絶望的な闘い
「待てキサマッ!」
ガコンッ。ブゥンンン…。
制止の声も空しく、唸りを上げながらエレベーターが上昇していった。
「おのれ…」
眼前には数十人の黒服。いずれも腕の立つ事が窺えた。
………冷静になれ、如月。
一呼吸。大きく吐く。
「障害は、取り除く。浅野。突破するぞ」
「合点!」
ブンブンッ、と浅野が戦闘杖を振り回す。
…黒鴉…。お前の力は借りん。
手にした刀を納刀し、持っていた包みを開く。
バサァッ。
…中から現れたのは、二振りの小太刀。それを両手に携えた。
「貴様等など、抜かずとも倒す事は容易」
スッ…。
納刀したままの小太刀を構える。
「…ゆくぞ」
言うが早いか、如月が床を蹴るっ!
先頭にいた男は不意を突かれ、回避が間に合わなかった。
バキィィ!!
顔面を左に薙払われ、横に吹っ飛ぶ。
しかし残りの男達は意に介せず、腰に差した特殊警棒を抜き放つ。
「………」
如月が場の空気を感じ取る。
……何だ……この違和感は……。
「如月さんッ!」
浅野の声にハッとする。眼前にいつの間にか黒服の一人が迫ってきていた。
「くっ!」
ガギィィ!
辛うじて攻撃を払うと、強烈な突きを繰り出す!
ズガッッ!!
喉を真芯で捉え、男が吹き飛ぶ。
……何かがおかしい…。
男がユラリと立ち上がる。さながらまるでゾンビの様であった。
「うりゃぁぁぁ!!」
少し離れた所で、浅野の奮闘する声が聞こえる。
棒術のリーチを最大限利用し、複数の黒服を薙ぎ倒す。
…そこで気付く。
…こいつら、呻き声一つ発していない…。
薙ぎ倒された黒服が次々に立ち上がる。
「な…何なんだこいつらッ!」
「浅野ッ!中途半端な攻撃は駄目だっ!」
…さっきの私の一撃は、確実に喉を潰していた。考えたくは無いが、奴等ならやりかねん…!
「致命傷を与えても、倒せるかどうか…」
「ちっくしょぉぉ!!」
浅野が戦闘杖を闇雲に振り回す。
ある者は腹を突かれ、ある者は顔を薙払われ、ある者は腕を折られた。
闇雲に振り回している様に見えたが、浅野は的確に急所を狙っていた。
ユラリ……。
次々と黒服が立ち上がる。
「何なんだこいつらッ!」
浅野の悲鳴が上がる。
…恐らくこいつらは…。
「死人、か」
一人呟く。
「うわぁっ!?」
数人の黒服が浅野に迫る。