5.犬の体温
足腰が弱り、ベッドに跳び上がれなくなるまで、バロンと私は一緒に寝ていた。
夏場は暑いのであまりくっ付いてくれないし、時々床に降りてしまったが、冬場はぴったり寄り添っていた。バロンが触れている部分はいつもじんわり暖かかった。
夏が終わり、朝晩冷え込むようになると、自然と足元にバロンが来て寝ていた。寒さが増すにつれ、密着度が上がっていくのが恒例だった。
真冬には毛布を分け合うようにして寝た。ラブラドール特有の背中の硬い毛が、素肌に当たってこそばゆかった。
寝るときだけじゃない、気付くとバロンは体の一部を私にくっ付けていた。ずうずうしく膝枕で寝ていることもあった。
私も何気なく、傍にいるバロンをもしゃもしゃと撫でまわしながら、テレビを見たり、ネットをしたりしていた。
いつの間にか、バロンの体温がそこにあることが普通になっていた。
今、介護の為に体を抱き上げると、体温がが伝わって来て熱いくらいだ。
反対に、動かさなくなってしまった足は冷え切っている。冷たい四肢を順番にマッサージしていると、悲しくなってくる。もう前足は、人の手で動かさなければ伸びきったままになり、浮腫んでぶよぶよしている。
冷えが辛いのか、夜中に鳴くようになった。足をさすってやり、寝返りを打たせてやる。夜中にちょくちょく起こされるので寝不足気味だ。だるくてボーっとする日もある。いつまでこんな日が続くのだろうか。ちょっと疲れてきたよ。
犬の体温は人より高い。老いた犬でもそれは変わりなく、秋の冷え込んだ夜に触れれば、以前と変わりなく温かい。苦しそうに浅く上下している胴体を撫でれば、甘えてくる。
自力では何も出来ないので、事あるごとに鳴いて人を呼ぶようになった。
喉が渇いた、お腹がすいた、寝返りを打ちたいなど、分かるものもあるが、何で鳴いているのか分からないことも多い。
そんな時には、ただ傍にいてやる。それだけで鳴き止んだりする。触れ合っているだけで落ち着くようだ。
伝わってくるバロンの体温。何でこんなに暖かいんだろう。
いつかこの体が冷たくなってしまうのかと考えると、なんとも言えない気持ちになる。
昨日、久しぶりに寄り添って寝てみた。生きている動物特有の暖かさがあった。




