十八階
ガコンッ。キンッ。
僅かな振動を残し、エレベーターのドアが開く。
「………」
注意深く辺りを見回しながら歩を進める。
この階層のエレベーターホールは照明が煌煌と照らされていた。辺りには何も無い。
左右には幾つかの扉。内部の様子は窺い知れなかった。
眼前には通路が伸び、突き当たりまでが見通せた。
…エレベーターが見える。やはりランプは消灯していた。
コツ、コツ、コツ。
他に動くモノの無い廊下を歩く。
ガチャガチャ。
ドアノブの一つに手を掛けたが、開く気配は無かった。他のドアも調べたが、いずれも鍵が掛かっていた。
「………」
残るはエレベーター。前方を振り返る。…先程と変わらず動きそうな気配は無かった。
歩み寄りボタンを押す。案の定反応は無し。ふと横を見ると、鉄の扉がそこに在った。
ガチャ。キイィー…。
先程とは打って変わって、すんなりその口を開けた。
ヒュオォ…。
眼前には、地上を一望できるロケーション。
非常階段の様だった。
「……!」
ピタリと動きを止める。
風に乗り、爆薬の匂いがしたからだった。
周囲を見回すが、その痕跡は見受けられない。
意を決し、一歩踏み出す。足場は異常無かった。
キイィー…。バタンッ。
嫌な軋みを立て、鉄の扉が閉じる。
「………」
上階へと続く階段を見上げる。黒く塗られた階段は、ともすると夜の闇に溶け込みそうだった。
月の光が辛うじて、その存在を示す。
―――…カツン。
一段、足を掛ける。異常は無い。更に上へと昇る。
かくして一層分上がりきり、同じ造りの鉄扉前に立つ。
ガチャ。キイィー…。
一層下と同じ軋みを上げながら、扉が口を開ける。如月は素早く中に潜り込んだ。