挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
齢5000年の草食ドラゴンだけどいつの間にか邪竜認定されてたらしく、いきなり生贄少女がやって来た ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~ 作者:鯖味噌懐石

第一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1/63

生贄少女は何としても食われようとする


「どうぞこの私をお召し上がりください邪竜様」
「いやあ、そう言われても困るのう。わしって草食なんだけど」

 鍾乳石の連なる深山の洞窟に、たいまつの明かりが一本だけ燃えている。
 頭上に炎を掲げているのは、薄絹の衣を身に纏った10歳ほどの少女だ。

「――私ではお気に召さなかったでしょうか」
「お気に召すとかそういうんじゃなくてね……わし、肉は基本ダメなのよ。魚もあんまり。竹の新芽とかが好き」
「不肖ながら、私も肉は柔らかい方ではないかと自負しております。どうか一度ご賞味あれ」
「いやいやいや。お主、おかしくない? 食べられたら当然死んじゃうのよ?」
「元より覚悟の上です」
「えぇ……なんでそんな覚悟してるの? わしに食べられても特にメリットとかないと思うんじゃけど」

 少女は跪いて頭を下げた。

「そのようなことを仰らないでください。邪竜様。あなたほど偉大な方に貪られるなら私は本望でございます。ですが――どうか私の命と引き換えに、魔王を討つ助力をいただきたいのです。今は魔王軍の幹部として君臨する貴方ですが、その真の力は魔王をすら凌ぐとの評判です。我が命をもって、貴方の力を人間に貸していただきたいのです」
「え? わし、魔王軍の幹部ってことになってるの?」

 5000年くらいずっと草木ばかり食ってただけなのに。
 そりゃあ図体はでかいから、動物とか人間に会うとえらく怯えさせてしまうけれど、別に凄まじい力があるわけではない。どちらかといえば臆病な性質で、敵わないとみた相手とは距離を置くことで平穏に過ごしてきた。
 強いていうなら、相手の強弱を見極める眼力だけはまあ優れている方かもしれない。

「お願いします。どうぞ力をお貸しください。この私の身はどうなっても惜しくありません」
「いや……気持ちは分かるけどね。わしってそんな大それた存在じゃないのよ。ドラゴンといっても図体の大きい長生きのトカゲってだけよ? なんか少し聞いたことあるけど、魔王軍って強いんでしょ? わし、そんなのと戦ったらすぐお陀仏じゃから。お主だってまだ若いんだし、そんな命を粗末にしないで家に帰りなさい。親御さんも心配しとるじゃろ」
「天涯孤独な身の上ゆえ、悲しむ者はおりません。よしんば村に戻ったところで、役を果たせず逃亡した贄の行く末など知れております。いずれにせよ死しかありえないなら、ここで邪竜様の糧になりたいと思います」
「だからわし、邪悪でもないし肉は食わんよって。甘い樹液を壺に集めてくれた方がよっぽど嬉しいんじゃけど」
「分かりました。身体に樹液を塗って出直してきます」
「お主の身体に塗らんでええから。っていうか、持って来られても魔王討伐の手伝いなんてできんよ」

 わしは洞窟の中で大きく身じろいで、首を伸ばして竹の新芽を少女の前に積んだ。

「ほら。わしの好物はこんなの。お主を食べるような趣味はないの」
「私の身体は食べないということですか……」
「ん。そういうことじゃ。もしこのまま帰って怒られるなら、付き添ってやってもええ。とにかくわしは争い事なんてできんから――」
「では、身体ではなく魂の方を召し上がるということですね」
「お主の発想、なかなかぶっ飛んどるなあ。魂ってどうやりゃ食えるのか想像も付かんよ」

 ここでわしは、たいまつに照らされる少女の顔をじっと見た。
 生贄とされるためか、白い肌は清められて僅かに香の匂いを漂わせている。ただ、天涯孤独という境遇のためか、目はどこか虚ろな闇をたたえている。

