夢ー1
魔王は目の前ではしゃいでいる。おもしろい玩具を見つけたような目で。
自分の愛する人が生気を抜かれやせ細り、今にも死のうとしている。
なぜだか愛する女の名前が思い出せない。【】
愛してるはずなのに。
「さぁさぁ。どうする?死んじゃうよ?願うの?何を願うの?」
魔王は【】を の顔を掴みながらニタニタとこちらを見ている。
「やめてくれないか」
語気を強める。
「何を冷静になってるの?顔はすごいことになってるよ。やっと余裕が無くなったね」
「テツヤ・・・さま・・・」
【】は息も絶え絶えで話し始める。
「あなたは、とても、優しい方。私に、どんな時も、優しくしてくださいました。今、あなたは、初めて、怒りの感情を出しています。あなたは、その感情を、嫌っているのかもしれない。表に出してはいけないと、思っているのかもしれない。でも、もう、我慢しなくていいのです。わたしは、あなたの体が骨になろうが、たとえ優しくなくなってしまおうが、あなたのことを、愛して、おります。あなたは、この世界で一番、死にたがりで、優柔不断ですが、でも、強い、のです。」
ギリッと【】を掴む魔王の手に力が入る。
「強いって?本当に強かったら、きみのことを一切傷つけないはずだよ。だがきみは今、死にかけている。それはテツヤが弱いからさ。きみをここに連れてくることもどうかしてる。本当に大切なら、安全なところに隠すべきさ」