伝令
「おはようございます~」
浅野が勢い良くドアを開け挨拶をする。
「………」
如月は無視を決め込む。
「あの…如月さーん?」
……コイツ、昇格してから更にうっとおしい男になったな…。
あれやこれやと返事を返させようとする浅野に、如月は溜息を吐いた。
「ヘイ!ミス、キサラギ?」
「やかましいっ!」
突然怒鳴る如月に、浅野が後ずさる。
「す、すいません…」
「………」
このままでは埒があかないと悟ったのか、浅野が観念する。
「えー。という訳で」
懐に手を伸ばし、
「伝令届いてました」
取り出した封筒をひらひらとさせる。
「先にそれを言え。……呼んでくれ」
「はい。…えーっと…『ようやく準備が調った。早速だが布津君の所在が掴めた。』」
二人が顔を見合わせる。
「『場所は都内の中央区にあるセントラルビル。どうやら敵の本拠地である事が判明した。布津君はそこに囚われているらしい。直ぐに向かってくれ。尚、現地にて補充人員と、それとは別に助っ人を用意する。何としても彼を取り戻せ。以上』」
浅野が手紙を閉じる。ふと、如月を見やった。
―――鋭い眼光。その裏の思考は読めなかった。
「…行くぞ」
側に立て掛けてあった、刀を手にする。
―――妖刀、『黒鴉』…。かつてあの男が手にしていた刀。
今の主人は囚われの身、か。呪われた刀よ。
それを背中にくくり付ける。更に、側に置いてあった包みを拾い上げ脇に抱える。
浅野は既に準備を終え、携帯電話で何処かと通話をしていた。
「…はい。手配をお願いします。では」
終話ボタンを押し、如月に向き直る。
「現地までの移動手段確保しました。十分程で到着するそうです」
「…分かった」
如月は立ち上がると、出入り口へと向かう。遅れて浅野が後に続く。
「………?」
ドアを開けた所で、如月が立ち止まる。
………何か落ちている。…封筒だった。
「あれ…?伝令はあの一枚だけだったしなぁ?」
浅野が首を傾げた。如月がその封を切る。
中には一枚の写真。そこには…
「「!?」」
二人に戦慄が走った。