 力はほぼ無力と見える。微かに素養があるのか魔力の気配は漂わせている。もったいないと思う。生贄などにせずとも、訓練を積めば魔導士になれように。
 とはいえ、ほとんどの人間にはまだこの魔力の片鱗は感じられまい。

 見ているうちに少女は衣の内から宝石飾りのついた短剣を取り出したが、敵意は感じられなかった。
 武器というよりは捧げ物の類かと思って安心していると、いきなり少女は短剣を己の喉笛に構えた。

「今、私の命を絶って魂を捧げます。しばしのお待ちを」
「待って。ちょっと待ってお主。そんなことしなくてよいから」
「しかし、命を絶たねば魂を捧げられません」
「何度も言うけどそんなもの食わんから。お主の死体の処理に困るだけじゃわい」
「ご心配なく。でしたら墓穴を掘ってからその中で死にます」
「どうしてそう死ぬこと前提で話を進めるかのう。わし、5000年生きてて今が一番困惑しとるよ」
「私は何が何でも生贄としての責を果たさねばならぬのです。それが村の人達から与えられた役割ですので。何としても食していただかねば」

 こりゃあすごいのが来た、とわしは呆れる。
 もちろん食べるつもりはない。かといってこの場で自殺されても後味が悪い。
 考えた挙句に、

「……ああ、分かった分かった。それじゃあもう今食べた。わしクラスの竜になると生きたままでも魂を食えるんじゃ。お主の魂を今ちょこっと食って満足した。村の連中にも今からそう説明してやるから、安心してとっとと帰るがいい」
「本当ですか? 食べられたのですか?」
「そうじゃ。あんまり心配はせずともよい、寿命が二日縮むくらいしか食っておらんから。お主の魂はたいそう美味だったのでそれだけで満足じゃ」
「食べられた……それでは私は邪竜様の眷属になったわけですね」
「ん?」

 わしは長い首を傾げた。
 この少女の論理構造がよく分からない。

「ま……まあ、そういうことでもええかの。ともかく、お主を村に送り返そう。裸足では怪我をするじゃろうから、背中に乗るがよい」
「そんな。邪竜様の手を煩わせるなど……はっ。なるほど。眷属となったからには私と邪竜様は一心同体。我が身体は邪竜様のものであるがゆえに気遣いは不要ということですね」
「よく分からんが、それでええよ」

 乗りやすいように地に身を伏せると、少女はひょいひょいと軽い身のこなしで背中に乗ってきた。
 ぺたりと背の上に正座し、

「では行きましょう邪竜様」
「村ってどっちじゃっけ? 適当に案内お願いね」

 ずしんずしんと足音を立てて洞窟から抜け、山道を人里に向かって下りていく。
 獣たちはこちらを見るなら逃げるかひれ伏し、中には供物のつもりか狩りの獲物を置いていく肉食獣もいる。
 わし、食べられないのに。



 足音はほとんど地響きのように聞こえるのだろう。
 村の入口が見えたころには、村の男衆は出迎えのように集結していた。
 実際は出迎えというよりも邪竜ということにされているのわしを警戒しての戦闘態勢だろう。弓矢をこっそり持っているのが見える。

 あれを一斉に射られたら、たぶんわしは死なないまでも大怪我をする。

 怯えた仕草を見せるのもまずいので、敢えてふんぞり帰って自信満々に村の入口に到達する。

「主らがこの贄を送った村の者どもか」

 村長らしい白髪の老人が恭しくこちらに礼をした。

「そ、そうでございます。邪竜様。まだ召し上がられていないということは、何か至らぬところがございましたでしょうか。それならば早急に別の生贄を用意いたしますが……」
「無用だ。この者の魂は既に喰らわせてもらった。世に二つとなき美味であった。この美味の余韻を楽しみたいので、これ以上は下賤な味を我が舌に運ばぬよう心得よ」
「し、承知いたしました。それでは、魔王の征伐にお力添えをいただけるという話は――」

