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守名 庵
男が足を踏み出す。
カチッ
「!?」
ズガァァァンン!!!!
突如起きた爆発。男は躱す間も無く爆風と炎に包まれる。
…守名が踵を返す。
「…お前がな」
ふと、顎に手を当てる。
「…名は無いか。忍法『欺き』…という所だ。お前は此処に降り立った時点で、俺の術中に嵌まっていた」
守名は始めから、男に手裏剣を叩き落とされる事も、斬撃を見切られる事も、相手が身を伏せる事も、そしてその場を動かない事も予想していた。
それを見越し、斬撃を弾かれた時に爆薬を仕掛けていた。しかも、身を伏せただけでは気付かぬ様、巧妙に。
ヒュンヒュンヒュン。
爆風で天高く巻き上げられた剣が降ってくる。
スタンッ。コンクリートに突き刺さった。
ヒュウゥ…。
冷たい風が、炎を吹き消していく。
「随分大層な墓標になったな」
守名が歩き出す。
天に輝く月が、勝者を照らしていた。