クレーンゲーム最高!
「いやぁああ。」
ゲームセンターのクレーンゲームの機械のガラスに顔をへばりつけ女は叫ぶ。
まだ、20代位の普通にしてれば可愛いらしい顔つきの彼女は顔を思いっきり歪め、機械を蹴飛ばしていた。
十五分ほど前から景品のくまのプー太郎のぬいぐるみを取るのに悪戦苦闘している。
もう、すでに五千円は消費しているであろう。
しかし、一向にアームが弱いのか景品はすぐに落ちてしまう。
最初は可愛いので、ナンパでもしてみようかな? と、思って見ていたのだが、叫んだり怒鳴ったり中々面白いので僕は暫く黙って見ている事にした。
そこへ、店員が通り過ぎようとすると、女は僕の期待通りに店員へ掴みかかる。
「ちょっと!?あのアームオカシイんじゃないの!?」
興奮しきった女に対して店員はオドロオドロした様子で必死に謝る。
「申し訳ございません。でも、この条件で平等にやっていただくのが決まりで。」
しかし、女は更に怒りを倍増させ怒鳴る。
「何よっ!アンタなんか童貞の早漏のマザコンのインボがぁっ!」
いよいよ面白くなってきたと僕は鼻歌を唄いながら、その光景を眺めていると社員がそこへやってきた。
無線の用なもの【インカム】でSOSの知らせを受けたのか、社員の額には冷や汗が滲んでいた。
「だ〜か〜ら!あの景品のプー太郎のぬいぐるみを頂戴って言ってるでしょ!?いくらつぎ込んだと思ってるの!?」
女の滅茶苦茶な言い分にも社員と店員は必死に謝り続ける姿に僕は少々、感動を覚えた。
鼻で笑っちゃうようなクレームを親身になって聞き対応する姿。
とても真似できない。
そんな素晴らしい方々にも関わらず女は一向に負けじと怒鳴り続ける。もう、20分も彼女のクレームに付き合わせられヘトヘトになった社員は
「じゃぁ、景品は渡せない決まりですが、特別に今回は一回サービスしますね。」
そう言って機械を操作し、ワンゲームがサービスとなった。
彼女がゲームに飛び付くや否や店員達は風のように去っていった。
目を輝かせながら彼女はプー太郎を狙った!
が、アームはカスっただけで結局、何も取れなかった。
女はまた、店員を怒鳴ろうと思ったのか周りを見渡したが店員の姿はなかった。
彼女は怒りのやり場がなくなり呆然と立ち尽くしていた。
僕は睨み付ける彼女をお構い無しにその、クレーンゲームをやり始める。
先ほどのカスり方が良かったのか? プー太郎が取りやすい体制になっていた。
多分、お金を使い尽くしたのだろう。彼女は悔し涙を浮かべながら僕がプー太郎を楽々とゲットするのを眺めていた。
彼女のそのリアクションに僕は言い様の無い、今まで味わった事の無いような快感を覚える。
「欲しい?」
僕は悪戯に彼女に話しかける。
悔しいのか彼女は真っ赤な顔をして怒鳴り返す。
「いらないよっ馬鹿野郎!」
「じゃ、ここに置いてこう。」
僕は格闘ゲームの椅子の上にプー太郎を座らせる。
「なっ!」
女は顔を歪ませる。
「いらないんでしょ?ここに置いとけば誰か持ってくよ。」
ここからは僕の駆け。
クレーンゲームの景品でクレーンゲーム。さぁ、可愛くて暴れん坊の景品は見事かかってくれるのかな?
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