城のお嬢様
狼男と向かい合ったまま一晩が過ぎた。
こいつの名前はジョークと言うらしい。何の冗談だ。
ジョークは城下町の武器屋でこの国の姫を攫いたいと冗談で言ったところ、衛兵に捕まったらしい。その顔なら冗談では聞こえなかっただろうに。
事情を知ったところで、俺の名前を聞かれた。
「おまえの名前は何と言うんだ」
俺はこの世界での名前をまだ決めてなかった。日本名では呼びにくそうだが、一応名乗っておこう。
「アカホシだ」
「アカホシ。おまえはなぜ捕まった。それも全裸で」
ちなみに一晩中全裸でした。火を炊いていたのであまり寒くもなかったが。
「気づいたら草むらで全裸で倒れていて、兵隊にここに連れて来られた」
俺は起こったことをそのまま話した。
「おまえはどこの国にいたんだ?」
「えっ、日本だけど」
「そんな国、この世界には無い」
まぁそうだよね。
「まぁ大方、ワイジャから来たんだろう」
「ワイジャってどこなんだ?」
「おいおい。記憶まで無いのか?人間が唯一統治してる国のことだ」
ほう。ちゃんと人間がいるらしい。
「この国のやつらはみんな耳がとんがってるんだよな」
「ここはエルフの統治するアマズという国だ。」
エルフねぇ。みんな頭が良さそうな顔してるもんな。
そんなこんなで上に登れる扉が開く。
捕まった時と同じように7、8人のエルフが俺の牢屋の前で止まる。
「人間、ステラ様がお呼びだ。出ろ」
一枚の茶色の布地を渡された。
やっと全裸状態から解放されたのだった。