連れて行かれてます
10人がかりで1時間くらいかけて連れて来られたのは、西洋風のお城だった。
その移動中、もちろん俺は全裸だ。
城下町らしきところを通ったが、一般人にじろじろと見られている。
まぁ、もういいのさ。死にたいと思ってから、自分がどうされようが、どう見られようが、どう思われようが。
ただ、この世界の一般人はどうやらみんな耳がとんがっている。
あとは俺を連行してる兵隊が「人間のくせに」とかなんとか言っている。
城の地下に牢屋があるらしく、俺はそこに閉じ込められた。
目の前の牢屋には狼の顔をした男がいて、しゃべりはじめた。
茶色のベストと緑のパーカーという組み合わせで服を着て、あぐらをかいてこちらを見ている。
「人間なんて久しぶりだ。しかも裸か」
狼男はよだれをたらしている。
「裸で悪かったな」
「おっと。獣語が話せるのか。ちっとは頭の良い人間なんだな。」
獣語?
「俺は普通に日本語を話してるだけだが」
「ニホン?まぁ何語でもいいが、少しは怖がれよ」
狼が話すのには少々驚いたが、怖くはない。牢屋で仕切られているからこちらまで来ることは無いだろうし。
「会話が通じない相手のほうが怖いよ」
「おもしろいことを言うな、人間」
狼男は裂けた口を噛みしめるように笑った。
「別にここから出てお前を食べてやってもいいんだぜ」
「そうかよ」
狼男はフン、とおもしろくなさそうな顔をする。
食べたいなら食べてくれ。最悪な気分だ。死んでも死に切れなかったのだからな。