 わしは表情を硬くした。
 鱗に覆われているので人間どもには分かるまいが、かなり焦った。

「ま、まあの。その辺はおいおい考えるとして、少なくともわしがお主らに危害を加えることはないと約束しよう」

 下手に危害なんて加えようものなら返り討ちだし。
 村人はしばらく顔を見合わせてざわついていたが、少なくとも生贄が多少なりの成果を上げたのだと理解すると、連鎖するように安堵の表情を広げていった。

 そのとき。
 どこからともなく飛んできた石が「ごつん」っとわしの側頭部に命中した。
 実はかなり痛くて涙目になりかけたが、ここで隙を見せれば蜂の巣になるのは目に見えていたのでぐっとこらえて大物ぶりつつ石の発射元に向いた。

「この化物め! よくもレーコを食ったな! くらえっ!」

 材木らしい木の棒を剣のように握って、こちらに突進してくる少年の姿があった。
 身なりは上等で、金色の髪はよく整えられている。村の中でも上流の家の子弟だろう。

 しかしそれよりも、あの材木で殴られたら間違いなく怯んでしまう。
 怯んだら最後、弱いのがバレて蜂の巣だ。

 だが、わしが逃げるよりも先に村の大人たちが次々に飛びかかって少年を地に押し伏せた。

「た、大変申し訳ありませぬ邪竜様! この無礼なガキはすぐにでも打ち首にしますゆえ……」
「よい。よい。本当によいから。そんな風にナタをふりかざすのはやめるがよい。わしは全然怒っとらん。あんな小石が当たったくらい、そよ風ほどにも感じぬからな」

 実は結構痛かったけど。

「ところでそこの少年、レーコというのはこの生贄の子の名か」

 わしが尋ねると、少年は押さえつけられたまま答えた。

「そうだ! てめえ許さねえからな! レーコの魂を食って抜け殻にしちまったんだろ!」
「いやいやいや、ほんのちょび――――っとしか食うとらんよ。寿命二日分くらい。全っ然大したアレじゃないから気にせんでくれ。ほれ、レーコとやら。下りて元気な姿を見せてやるがいい」
「僭越ながら」

 ひょいっ、とわしの背中から生贄の子が下りる。
 これで文字通り肩の荷が下りた。

「それじゃわしはお暇するよ。その子も贄としての役割を果たしたので、あまり冷遇するでないぞ。魔王討伐の件については考えがまとまったらいずれまた話そう」

 言いつつ、わしは今のねぐらを移す算段を練っていた。
 話が具体的になる前に別の場所に逃げて隠遁しよう。ごまかすにはそれしかない。

 村からの去り際に少しだけ振り返ると、大人たちを振りほどいた少年がレーコに駆け寄っていた。

「大丈夫か? 無事か? あの化物にひどいことされなかったか?」
「だめ。ライオット」

 レーコは光のない目のまま、唇の前に指を一本立てた。

「化物じゃない。邪竜様。次にそんな呼び方をしたら、私があなたを討たねばならなくなる」
「れ、レーコ?」
「私は既にあの方の眷属。あの方を愚弄するなら、あなたといえど容赦はできない」

 わしはたまらず引き返した。
 ずしんずしんと慌てて戻ってくる足音に村人たちが慄く。

「ちょっと待つがいい、ええと、レーコ? わしに対してそんなに気を遣わなくてよいから」
「私と貴方は一心同体です。貴方様への侮辱はすなわち私への侮辱。看過はできません」

 わしは眼力を最大限に働かせてレーコを見つめる。
 おおよその強さだけでなく、その生物の特性すらを見極めることができる。

 表情の動き。心拍。呼吸。目線の動き。
 すべてから判断したレーコの特性は、

【思い込みが非常に激しい】

 しくじった、と心から思う。
 変に話を合わせてしまってせいで話がこじれ始めている。
 ほら、金髪の少年なんか憎しみに満ちた目でわしを見ている。
 わし、そんな風に人間を操ったりできないから。自発的にその娘がノリでおかしくなってるだけだから。頼むから許して。

