助っ人
特殊警棒による連打。浅野も習練を積んだが、分が悪すぎた。受け切れず一撃を水月に受ける。
「ガッハ…ッ!」
「浅野ッ!」
無様に転がる浅野に、追撃しようと黒服が迫る。
「やらせるかッ!!」
死角から二刀で首筋を打ち据える。しかし動きが止まっただけだった。
「ハッ!」
その脇腹に鋭い蹴り。
…一瞬、
ぐにゃり
という感覚を残し、男がよろめき倒れる。
「浅野!大丈夫かッ!?」
「え、ええ。何とか骨は保ってます…っつ」
杖を支えにし立ち上がる。
「こいつら、まるで痛みが無いみたいっすね…!」
浅野の感想に、頷かざるを得ない。
「死体、だな。…冗談抜きに」
浅野が目を丸くする。
「本気ですか…?」
そのやり取りの間にも、黒服達がジリジリと間合いを詰めていく。
「…あぁ。この状況で冗談は言えん。…前言は撤回しよう」
小太刀を腰のベルト両脇に差し、左手の一刀を抜き放つ。
「…だが、二つ抜く必要は無い」
…ユラリ…。ユラリ…。
正に死人の体となった黒服達が近付く。
と、その時。
バギィン!!
ガッシャァァァン!!
正面入口。派手な音。シャッターとガラスの割れる音がした。
「何だ!?」
二人がそちらを注視する。
パリン、パリン…。
「…っと。派手過ぎたかな」
割れたガラスを踏み締め、一人の男が姿を現す。何より目に付くのが、その右手に持つ大剣。それは男の身長程の長さがあった。
「…よっ、と」
男が大剣を背負う。
「何者だ」
如月が問う。男がその声に視線を向ける。
「おっ。アンタが如月さんか?資料どうりの人だなぁ」
髪を逆立てた男が、二カッと笑いながら言う。
「コラァ!ツンツン!いくらなんでも派手過ぎやでっ!」
男の背後、破壊された入口から関西訛りの声と共に女が現われた。
「俺は須藤 叢雲。このキンキンやかましいのは敷島 侑子。…助っ人って事で聞いて無い?」
「誰がキンキンうるさいんや?」
敷島と呼ばれた女が、須藤と名乗った男を小突く。
「…味方か。見ての通り緊急事態だ。援護を頼む」
須藤が黒服達を見やる。
「そうらしいな。…あんたら、先に行きなよ。俺達だけで何とかするからさ」
「イヤ、厳しいっすよ~?」
味方の登場により、戦意を取り戻した浅野が冗談っぽく言う。
「いーからいーから。それより、早くアイツを助けてやってくれよ」
如月が目を見張る。
「…あの男の事を知っているのか」