
布津が完全に向き直り、歩みを進める。
「オオオォォォッ!!」
真正面から布津に迫る。
ヒュンッ!
横薙ぎに払う右拳。身を低くし躱す。
―――狙いは、左耳ッッ!
直後、左の拳が襲い来る。
ガギャギャギャ!
それに合わせ、左手の小太刀で軌道を反らす。いなしきれず頬を僅かに掠め、紅い線が走る。
―――とった…!
パキィィンッ…!
突き出した小太刀の切っ先が、イヤリングを捉えた。