 敵愾心剥き出しで再び拘束された少年は、歯を剥いて叫び始めた。

「その化物だけじゃねえ! 親父も爺さんも、よくもレーコだけに辛い目を押しつけやがったな! 生贄なら俺をやればよかっただろ!」
「何を馬鹿な! 跡継ぎのお前を生贄なぞにやれるか! それに邪竜様もレーコの魂が気に入ったと仰っているではないか。あの娘は贄として最良のものを高値で仕入れてきたのだ。それを使わぬ手がどこにある」
「何が『贄に最良』だ、そんな人間いてたまるか! 女の子一人犠牲にして守らなきゃいけないなら、こんな村さっさと潰しちまえ!」

 ぎゃあぎゃあ喚いている。
 良心の呵責はあるが、仕方ない。ここは尻尾を巻いて逃げるとしよう。レーコもしばらく村で暮らせば変な思い込みも抜けていくだろう。

「さらば」

 言い残すと、村人が軒並みひれ伏した。ちなみに弓矢を持った村人たちに背を向ける時点で心臓はこれ以上なくバクバクいっている。

 だから、村に半鐘が「かーん!」と鳴り響いたときには、思わず飛び跳ねるところだった。

「何事だ!」

 村長の老人が叫ぶ。
 半鐘の吊るされた見張り塔の上から、若者がこちらに向けて声を発した。

「大変です! 魔物が……! 暗明狼クラガリオオカミの群れが山から下りて来ています! 30……40……いえ、それ以上!」

 暗明狼クラガリオオカミ
 常に群れを成して行動し、人里を襲う魔族だ。
 ただでさえ数が多い上に、その特殊能力はさらに厄介さを倍増させる。

 地に映る彼らの影は、そのまま影の狼として意志を持って這いまわり、人々を咥えて地の闇に引きずり込むのだ。

 すなわち、40頭が相手となれば40頭の影の狼も付随する。
 相手は実質倍の80頭だ。

 逃げよう、とわしは思った。
 しかしわしの鈍足で洞窟まで逃げ切れるか、いささか自信がなかった。
 それに背後からひしひしと期待の視線が注がれるのが分かった。

「邪竜様……」
「いえ、竜神様!」
「どうか我らにご助力を!」

 助力ったって、どうしろというのだ。
 わしは心の底から震えきっていた。

「おいてめえ! レーコの魂食ったってのに逃げる気か!? ふざけんじゃねえ! あんな糞狼なんかに怯えてて何が邪竜だ! 俺がぶっ殺してやるからな!」

 なるほど。逃げてもぶっ殺されるらしい。
 昨日までのんびり草を食ってるだけだったのに、なんなのこの扱い。もうやだ。

「ああ、村の長よ」

 とうとう観念したわしは村長に向く。

「はっ。邪竜様」
「奴らにわしから話をしてみよう。なんなれば引かせることもできるやもしれん」
「真にございますか!?」

 魔王軍の幹部と思われるくらいわしには風格があるらしい。森の獣たちも見てくれで怯えているくらいだ。
 もしかすると威厳だけで逃げて……くれるといいなあ……と希望的観測で思う。
 逃げてくれなかったら今日が5000年の生涯最後の日だ。

 山道に向く。暗明狼が素早い身のこなしで唯一開けられた門に集いつつある。
 交渉用に村長が開いてくれたのだが、本当はこの門も閉ざして欲しかった。
 突入の機を窺う狼の群れに向かって、わしは一歩を踏み出す。

「あー……ぬしら。わしが誰か知っての狼藉か?」

 語りかけるが、狼たちは涎を垂らして品定めの目線を寄越すばかりで応答する様子がない。

「わし、魔王軍の幹部なんじゃけど」

 ダメ元でハッタリをかます。
 狼どもは目をギラギラと光らせて村へじりじりと近づいてくる。
 ごめん村人たち。こりゃあもうダメだ。だってこいつら話通じないみたいだもん。

「なるほど。邪竜様。つまりこやつらは、我々の魔王への反旗を察知して来たということですね」

 とん、とわしの背中に飛び乗る重みがあった。
 声で分かる。生贄の少女、レーコだ。

「いやたぶん偶然じゃと思うけど。っていうかもうダメじゃって。ムリムリムリ、わし限界」
「そうですね。眷属たる私も同じく限界です」

 レーコは衣の内から宝石の短剣を抜いた。

「邪竜様に殺気を向ける、この愚かしい獣どもに存在を許していることが――限界です」
「はい?」

 わしが戸惑った瞬間、いきなりレーコの身から莫大な魔力が迸った。
 確かに魔力の片鱗はあった。
 しかし、今こうして背中に感じられるのは、5000年生きてきて数度しか会ったことのない、大魔導士とも呼ばれる者に匹敵するほどの存在感だ。
 さしたる眼力を持たぬ村人たちも、レーコが発する尋常でない気には感じるものがあったらしい。
 狼以上に慄き、腰を抜かすものまでいた。

 もしかして。
 思い込みだけで潜在能力を全部解放したのだろうか?

「我が身と魂は邪竜様に捧げしもの。既に人の身にはあらず。貴様らのような下賤な獣ごとき、邪竜様がじきじきに相手をするまでもない。この私が瞬時に消し去ってくれる」

 あっ、ヤバい子だ。自覚もなしにノリノリである。
 わしの背中から宙返りで狼たちの前に立ちはだかったレーコは、怪しい笑みを浮かべてわしに振り返った。
 普通の黒い瞳だったはずが、わしのドラゴンの瞳と同じく、蒼い色になっていた。

 わしは正直、かなり引いた。狼よりも怖かった。

「来るがいい。獣どもよ、一瞬で片付ける」

 レーコの挑発と同時に、暗明狼の姿が掻き消えた。
 いいや、消えたのではなくわしの目には一切見えなかったのだ。
 思えば、ちかちかと空中に光っていたように見えたのが狼の本体で、地面でちかちかと点滅していたのが影の狼だったのだろう。

 しかし、そう気づいたのは、すべてが片付いてからだった。
 レーコが横薙ぎした宝石の短剣から莫大な魔力が放たれ、獣を跡形すら残らぬ灰塵に変えていた。
 後に残っていたのは、地面に刻まれた巨大な爪痕のごとき斬撃の傷だけだ。

「『竜王の大爪』――邪竜様の力の片鱗、思い知ったか」

 わしの爪、小一時間かかってギリギリ木を切れるくらいなんですけど。

 完全にわしがビビっていると、ふいにレーコは膝から崩れ落ちた。
 慌てて駆け寄ったのは例の少年だけだった。他の奴らは(わし含め)全員身動きもできなかった。

「おい!? レーコ!? 大丈夫か?」
「ねむい」
「おい化物! てめえ、レーコに何したんだよ!? あんなことできる子じゃなかったぞ!」

 できるようになっちゃったんだよ、恐ろしいことに。
 わしも本音が許されるなら「人間って末恐ろしいよね」とか語り合いたいところだよ少年。

「と、とにかく!」

 手を叩いて場を納めたのは村長だった。

「邪竜様――いえ竜神様はこれにて魔王と矛を構えることになったのでしょう? ならば我々は、その門出を盛大に祝うまでです。みな、宴の準備を!」

 恐怖の余韻をふっ飛ばすようなカラ元気の号令が鳴り響いて、男衆はバタバタと宴の支度に走っていった。
 わしは少年からの恨みの視線をひしひしと受けながら、ただ「洞窟に帰りたいのう」と思っていた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